「今回の件がジョコビッチ以外の選手でも俺は立ち上がっただろう」1回戦突破のキリオス [オーストラリアン・オープン]

1回戦の試合中にボールを蹴り上げたニック・キリオス(オーストリア)(Getty Images)


 今年最初のグランドスラム大会「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・ビクトリア州メルボルン/本戦1月27~30日/ハードコート)の男子シングルス1回戦で、ニック・キリオス(オーストラリア)が予選勝者のリアム・ブローディ(イギリス)に6-4 6-4 6-3で勝利し、地元のファンを熱狂させた。

「かなりプレッシャーがあったので、明らかにナーバスになっていた。知っての通り、1週間前にコロナ陽性だったのだから、大変だった。自分が陽性だと聞いて1週間の隔離生活を強いられ、理想的な準備ができないとわかっていた。フィジオにも会えず、治療も受けられなかった」

「だからこそ満足している。そんな状況の中で自分が出した答えにかなり満足している。完璧だったんじゃないかな。自分がコントロールできるすべてのこと、サービスや試合へ臨む姿勢などよくやったと思う」

「予選を勝ち上がったリアムはタフな相手だった。でも、俺はグランドスラム大会でのレフティーとの対戦成績はなかなかのもの。グランドスラムで負けたのはラファエル・ナダル(スペイン)だけ(1勝2敗)じゃないか?自分のプレースタイルが今日の相手にうまくハマる自信があった。とにかく、ここに戻ってこられてうれしいよ」

凄く楽しんでいるように見えた。今夜のコートのような雰囲気は体験したことがあった?

「ああ、そうさ。自分がある意味作り上げたんだ。彼らは俺に何を期待していいのかわかっていた。1年前、ドミニク・ティーム(オーストリア)との試合で最初のゲームをブレークしたとき、皆が発狂しているような凄まじい雰囲気になったよね」 

「初めから、俺の手の平の上で観客をコントロールできることはわかっていた。それを利用して一瞬盛り上げたり、自分のエネルギーを爆発させるんだ。リアムは素晴らしい選手だけど、あれほど観衆が熱狂する雰囲気でプレーしたことがないはずだ。だからこそ、ブレークポイントのときに観客を盛り上げて、彼にプレッシャーをかけようとしたんだ」

「これこそが人々が興奮するものだ。彼らはこの数年間、生でスポーツを観る機会がほとんどなかったはずだし、好きなことをほとんどやれなかった。今こうして外に出て世界最高の選手たちを観られるようになり、凄く興奮しているんじゃないかな」

少しブーイングもあったようだ。アンディ・マレー(イギリス)の試合でも聞こえた。

「俺はブーイングされていない。あれはブーイングじゃない」

実際、君にブーイングしていた訳じゃない。

「いや、実際にブーと言っていた訳じゃない」

それが聞きたかった。

「ああ、ただのくだらない、クソだよ。あんなことするなんて信じられなかった。試合を終えたとき、ロナウドのポーズを真似してみたんだ。ロナウドはゴールを決めるたびにあのポーズを見せる。あいつらは10分くらいブーイングを続けると思ったけど、2時間半も、ほぼすべてのポイントでやりやがった。何故なのかわからない。まるで動物園にいるようだった」


勝利を決めてクリスティアーノ・ロナウドのゴールパフォーマンスをマネするニック・キリオス(オーストラリア)(Getty Images)

君はノバクをサポートする発言をしたことで、セルビアではかなり有名になった。ドゥサン・ラヨビッチ(セルビア)は“セルビアのニック”と満面の笑みで言っていた。セルビアに新たなファンができたことをどう思っている?

「素晴らしいね。俺とノバクは過去に行き違いがあった。でも今回の件がノバクだろうと他の選手だろうと関係なく、俺は同じように行動したよ。彼がセルビア人だからそうしたんじゃない。もしほかの選手があの状況に陥っても、俺は自分が正しいと思うように立ち上がっただろう。今回はたまたまノバクだっただけのことで、かなり大きな出来事だった。でも、今は少しいい感じの関係になっているね。俺が文句を言ったからじゃない。そのうちどこかで一緒にダブルスでも組もうと、ノバクを誘おうかな」

君はジョン・ケイン・アリーナでプレーするのが大好きだ。だが、次の相手は今大会トップシードのダニール・メドベージェフ(ロシア)。ジョン・ケイン・アリーナで行われるとは思えないが、どのコートでやりたい?

「どのコートだろうと、自分にとってこれ以上ない経験になるだろう。今の彼は恐らく世界最高の選手だ。だからとても興奮している。その瞬間を楽しみにしている。自分がテニスをプレーしているのもそのためだ。世界最高の選手と戦うのは、本当にエキサイティング。俺のような奴でも世界最高の選手に勝てるということを、皆に証明したいと常々思ってきた。あまり多くを期待して試合に入ろうとは思わない。俺はコートに立ち、テニスを楽しんで自分のプレーをするだけだ。俺には成功するために必要な、お決まりのゲームプランがあるんだ。繰り返すが今の彼は世界最高の選手で何でも高いレベルでできてしまう。ハードワーカーでもあるし、何でもできる。でも、今はあまり考えないようにする。ジョン・ケイン・アリーナでプレーするのは、いや“キリオス・アリーナ”と呼ぼう。楽しいだろうな」

君は重大なことについて自分の考えを話すことを恐れない。ペン・シューアイ(中国)の事件についてはどう思う?

「明らかに正しくないことが起きている。あの事件のとき、俺は自分のことでやることがたくさんあったんだ。誰もがやるべきことがあるように俺もいろいろあったから、事件のことは詳しくは知らないんだ。情報を十分得られなかった。何が起きているのか凄く気になっていた。でも現在の状況もよくわからない。もしまだ事件が続いているなら解決しなければならないし、皆がもっと注目しなければならない。彼女のことを忘れる訳にはいかない。俺たちは選手としての強みを利用しないといけない。選手として義務付けられているようなものだ。俺たちは声を上げて何が起きているのか、どうして起きているのか真相を解明しなければならない。とにかく、よくわかっていないんだ。正直、どうしたらいいのかもわからない」

コロナ感染の後遺症はある? またダニールとの対戦成績は2勝0敗と優勢だが、そのことは意識する?

「過去に対戦したとき(2019年に2度)よりも、彼はおそらく2倍は強くなっている。でも彼と対戦した経験から、そのゲームスタイルも自分がどうプレーすべきかもわかっている。彼も俺がどんな風にプレーするかわかっている。対照的なスタイル同士の戦いになるだろう。でも今は試合のことは考えない。宿に戻ってチームの皆と夕飯を食べるんだ。そういう小さなことを当たり前だと思いたくない。チームの皆と楽しく過ごす時間が好きなんだ。明日はダブルスの試合がある。流れに身を任せるだけさ。事前に計画なんてしない。今は試合のことはあまり気にしていない。ダニールとプレーする瞬間になってコートに立ったら、試合と向き合うよ」

「コロナ感染は結構きつかった。その頃1日5時間練習して体も絶好調だったのに、突然寝たきりになった。咳が止まらなくて息が苦しかった。フィジカル的にピークだと思ったときに感染して、症状も悪かった。あれを乗り越えた人には後遺症がなく元気になって欲しいと思う。フィジカル面で今は100%じゃない。でもそれを言い訳にはしない。今この瞬間にコロナに感染している人もいるんだから。世界中がコロナと向き合っている。とにかく、先を考えずに1日1日を大事に過ごしたい」

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写真◎Getty Images

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