WTAがペン・シューアイの「自由に発言できる権利」について引き続き懸念を表明

写真は2019年資生堂WTAファイナルズ深圳のドロー抽選会でのスティーブ・サイモンWTA会長兼CEO(Getty Images)


 WTA(女子テニス協会)の会長兼CEO(最高責任者)であるスティーブ・サイモン氏は女子テニス選手のペン・シューアイ(中国)の所在と彼女が自由意思で直接的にコミュニケーション取る自由を得ているかについて、変わらず深く憂慮している。ペンは元政府高官に性的暴行を受けたと告発したあと、連絡がつかなくなっている。

 オリンピックに3度出場した経歴を持つ元ダブルス世界ランク1位のペンは11月2日にSNSを更新して元副首相のジャン・ガオリー(張高麗)氏を性的暴行で告発したが、そのあと公の場から姿を消した。その投稿は間もなく中国の主要ソーシャルメディアであるウェイボー(中国版ツイッター)から削除され、中国の国営メディアはこの件に関するすべての報道を抑制した。

「スティーブ・サイモンは様々な通信手段を使ってペン・シューアイとコンタクトを取ろうとしました」とWTAは土曜日に発表した声明文の中で述べた。

「彼は彼女に2通の電子メールを送り、それに対する返信は明らかに他者の影響を受けたものでした。彼はペンが検疫や監視および強制から解放されていないのではないかと深く懸念しており、彼女の返答が彼女自身からのもので検閲を受けていないと納得するまでふたたびメールで連絡は取らないと決めました。WTAは彼女が自由に率直で直接的な意思疎通ができる状態に置かれているか否かについて引き続き懸念を抱いています」

 1週間前、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長はビデオ電話でペンと話したと明かした。IOCはモニター越しに会話する様子のスクリーンショットを公開したが会話の内容など詳細は公開せず、ただバッハ会長が彼女は元気だったと報告したことを告げただけだった。IOCは声明文の中で、ペンが「元気にやっている様子」でプライバシーを尊重して欲しいと求めていると説明した。

 IOCは中国オリンピック委員会や中国政府と緊密に協力しながら2022年2月4日から始まる北京冬季オリンピックの準備を進めているが、このビデオ電話がどのように手配されたかについては明らかにしなかった。

 もしペンが本当に自由に話すことができるならIOCに電話しなかっただろうと批評家たちは考えている。

 アメリカ・ニューヨークに本部を置く人権保護団体『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』はペンとの会談をアレンジすることで、中国の事実隠蔽の片棒を担いだと言ってIOCを批判した。IOCはこれ以前にも、中立的立場を取らなければならないと主張して北京冬季オリンピックに影を落とした人権問題に介入しなかった。

「IOCは言論の自由を損ない性的暴行を無視することで、北京の人権侵害の記録を黙認する立場から中国政府の能動的協力者へと移行したのです」とヒューマン・ライツ・ウォッチの研究員であるヤキウ・ワン氏は指摘した。

 サイモン氏はペンが自由に発言できるという明確な答えと保証を得ない限り、WTAの大会を中国から撤退させると圧力をかけている。WTAはIOCやNBA(男子プロバスケットボールリーグ)に膨大な収益をもたらしている中国政府に対し、公式に対抗した初のスポーツ団体である。(APライター◎ステファン・ウェイド/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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