USオープン出場選手はワクチン接種の義務なし、選手の約半数は接種済み

写真はUSオープン会場で練習中のアンディ・マレー(イギリス)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)は男女シングルスの組み合わせが決まり、月曜日に開幕を迎える。

 2012年チャンピオンのアンディ・マレー(イギリス)が土曜日に行われた大会前の記者会見でUSオープンのメイン記者会見室の席に着いたとき、進行役は彼に新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの間に至るところで目にされた水色の医療用マスクを外してもよいと告げた。

 前日にその場でメディアに対応した9人のプレーヤーとは違い、マレーはマスクをつけたまま会見に臨むことを選んだ。そして月曜日に本戦が始まるときにコートに立つ男子と女子の約半数とは違い、彼はCOVID-19のワクチンを接種していた。

 彼はより多くのプロテニス選手がワクチンを接種するよう願っている。特にデルタ変異種に関する感染例が増加する中、このところ世間を騒がせているこのワクチンに関する議題はフラッシングメドウでもある種の対立を生み出すことになるだろう。

 ひとつには今大会でプレーヤーと彼らのチームメンバーはワクチン接種を義務付けられてはいないが、試合を観るためにお金を払っている観客たち――あるコートではハイタッチができるほど選手に近づくことができる――は少なくとも一度は受けたことを示すことができなければ入場できない。

 加えてプレーヤーの中には世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)のように、ワクチンを接種する否かは個人の選択であるべきだと主張する者もいる。そしてマレーのように、ワクチンは自分を守るためだけではなく他者を助けるためでもあるのだと説明する者たちもいる。

「僕はかなり通常通りの生活を楽しんでいると感じているけど、そうではない選手たちもいる。彼らはそのことにフラストレーションを感じているに違いない。結局のところ僕たち全員がワクチンを受けるということは、より多くの人々に注意を払うためだと僕は思うんだ。世界中を転戦するプレーヤーとして、僕たちは他のすべての人にも気を配る責任があるんじゃないかな」とマレーは私見を述べた。

「僕はワクチンを接種してよかったと思っているよ。より多くのプレーヤーが今後数ヵ月のうちにワクチン接種の選択をするよう願っているよ」

 ATP(男子プロテニス協会)のスポークスマンは男子プレーヤーの50%強がすでにワクチンを接種しており、男子ツアーは「選手たちにワクチン接種を推奨し続けている」と土曜日に報告した。

 WTA(女子テニス協会)のスポークスマンもまた半数近い女子プレーヤーがワクチンを接種したとし、今年の終わりまでに全体の85%以上が済ませるよう人数を増やしてくことを目標に「女子ツアーはワクチンを強く信じており、皆に接種するよう薦めている」と話した。今のところ、選手たちにワクチン接種の義務はない。

 全米テニス協会(USTA)は水曜日にUSオープンで観客はワクチンを受けている必要はないと発言したが、ニューヨーク市庁舎に促されて金曜日に前言を撤回した。その結果、12歳以上の観客が大会の会場に入るには少なくとも一度はワクチンを接種した証明書を提示することを義務付けた。ソーシャルメディアでは追加的予防措置を取ることをよしとする者たちが称賛し、その対策とタイミングに腹を立てた者たちは文句を言った。

 選手たちと接触のある人々(USTAの職員、主審、ボールパーソン、メディア、警備員、送迎スタッフ)は、すでにワクチン接種を要求されていた。

 何人かの選手たちは、定期的に世界中を遠征して回る彼らのライフスタイルがワクチン接種を難しくしていると考えている。

「年間を通していくつかの機会があるわ。恐らく片手で数えられるくらいだけど。でも明らかに、タイミングを見つけるのは細かい計画が必要で難しいことよ。それが私たちのスポーツの性質なの」とジョハナ・コンタ(イギリス)は語った。ワクチンを接種していなかったコンタは自分のチームメンバーがウイルス検査で陽性と判定されたことで濃厚接触者としてウインブルドン棄権を強いられ、そのあと自分も発症して東京オリンピック欠場を余儀なくされた。

 ワクチンが推奨されているNFL(プロアメリカンフットボールリーグ)やメジャーリーグ(プロ野球)とは違い、テニスは非常に個人的なスポーツだ。特定の大会では選手に会場でワクチンを接種する機会を提供しているが、そうではない大会もある。USオープンもそのひとつだ。

「我々はアスリートに、ホテルの近くでワクチンを受けることができる場所の情報を提供しています。ここニューヨークには、市民でなくてもワクチンを接種できる場所がたくさんあります。この会場でワクチン接種を行うことはありません」と大会ディレクターのステイシー・アラスター氏は説明した。

 6月のフレンチ・オープンで準々決勝に進出した17歳のコリ・ガウフ(アメリカ)は、自分がCOVID-19に感染したのと同じ週にワクチンを接種する予定だったのだと明かした。

 ガウフはワシントンDCの大会で競技に戻る前、「本当の問題は、間隔を空けてワクチンを接種しなければならないことなの。明らかに、国から国へ渡り歩くのは難しいわ。でも私はできる限り早く接種するつもりよ」と話していた。

 ロラン・ギャロス決勝でジョコビッチに敗れて準優勝だったステファノス・チチパス(ギリシャ)を含む他のプレーヤーは、必要とされた場合にのみワクチンを接種する意向を示している。

 月曜日にマレーと対戦する予定になっているチチパスは、「ある時点で、僕は接種しなければならなくなるだろう。それは確かなことだと思う。でもここまでのところ、大会出場のための義務ではなかったから僕は接種していない」とコメントした。

 ジョコビッチと彼の妻エレナは昨年プロツアーが中断している間に一連のエキシビションマッチを開催したあと、ウイルス検査で陽性と判定された。

「ワクチンを接種するか否かについて、それは常に個人的決断であるべきだと僕は感じている。だから僕は、それを支持しているんだ。ワクチンを受けたいか受けたくないかは完全に彼ら次第だ。そのようであり続けるよう願っているよ」とジョコビッチは理解を示した。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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