“ハッピーゴーラッキーガール”18歳最後の日にフェルナンデスがケルバーを倒してUSオープンでの快進撃を続行

写真はレイラ・フェルナンデス(カナダ)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の女子シングルス4回戦で、18歳のレイラ・フェルナンデス(カナダ)が第16シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)を4-6 7-6(5) 6-2で倒してベスト8進出を果たした。

 自称「楽天的で呑気で運任せな女の子(happy-go-lucky girl)」のフェルナンデスはフラッシングメドウで人生最高の時間を過ごし、ふたりの元USオープン優勝者から勝利をおさめた。彼女はグランドスラム大会で初の準々決勝に進出する過程で拳を突き上げ、腕を上下に動かして観客を煽った。

 19歳の誕生日の前日にノーシードのフェルナンデスは最後の5ゲームをもぎ取って2016年チャンピオンのケルバー退け、タイトル防衛を目指していた第3シードの大坂なおみ(日清食品)に対する番狂わせがまぐれではなかったことを証明して見せた。

 根性があり策略に長け、より成功をおさめてきた相手に対して大きなリードを奪われていてもベテランばりの落着きを維持していたフェルナンデスは、ケルバーに「彼女は来たる数年で本当に遠くまでいけるはず」と言わせたストロークと振る舞いを見せた。

 次の週ではどうだろうか?

 テニス界の10代選手にとって、現在に勝る時間はない。男子ではカルロス・アルカラス(スペイン)もまた、同日に予選勝者のペーター・ゴヨブチック(ドイツ)を5-7 6-1 5-7 6-2 6-0で破って同じく18歳にして8強入りを決めていた。

 成功の秘密についてフェルナンデスに尋ねると、彼女は2つの要因について繰り返し言及する。ひとつはコートでの時間を楽しむこと、もうひとつは家族のサポートだ。エクアドル出身の父とフィリピン系カナダ人の母、そして姉妹たちの存在は彼女が日々感じる喜びの理由なのだという。

 彼女は自分のコーチで妹たちの面倒を見るため家に留まりながらも毎日電話で指示を与えてくれる父、そしてテニスとは関係ないところで貴重な教えを与えてくれている母のおかげだと話した。彼女の母はこの大会中、他の家族やフィットネストレーナーとコートサイドの席に陣取って応援を受け持っている。

 フェルナンデスによれば、彼らは「物事を深刻に受け止め過ぎないよう」にと強調し、「成熟しなければならないが、同時に子供であることも大事なこと。力を抜いて楽しみ、そうしたいときにはチョコレートを食べ、映画を観たりしてときには就寝時間を過ぎても構わない」と言ってくれているのだという。

 2日前にアーサー・アッシュ・スタジアムで大坂と対戦したときと同じく、ルイ・アームストロング・スタジアムでのケルバー戦でもフェルナンデスは最初のセットを落とした。この日のスタンドは超満席で、観客の中には入口で追い返された人もいたほどだった。

 そしてやはり大坂戦と同じように、フェルナンデスは第2セットでも劣勢に立たされていた。ケルバーはブレークを果たして4-2とリードしていたのだ。しかしどちらの場合も世界ランク73位のフェルナンデスは観客を自分の側に惹きつけ、観客たちは彼女が不可能かと思われるようなアングルのランニングショットを決めるたびに歓喜した。彼女は合計45本のウィナーを叩きだし、ケルバーの28本を大きく上回った。

 相手が繰り出してくるショットに対して左利きのフェルナンデスは素早く切り返し、ときに適切なてこの作用を得るためベースライン近くで深く膝を落としながら楽々とやってのけているように見えた。それはもうひとりのレフティーで、グランドスラム大会を3度制した元世界1位のケルバーと非常によく似たプレースタイルだ。

 33歳のケルバーは7月のウインブルドンで準決勝に進出するなど、このところ好調の波に乗っていた。しかしその厚い経験がフルに活かされることはなく、反対にフェルナンデスは年齢の違いが2時間を超える戦いの中で自分に有利な形で作用したと考えていた。

「正直に言うと、私は第3セットで疲れを感じていたわ」とフェルナンデスは認めた。

「でもだからころ私は、自分に『もし私が疲れているなら彼女は疲労困憊しているに違いない』と言い聞かせたの」

 それでもケルバーは最終セットで3-1とリードするブレークポイントを手にしたが、フェルナンデスがフォアハンドのウィナーをクロスコートに決めてそのチャンスを潰した。そしてケルバーはそれ以降、もはやゲームを取ることができなかった。

 戦いが終わるとフェルナンデスは腕を上げ、それから前屈みになって手を膝に置いて笑みを浮かべた。彼女は立って掌で胸を叩き、そうする間にケルバーはネットを回って歩み寄ると若き勝者を抱擁した。

 ケルバーはフェルナンデスが見せたようにのびのびとプレーすることについて尋ねられたとき、「本当にいい気分だったことを覚えているわ。それは数年前のことよ。でももちろん、彼女にプレッシャーはないのよ」と答えた。

 ここまでのところグランドスラム大会で3回戦に進出したこと一度があるだけだったフェルナンデスは次の準々決勝で、第12シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)を6-3 6-3で破って勝ち上がった第5シードのエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)と対戦する。

 ともに18歳のフェルナンデスとアルカラスは、この非常に無秩序なUSオープンで勝ち上がったニューフェイスたちの一角だ。今大会では試合が始まる際に「今日は誰がサプライズを起こすか」という話題が飛び交っている。そして夜になると、その話題に複数の答えが出る傾向にあるようだ。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

続きを読むには、部員登録が必要です。

部員登録(無料/メール登録)すると、部員限定記事が無制限でお読みいただけます。

いますぐ登録

写真◎Getty Images

Pick up

Related

Ranking of articles