“ワクチン嫌い”がスポンサーにも影響? フレンチ・オープン出場にも疑問符がつくジョコビッチの憂鬱
フランスの経済ジャーナリストであるジャン マルク・シルベストル氏の調査によれば、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)のスポンサー(ラコステ、ヘッド、ウブロ、プジョーなど)のいくつかは、もし彼が『反ワクチン派』の旗手のような存在であり続けるならば彼を財政的に支援し続けることは難しくなると、そっと、しかしきっぱりと知らせてきたという。
折しもフランスでは1月16日に『ワクチンパス(ワクチン接種証明書)』に関わる法案が可決され、これによればフランスでは今後しばらくワクチン接種を完了していない者は長距離電車、レストラン、美術館やコンサート会場、またジムやアリーナなど屋内のスポーツ施設はもちろんスタジアムなど屋外のスポーツ施設にも足を踏み入れることはできない。
かつての『健康パス』ではPCR検査での陰性証明書でもよかったが、この『ワクチンパス』では検査結果は考慮されない。つまりこれによれば、ジョコビッチはワクチンを接種しない限りフレンチ・オープンやフランスで開催される他の大会にも出場できないことになる。
正確を期せばこの『ワクチンパス』では近々に新型コロナウイルス(COVID-19)に感染して回復した回復証明書保持者はワクチン接種者と同等の扱いを受けるため、選手がたまたまフレンチ・オープンの1ヵ月前にコロナ陽性となり回復したような場合には出場が可能となる場合もある。
スポンサーの話に戻ると、15日から16日にかけての週末にジョコビッチはオーストラリアン・オープン出場権だけなく多くのものを失ったと考えるシルベストル氏は、ジョコビッチはスポンサーを維持したいのであればワクチンに対する振る舞いを変える必要があると指摘した。
シルベストル氏の調査によれば、ジョコビッチの2021年広告契約は3000万ドルを超える。そしてジョコビッチがオーストラリア入国時にワクチンを接種していないために接種証明書を提示できず、オーストラリアン・オープン出場のために医学的免除を得ていると主張して拘留され上訴した際に個人的な倫理上の理由でワクチン接種を受けない権利があると主張した事実は、スポンサーにとって彼のイメージダウンを引き起こす出来事だったと氏は分析している。
ワクチンを接種しないことは個人の自由と見られてきたが、オーストラリア政府やスポンサーが容認できなかったのは彼がプレーする国の規則を尊重しなかった事実だった。ウイルスの循環を抑制するために国民に厳格な基準を課して予防接種を強く推奨してきたオーストラリアにとって、ジョコビッチの立場を支持すること、何よりジョコビッチが万人に課せられる規則を破るのを受け入れることは不可能だった。世界的プレーヤーの大部分が地元の規則を遵守し、プレーに集中している。これがシルベストル氏の見解だ。
加えてこの論争は「これはワクチン反対派をのさばらせることをよしとしない政治的決断だ」と騒いだジョコビッチの側近とセルビア政府を介して世界中に広がり、ジョコビッチは本人が望む望まないに関わらず反ワクチン派の旗印的な存在となってしまった。
そのためここまでジョコビッチを支援してきた企業はチャンピオンとしての彼だけでなく、彼の言説や政治的立場を支持するような印象を与えることで自らのブランドイメージを傷つけることにならないかと懸念しているというのだ。
同氏によれば日本のスポーツ用品メーカー「アシックス」、ジョコビッチにウェアを提供する「ラコステ」、フランスの自動車メーカー「プジョー」、スイスの高級時計メーカー「ウブロ」などのスポンサーたちが警戒心を示し、現在ダメージを分析している。
スポンサーの多くは騒ぎが鎮まるのを期待してこの件に触れないようにしているが、舞台裏ではジョコビッチと彼のチームに方針を変えたほうがいいとわからせようと奮闘しているという。
写真◎Getty Images
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