ジョコビッチが3試合連続1セットダウンからの勝利で準決勝進出「僕は過ぎたことは忘れて先に進むことができる」 [USオープン]
今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の男子シングルス準々決勝で、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が第6シードのマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)を5-7 6-2 6-2 6-3で退けベスト4に進出した。
気温24度で湿度80%とやや蒸し暑い夜、ジョコビッチとベレッティーニはともに序盤でややナーバスになっている兆候を見せた。拍手や口笛が交じった歓声が最初のサービスの前に響き、過去に3度USオープンを制しているジョコビッチは時速約200kmのサービスエースを決めた。
新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックで昨年に観戦を許されなかったファンたちはふたたびすべてに関与できることを喜び、声を振り絞って応援していた。
序盤のジョコビッチは通常よりも多くのミスを犯し、その調子は最高とは言い難かった。彼は目をぐるりと回したり掌を額に当てたりして心情を滲ませ、自分のチームのほうを向いてぶつぶつ呟いた。
196cmの立派な体格を駆使してサービスとフォアハンドで猛烈なパワーを生み出すベレッティーニのことを、ジョコビッチは『テニス界のハンマー』と呼んでいた。しかしそのようなスタイルの効き目を鈍らせる力を持つ選手がいるとしたら、その筆頭がジョコビッチなのかもしれない。ジョコビッチの本能、反射神経、俊敏性、動きのよさはベレッティーニを上回った。
他のほとんどの選手とは違い、ジョコビッチは時速210kmのサーブをリターンしてラリーに持ち込むというだけでなくベレッティーニからバックハンドのミスを引き出す意図を持って返球することができる。それが第2セットでジョコビッチがブレ―クに成功し、3-1とリードを奪ったゲームで起きたことだった。それでもベレッティーニは、77分をかけて第1セットを何とか取ることに成功していた。
「恐らく他の選手が相手だったならそれが誰であれ、(セットを先取したら)僕は『よし、いくぞ。間違いなく彼は疲れを感じるはずだ。僕は自分のテニスで、僕のエネルギーで主導権を握れる』と感じていたことだろうね。でも彼の場合は違う。彼はまったく気にも留めていないようなんだ」とベレッティーニはコメントした。
のちにジョコビッチは「僕は過ぎたことは忘れ、先に進んでいくことができるんだ」と言うことで、ベレッティーニの意見をほぼ裏付けた。彼は日本の錦織圭(日清食品)に対する3回戦でもワイルドカード(主催者推薦枠)のジェンソン・ブルックスビー(アメリカ)に対する4回戦でも第1セットを落としたが、どちらも結局は4セットで勝利をおさめた。彼はウインブルドン決勝でのベレッティーニに対しても、同じことをやってのけていた。
「第1セットを落としたら僕はただ自分を違うレベルに引き上げ、最後のポイントまでそこに留まるんだ。それは間違いなく僕を励まし、多くの自信を与えてくれる能力だよ」とジョコビッチはこの最新の勝利について話した。
ミスを減らすことで自分のプレーを整えたジョコビッチは、第2セット以降に反撃を開始した。彼は第2セットで3本、また雨の予報のため開閉式の屋根が閉じられた第3セットでも3本しかアンフォーストエラーを犯さなかった。
試合が進むにつれてただサービスキープすることすら厳しい試練となったベレッティーニは第2セットから第3セットにかけて4つのサービスゲームのうち3度ブレークされたあと、ついにキープしたときには安堵のため息を漏らした。しかし彼はそのときまでに、第2セットを落として第3セットも0-3とリードされていた。そしてジョコビッチは第4セットでも3-0とリードして勝利に向けて突き進み、大きな目標にまた一歩近づいた。
「もちろん僕は新たな歴史を刻みたいと思っているし、それが大きなモティベーションにもなっている。でも、そのことばかり考えすぎると精神的に負担になってしまうんだ。基本に戻って、何が自分のメンタルにとってプラスなのかを考えているよ」とジョコビッチは記者会見の場で語った。
ジョコビッチは次のラウンドで、ロイド・ハリス(南アフリカ)を7-6(6) 6-3 6-4で破って勝ち上がった第4シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)と対戦する。ズベレフはこのところ16連勝して現在に至っており、その中には東京オリンピック金メダル獲得への過程の準決勝で激突したジョコビッチに対する1-6 6-3 6-1の勝利も含まれている。
もうひとつの準決勝では、前日に勝ち上がりを決めていた第2シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)と第12シードのフェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)が顔を合わせる。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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