今年最後のグランドスラム大会「USオープン」（アメリカ・ニューヨーク／本戦8月30日～9月13日／ハードコート）の男子シングルス準々決勝で、第1シードのノバク・ジョコビッチ（セルビア）に7-5 2-6 2-6 3-6で敗れた第6シードのマッテオ・ベレッティーニ（イタリア）が敗戦を振り返った。

「ノバクが相手だといつもそうだけど、本当にタフな試合だった。フィーリングもプレーもよかった。ただ、彼にはいつでも自分のプレーレベルを1段階上げる能力がある。だからこそ、歴代最高の選手なんだ。自分がどんなにいいプレーをしても関係ない。彼はただそれよりもいいプレーをするんだ。するとリターン、サービスがよくなっていく。自分は彼と同じようにはレベルを上げられなかった。彼が勝利に値した。ノバクとの対戦はいつも勉強になるのがいいところだ。何も文句はない。彼は僕よりよかった。スタッツも見たよ。僕もいいプレーをしたけど、彼のほうが上だった」

　彼との対戦するとき、フィジカル面ではどうですか？

「経験したことがない感覚だ。2年前にラファエル・ナダル（スペイン）と対戦したときとは違うのに、同じように感じられた面もあった。ラファとも準決勝での対戦だった。そのときはもっと疲れていた。2セットを終えたあとにはエネルギーが切れた。ノバクとの対戦ではいい感触だけど、プレーレベルをキープするのに、さらに何かが必要だと感じた。それは、よりよいプレーをするための経験なのかもしれない。彼はフリーポイントを一つもくれない。自分の力ですべてのポイントを取らないといけないんだ。自分がサービスを打とうとリターンをしようと関係なく、僕はたくさん汗をかかせられる。第1セットのあと、自分のプレーが落ちたとは思わない。他の選手との対戦では感じられない、ちょっとした疲れは感じた。ノバクが相手だとポイント獲得率が“1”変わるだけで、試合が大きく変わってしまう。コートの中でそんな風に感じていた」

　第1セットを取るのに、どのくらい消耗した？

「実際よりもいい感触だった。他のどんな選手相手でも同じように“よし、ここで行ける”と感じていたはず。間違いなく彼も同じように消耗していたからね。エネルギーやすべての要素を生かしてそのままいけると思っていた。でも、ノバクが相手だとそんなことは関係ないようだ。実際、第1セットを落としながらも、彼はそこからエネルギーを得ていたようだ。同じことはウインブルドンでも起きた。彼はそういった状況に慣れているんだ。彼がキャリアの中で何度準決勝を戦ってきたのか、スタッツで確認した。おそらく、その勝率は誰よりも高いはずだ。こちらができることはほとんどない。今はどうすれば勝てるか、何も対策が思い浮かばない」

　ノバクがラファやロジャー・フェデラー（スイス）よりいい選手だという意味かな？

「そうじゃない。この質問に答えるのはいつも難しい。個人の意見もあるし、スタッツなども関係してくるから。何年になるかわからないけど、誰も経験したことのない時代を僕らはいま生きている。スタッツや数字だけを見ると、ノバクは他の2人が成し遂げなかったことを実現している。でも、GOAT（グレーテスト・オブ・オール・タイム）は他の選手だと言うこともできる。ジョン・マッケンロー（アメリカ）、ピート・サンプラス（アメリカ）、アンドレ・アガシ（アメリカ）のほうがノバクよりもいい選手だったという意見もあるだろう。これは単に個人個人の考え方の違いだ。それがテニスの素晴らしい部分でもあるんだ。例えば、僕にとってはバスケットボールのレブロン・ジェームズ（アメリカ）はマイケル・ジョーダン（アメリカ）よりも優れた選手だ。そう発言したからと言って、誰かに殺されたりする訳じゃない。これはただ僕個人の意見なだけだ。ジョーダンがプレーしているとき、僕はまだ生まれていなかった。単に違うだけなんだ。今、ノバクと対戦できていることは、凄く光栄なこと。今は物凄い時代だからね。彼には幸運を祈っていると伝えたよ。皆がキャリアを終えたときに比べることができるのかもしれない。でも、3人が成し遂げていることを僕自身も楽しんでいる。3人の中から一人だけを選ぶのは好きじゃない」（テニスマガジン）