そう単純明快ではないフランスのコロナ規制、ジョコビッチはロラン・ギャロスでプレーできるのか?
1月16日にフランスの国会で『ワクチンパス(ワクチン接種証明書)』に関する法案が可決され、プロアマを問わずワクチン未接種者のスポーツ施設への入場が禁じられることになった。そのためノバク・ジョコビッチ(セルビア)はワクチンを接種しない限りフレンチ・オープンには出場できないと皆が考えたが、現地の日刊スポーツ新聞『レキップ』が考察したように5月という大会開催期日も考え合わせると状況はそう単純明快ではない。
まず最初の混乱は、フランステニス連盟(FFT)のジル・モレトン会長が法案可決の日に「我々は政府と協力し合って働いており、政府がワクチン未接種の外人選手に関する規則の詳細を正確に定めることになる」と発言したことから起きた。
この言葉がロラン・ギャロスに参加するプレーヤーには特権的パスが付与されるのではとの誤解を生んだことでワクチン未接種の選手のために扉が開かれたかのように受け取られたのだが、この曲解はすぐに政府に否定された。
元内務大臣で現与党の責任者であるクリストフ・カスタネール氏は、国会の答弁で「高名なスポーツ選手や芸術家など“有名人”のためにワクチンパスを回避する道を作るような真似はしません。規則は皆に適用されます。もし彼(ジョコビッチ)が観客やボールボーイ、ロラン・ギャロスで店を営む人々などに適用される規則を遵守しないのであれば、彼は(フレンチ・オープンで)プレーする資格を持ちません」とはっきり述べた。
ロラン・ギャロスやシックスネーションズ(ヨーロッパの6ヵ国が参加する国際ラグビー大会)のようなフランスで行われる競技会への出場を望むすべてのスポーツ選手(プロもアマも)は、16日に可決されて今週末から適用される『ワクチンパス』の規定を順守しなければならない。
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染状況の変化で規則が変わることもあり得るが、今のところのルールではジョコビッチはワクチンを接種しない限りフレンチ・オープンではプレーできないかに見える。
ここで「プレーできない」と断言できないのは、このワクチンパスの規定では「COVID-19に感染して回復することで抗体を得て『回復証明書』を取得した者はワクチン接種者と同等に扱われる」とされているからだ。
フランスの回復証明書の有効期限は、現在のところ感染から最大6ヵ月となっている。昨年12月16日にジョコビッチが陽性と判定されたことはセルビアの衛生省が認めており、ジョコビッチがこれをもとに回復証明書を取得すれば6月16日までの6ヵ月間(ワクチンの有効性も接種から6ヵ月とされている)有効ということになり、6月のフレンチ・オープンはこの期間に含まれている。
では「ジョコビッチはワクチンを接種しなくてもフレンチ・オープンでプレーできるのか?」という問題だが、できるとも言い切れない。外国からフランスに入国する外国人に要求されるワクチンパスの詳細は、この法律の公布時に出される法令に詳しく述べられるはずだ。回復証明書の有効期間が短くなる可能性はあるのか? フランス国民および在住者と外国から旅してくる外国人の間に規定の違いはないのか? とレキップ紙は問いかけている。
ちなみにワクチンパスに先立つ『健康パス』はEU(欧州連合)圏内であれば有効でワクチンパスも同様であることが予想されるが、セルビアはEU加盟国ではない。彼が居住地としているモナコは正式にはEU加盟国ではないが、多くの面でフランス同様に扱われているため、ここがどうなるのかも難しいところとなっている。
同紙はまた5月までにパンデミックの状況が好転して規制が緩む可能性も挙げているが、あり得るとはしてもこれは当てにならない。
なおフランスはオーストラリアと違い、今のところ入国の条件としてワクチン接種完了を義務づけてはいない。加えて有効期限内の回復証明書保持者もワクチンパスを得られると政府関係者が確言しているため、オーストラリアにおいてよりも幾分ハードルが低いのは確かだ。
とはいえジョコビッチにとって、ワクチンを接種することがもっとも確実で手っ取り早いというのもまた確かなことだ。レキップ紙はそれは本人次第だがとした上で、コロナ感染後2ヵ月が経てばワクチン接種が可能となるため、12月16日に感染したと伝えられるジョコビッチが2月16日以降にワクチンを接種すればロラン・ギャロスへの門は彼に向けて間違いなく開かれると締めくくっている。
写真◎Getty Images
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