第1セットを落としても揺るがず、ジョコビッチが大記録達成にあと2勝と迫る「歴史については何も聞かないでくれ」 [USオープン]
今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の大会10日目は、トップハーフ(ドローの上半分)の男女シングルス準々決勝などが行われた。
決して慌てず、滅多に混乱することもない。USオープンで繰り返しそうだったのように、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は例え一時的に劣勢に立たされたとしてもベスト・オブ5セットマッチでは非常に落ち着いている。
誰が相手でもそこにかかってるものが何でも、彼にとって対処しきれないものではなかった。いずれいせよ、今のところはそうだ。そして彼は今、彼は男子では1969年のロッド・レーバー(オーストラリア)以来となる『年間グランドスラム(同じ年に四大大会全制覇)』と男子の単独トップとなる21回目のグランドスラム制覇まであと2勝と迫った。
今大会3試合連続――2021年のグランドスラム大会全体では9度目――で第1セットを落としたジョコビッチだったが 、またもそれは問題ではなかった。彼は水曜日の夜に始まり木曜日の午前0時過ぎに終わったその準々決勝で迅速にストロークを修正し、第6シードのマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)を5-7 6-2 6-2 6-3で倒した。
オンコートインタビューで質問がどこに向かうのかを感じ取ったジョコビッチは、「歴史については何も聞かないでくれ。それがそこにあることはわかっている」と言ってそれを遮った。
挽回して今季のグランドスラム大会での戦績を26勝0敗としたジョコビッチはその過程であらゆるアングルを突いてベレッティーニのビッグショットを阻止し、あるポイントではラリー中にダイブしてラケットを落としながらも起き上がって続行しようとする執念を見せた。彼はそのポイントを落としたが、相手に「俺は必要なことは何でもするぞ」というメッセージを伝えた。
第1セットで17本のアンフォースとエラーを犯したあと、ジョコビッチは残り3セットでそれを合計11本に抑えた。
「間違いなく、今大会でプレーした中で最高の3セットだったよ」と彼は振り返った。
ベレッティーニが第3セット2-4からブレークポイントを握って最後の抵抗をしたときも、ジョコビッチは揺るがなかった。ベレッティーニのバックハンドのネットミスを引き出し、それから時速195kmのサービスエースとフォアハンドで放ったダウン・ザ・ラインのウィナーでキープに成功すると、彼は右の人差し指を耳に当てた。これはこの日の彼が多く見せた、アーサー・アッシュ・スタジアムの2万229人の観客に応援を要求するジェスチャーのひとつだった。
そしてその4分後、そのセットは彼の手に落ちていた。そしてさらに42分後には、試合は彼のものとなった。
「彼にはいつでも自分のプレーレベルを1段階上げる能力がある。だからこそ彼は、歴代最高の選手なんだ。僕がどんなにいいプレーをしても関係なく、彼はただそれよりもいいプレーをしてくるんだ」とウインブルドン決勝でも第1セットを取ったあとに敗れていたベレッティーニはコメントした。
ジョコビッチは次のラウンドで、ロイド・ハリス(南アフリカ)を7-6(6) 6-3 6-4で破って勝ち上がった第4シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)と対戦する。ズベレフはこのところ16連勝して現在に至っており、その中には東京オリンピック金メダル獲得への過程の準決勝で激突したジョコビッチに対する1-6 6-3 6-1の勝利も含まれている。
この先に待ち受けているものを見据えたジョコビッチは、「気合が入っているよ。チャレンジが大きければ大きい程、それを乗り越えたときの栄光は大きいからね」と語った。
もうひとつの準決勝では、前日に勝ち上がりを決めていた第2シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)と第12シードのフェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)が顔を合わせる。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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