「いつもグランドスラムのトロフィーを掲げるシーンを頭に思い浮かべている」3回戦で錦織を退けたジョコビッチ [USオープン]

3回戦で錦織圭(日清食品)を退けたノバク・ジョコビッチ(セルビア)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の男子シングルス3回戦で、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が錦織圭(日清食品)を6-7(4) 6-3 6-3 6-2で倒してベスト16に進出した。

「タフなバトルだった。今大会で一番タフな試合だった。1、2回戦はいい感触でプレーできた。でも、今日の錦織のボールのスピード、彼自身の動きの速さはこれまでの相手とはまったく違うレベルだった。ベースラインから下がらず、ミスも少なかった。彼はいつもはハイリスクなテニスをする。そのプレースタイルはよく知っているつもりだ。何度も何度も対戦してきたから。今日の彼のプレーは素晴らしかった。あまり時間を与えてくれなかった。僕を追い込もうとして、ディフェンスさせようとしていたが、1セット半くらいは彼の狙い通りにやられてしまった。でも、彼のボールスピードに対応できるようになると心地よくプレーできた。それからは主導権を握り始めた。必要なときにサービスもよかった。自分がリードしているときは、彼のサービスゲームでプレッシャーを掛け続けた。レベルの高い試合だった。どちらも質の高いテニスをした。簡単ではなかったが、今日のように素晴らしいプレーを見せた相手にしっかり勝てたことは、とても満足だ」

 試合が進むにつれてプレーのレベルを上げつつ、観客を巻き込んでいったように見えた。

「その時々に寄るよ。観客が自分のプレーを観に来てくれているのだから、できるだけいいプレーを見せたいと思っている。彼らはいいテニスを観に来ている。選手が試合を盛り上げて、大きなエネルギーを生み出すところを見たいんだ。アーサー・アッシュ・スタジアムはエネルギーに満ち溢れて、素晴らしい雰囲気が作り上げられる。今日のように僅差の試合では特に盛り上がる。観客は試合に入り込んでくれたと思う。凄い歓声でよかった。僕自身もそれに乗せられたよ」

 いろんな記録が注目されているが、数字の先に君のどんな部分を見て欲しいと思っているのか。

「いい質問だけど、それを語るには時間が足りない。この質問には哲学的に答えたいからね。人々には、特にテニスの仲間たちには男女を問わず、何よりもコートで気持ちを前面に出して戦う選手として記憶されたい。そして選手たちをインスパイアして、もっとうまくなりたい、もっと自分を信じたいと思わせるような存在になりたいと思う。自分は子供の教育についても大きな情熱を注いでいる。僕の財団はこの15年間、そこに注力してきた。その点でも人々の記憶に残りたい。それから、人生の本物の価値のために生きようとする人間になりたい。リスペクト、感謝の気持ちを忘れずに、自分が愛するスポーツをプレーして、その中で大きな成功をおさめる。世界中で、自分が大好きなことで世界一になったと言える人はそれほど多くないはずだ。すべてのことが当たり前だと思わないようにしている。一歩引いて、自分のいる状況を俯瞰して見ることは、なかなか難しいものだ。特にテニス界では絶えず移動し続けて、次のチャレンジ、次の大会、次のゴールに向かって常に動き続けている。鳥の目で自分の状況を俯瞰して見ることは、特にテニス界では難しい。この瞬間にいろんなことが自分の周りで起きており、自分がコート上で成し遂げたいことがまだまだたくさんあるから。まず何よりも素晴らしい人間だったと言われるような人物になりたい。人々にリスペクトされ、人間的に素晴らしく、そしてもちろん素晴らしいテニス選手になりたい。それらは自分にとってはテニスの結果よりも重要なことだ。すべての人から好かれるのは無理だ。すべての人にはそれぞれの考え方があるから。この質問がコートの内外どちらについて聞いているのかわからないけど、いま話したように自分は考えている」

 今日の試合で感情を表に出すシーンが多かった。 

「調子の良し悪しに限らず、コート上で感情を出すことを、事前に意識している訳ではない。自然に起きるものだ。バトルの熱さによって出てくる。その瞬間がとても重要なとき、自分の中からエネルギーを出そうとして、自分の中からだろうと、観客からだろうと、そのエネルギーに乗っかろうとするんだ。だから、その時々だと思う」

 数日前にフォレストヒルズを訪れたが、そのときのことを教えてもらえないか。

「スポンサーの撮影だった。フォレストヒルズテニスクラブを撮影場所に選んでくれてよかった。撮影を終えたあとに散歩したんだ。USオープンを何年も開催した場所の歴史を知ることができてよかった。1978年に現在のフラッシングメドウに移転した。センターコートは凄かった。今はコンサートなどのイベントで使用されているらしい。40コート近くがあり、サーフェスも3、4種類あるという。凄い場所だった。ウインブルドンが開催されるオールイングランドクラブのように、芝生のコート上では白いウェアしか着られないルールがあり、素晴らしいと思った。僕はテニスの歴史を物凄く大事にしている。だから、素晴らしい経験だった」

 優勝したグランドスラムの中で、自分でも予想外で驚いた大会はあるのか?

「自分が出場するすべてのグランドスラムで自分が優勝できないと思うと言ったら、嘘になる。グランドスラムや大きな大会で優勝するとき、それを目標に掲げているのだから驚くことはない。自分がグランドスラムのトロフィーを掲げるシーンを、いつも頭の中にはっきりと思い浮かべているんだ。グランドスラム優勝を20回も達成できたのは幸運だと思う。でも多くの準決勝、決勝を戦ってきたのだから、継続していい成績を残してきた。一番印象深いものをひとつだけ選ぶのは難しい。セルビアで育った子供の頃は、ウインブルドンで優勝することが大きな夢だった。でも、一番記憶に残るのは2016年にグランドスラム4大会連続優勝を果たしたときかな。初めてロラン・ギャロスで優勝したときだ。僕はクレーコートで育ったのに、自分にとってエベレストのように高く、難しかったのがフレンチ・オープンだ。4つの中で一番優勝するのが難しかった。2016年と今年のフレンチ・オープン優勝は似たような感じがした。フレンチ・オープンで優勝できれば、年間グランドスラムのチャンスがかなり大きくなると思っていたから。パリで優勝したあとに、ウインブルドンを連覇していたから、グラスコートでも大きなチャンスがあると思っていた。グラスコートでの戦い方を何年もかけて磨いてきたからね。年間グランドスラムを狙うのはもう不可能だとは思わなくなった。そして今ここにいる。勝ち進んでいる。でもまず1試合ずつ戦うことが重要だ」

 ジョコビッチは4回戦でワイルドカード(主催者推薦枠)で出場したジェンソン・ブルックスビー(アメリカ)と対戦する。(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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