田中佑が高校センバツに続くビッグタイトルを獲得、女子はまだ15歳の石井さやかが頂点に [2021全日本ジュニアU18]
公益財団法人日本テニス協会(JTA)などが主催する「DUNLOP全日本ジュニアテニス選手権'21 supported by NISSHINBO」(大阪府大阪市・ITC靱テニスセンター、江坂テニスセンター/8月23~30日/ハードコート)の大会最終日は、靱会場で全年代男女の単複決勝が行われた。
18歳以下の男子シングルスは高校センバツ個人戦チャンピオンの田中佑(関東/湘南工科大学附属高)が三好健太(関東/桜田倶楽部)を6-1 6-1で一蹴し、同女子シングルスでは翌日に16歳の誕生日を迎える石井さやか(関東/HSS)が18歳の吉本菜月(中国/岡山学芸館高)を6-3 4-6 6-0で破って頂点に立った。
◇ ◇ ◇
15歳最後の日に挑んだ全日本チャンピオンへの最終舞台。第2シードとはいえ周りは年上ばかりというドローを勝ち上がってきた石井は、これまで通りチャレンジャーとして最後も臨むつもりでいた。ところが、「決勝までくるとどうしても勝ちたくなってしまう」と生来の負けず嫌いが顔を出し、それは序盤でいい兆しを見せなかった。今大会で一番緊張したという立ち上がりから、第1セットを奪ってもなお緊張感はほぐれないまま試合は進行。第2セットは先にブレークを許し、一度は追いつきながらも4-6で失った。
「そこでトイレットブレークを取って一旦リセットして、もう負けてもいいやって吹っきっちゃう感じに切り替えました(笑)」
最終セットはラブゲームでのキープから一気に5ゲームを連取。どのゲームもデュースにさえ持ち込ませなかった。第6ゲームも吉本のサービスで15-40とマッチポイントを握ったあと2度デュースにはなったが、最後はフォアハンドのウィナーで締めくくった。
「ファイナルはフォアの振りきりとか足の動きがよくなった」という石井に対して、「自分から決めたいという気持ちが強くてミスになった。もう少し我慢していれば違ったかも」と吉本。両者引かないラリー戦はスコア以上に見応えがあった。
明日が16歳の誕生日という石井だが、15歳での18歳以下優勝自体はとびきり珍しい訳ではない。のちに世界で活躍する奈良くるみ(安藤証券)の優勝も15歳だったし、森田あゆみ(安藤証券)はまだ14歳だった。もっと遡れば、この夏から石井をマンツーマンで指導している元ツアープロの藤原里華も1997年に15歳で優勝、翌年連覇した。その藤原コーチがこう評する。
「完成度がまだ低いところが逆に一番の魅力だと思います。伸びしろが凄く大きい。運動能力が高く身長もあるので、サーブはまだまだよくなりますし、ネットプレーもこれからどんどん磨いていけます」
以前からプロ志向も世界志向も強い。国内のジュニアの世界ならここまで通用するという自信をバネに、まずは念願のグランドスラム・ジュニア出場を目指す。
男子はセンバツ王者の田中が圧倒的な強さを見せた。第1シードの原﨑朝陽(関西/ノアTA垂水)を逆転で破って勢いに乗る第3シードの三好を6-1 6-1と寄せ付けず。サービスが武器でもある三好から次々とブレークを奪った試合を、「(三好は)背も高くてサーブがいいので、まずはリターンをしっかり返してラリーに持ち込むという意識で試合に入ったのがよかった」と振り返った。
全日本ジュニアは全ての年代に出場してきた田中だが、2回戦を突破したことはなかった。他の全国大会でも昨年まではベスト8が最高。それが今年になって高校センバツ個人戦優勝、インターハイ準優勝、そして今回の優勝と大ブレークした。思い当たる理由を聞けば、「コロナになって練習時間が減ったけど、試合もなかったので集中して練習できたからかも」と答えた。
その後、田中は菅谷優作(関東/慶応義塾高)とのダブルスも制して2冠を達成。そして明日にはアメリカへ出発する。高校センバツの優勝によってワイルドカード(主催者推薦枠)を与えられたUSオープン・ジュニアの予選に出場するためだ。
実は女子優勝の石井とは対照的に将来プロにも世界にもあまり関心がないという田中だが、この大きな挑戦に心躍らないはずはない。「もちろん楽しみです。ひとつでも多く勝ちたい」と語って大阪をあとにした。(ライター◎山口奈緒美)
撮影◎牛島寿人 / HISATO USHIJIMA
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