年間グランドスラムまであと1勝、ジョコビッチがメドベージェフとの頂上決戦へ「自分の戦いぶりを誇りに思う」 [USオープン]
今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の大会12日目は、男子シングルス準決勝などが行われた。
もしノバク・ジョコビッチ(セルビア)が男子では1969年以来となる『年間グランドスラム(同じ年に四大大会全制覇)』を達成――彼はUSオープン決勝に進出してあと1勝と迫った――したなら、彼と他の皆はその過程にあった運命を分ける壮観な1ゲームを思い出すことだろう。
それは金曜日のナイトセッションで行われた準決勝で、第1シードのジョコビッチが第4シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)に対して最終的に4-6 6-2 6-4 4-6 6-2で勝った試合の第3セット終盤で起きた。
今季のグランドスラム大会での戦績を27勝0敗としたジョコビッチは日曜日に第2シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)を倒せば、ふたつの重要なマイルストーンを確保することができる。それを実現すれば彼は2月のオーストラリアン・オープン、6月のフレンチ・オープン、7月のウインブルドンに2021年USオープンのトロフィーを加え、通算21回目のグランドスラム制覇を果たして男子の最多記録を分かち合っているロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)を追い抜くことになるのだ。
「あと1試合だけだ。やってやろうじゃないか」とジョコビッチはオンコートインタビューで両手を広げて話した。
「僕はそのひとつに心と魂、体と頭を注ぎ込む。僕は次の試合を僕のキャリア最後の試合であるかのように扱うよ」
ズベレフ戦でのカギとなるゲームでは53ショットの応酬で1分以上かかった今大会最長ポイントがあり、ジョコビッチはそれを落としている。ズベレフは最後にフォアハンドのウィナーを決めたあと膝に手を当てて前屈みになり、ジョコビッチはタオルを取りに行った。その肌寒い夜にアーサー・アッシュ・スタジアムに詰めかけた2万1139人の観客のほとんどが一斉に立ち上がる中、ふたりの男たちは激しく呼吸し胸を上下させていた。
しかしその小さな事態は、結果的には重要ではなかった。特にグランドスラム大会でのベスト・オブ5セットマッチの戦いにおいて、ジョコビッチにとって決して問題ではないようなのだ。通常通り、彼は優れたリターンと疲れ知らずのディフェンスでズベレフを憔悴させた。
「自分の戦いぶりを誇りに思う」とジョコビッチはコメントした。
そう、ジョコビッチはそのポイントを落とした。その前には13本、19本、22本、31本のラリーがあり、最後は16本のラリーがあった5-4からのゲームをブレークして第3セットを取ったのだ。彼は1時間半前に第1セットを落としたが、ズベレフのプレーレベルが低下したことにも助けられて形勢を逆転させた。そしてそのあとジョコビッチは第4セットを落としながらもすぐに奮起し、第5セットで5-0とするまでほぼ手のつけられない強さで相手が見せた最後の抵抗もしっかり抑えた。
他の誰よりも長い期間をATPランキング1位の座で過ごしたジョコビッチは、トップに立つには何が必要かを解明してそれを実行に移す。彼のここまでの4試合と今年のグランドスラム大会での計10試合でそうだったように、彼は1セットダウンの劣勢を覆して勝利を掴んだ。
31回目のグランドスラム決勝に到達したジョコビッチは、ライバルであるフェデラーに並んだ。ジョコビッチの31回の中にはニューヨークでの9回が含まれ、彼はそのうち3度タイトルを獲得している。
もうひとつの準決勝で第12シードのフェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)を6-4 7-5 6-2で下した25歳のメドベージェフにとって、これは3度目のグランドスラム大会決勝となる。メドベージェフは今年のオーストラリアン・オープン決勝でジョコビッチに、2019年USオープン決勝ではナダルに敗れていた。
「何かで負ければ負けるほど、尚更それを勝ち獲りたいと願うものだ。それを手に入れたいという願望はより大きくなっていく。僕はふたつの決勝で敗れた。僕は3つ目は勝ちたいね」とこの2週間でわずか1セットしか落とさず勝ち上がってきた世界ランク2位のメドベージェフは語った。
今大会でのジョコビッチは、同じ年に4つのグランドスラム大会すべての勝つ『真のグランドスラム』達成を目指している。男子テニスで最後にその偉業が成し遂げたのは、1969年のロッド・レーバー(オーストラリア)と52年も前のこととなる。レーバーは1962年にもそれに成功しており、1938年にはドン・バッジ(アメリカ)が初のグランドスラム達成者となっていた。
年間グランドスラムを達成した女子プレーヤーは3人で、最後にやってのけたのは1988年のシュテフィ・グラフ(ドイツ)だ。2015年にセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)があと一歩と迫ったが、最後のUSオープン準決勝でロベルタ・ビンチ(イタリア)に驚きの敗戦を喫して夢は潰えた。
「この試合に勝つため、自分に残っているエネルギーをすべて捧げるよ。基本的には日曜日に向けて身体の調子を整え、回復に意識を集中させる。気を散らしかねない何かや僕が必要としている重要なエネルギーを消耗させるようなことに時間やエネルギーを無駄に使いたくない」とジョコビッチは次戦を見据えた。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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