「今大会の視聴率は45%まで上がったぞ!」ベスト8進出のコキナキス/キリオスがテニス界に感じる危機感 [オーストラリアン・オープン]

3回戦勝利を祝うニック・キリオスとタナシ・コキナキス(ともにオーストラリア)(Getty Images)


 今年最初のグランドスラム大会「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・ビクトリア州メルボルン/本戦1月27~30日/ハードコート)の男子ダブルス3回戦で、ワイルドカード(主催者推薦枠)を得て参戦したタナシ・コキナキス/ニック・キリオス(ともにオーストラリア)が第15シードのアリエル・ベアル(ウルグアイ)/ゴンサロ・エスコバル(コロンビア)を6-4 4-6 6-4で下してベスト8進出を決めた。

キリオス「アメージングだ。AOでもうひとつ勝てたのは当たり前のことじゃない。相手のことはよく知らなかったが、シードなのだから昨年はいい成績を残したはずだ。実際に難しい相手だった。サービスが本当に素晴らしく、セカンドサーブは数えるほどしかなかったんじゃないかな。アップダウンがあり、第2セットはイマイチだったが、第3セットでうまく持ち直せた。僕らにとってグランドスラムで最高の成績だ。年齢を重ねて少しだけ成熟した。今日はできる限りのことをする。しっかり休んでリカバーし、いい準備をする。素晴らしいプレーができたと思う」

コキナキス「俺もうれしいよ」

2回戦でトップシード、今日もシードペアを倒した。君らは楽しむために出場しているようだが、今はグランドスラム大会でダブルスのタイトルを獲ることに重きを置いているのか?

キリオス「普段は、自分がシングルスで勝ち進んでダブルスへの気持ちが落ちて大事なポイントを取れなかった。でも、今は違う気持ちだ。ダブルスで優勝候補に挙げられる。タナシはこの数ヵ月でかなり自信を深めたようだ。素晴らしいね。今は2人のプレーが噛み合っていて、今までで最高のプレーを見せている。観客は少し緩い雰囲気だが、大事なときにしっかり集中できている。以前はこんなふうにできなかったが、少し経験を重ねたおかげかな」

コキナキス「他の年に比べて今年は集中力が全然違う。昨年は本当にタフだった。コロナのせいでスタンドには7人くらいしかいなかった。でも今はこれだけ観客の声援を受けると、俺たちがどんなに助けられるか見てわかるだろう? パーティーのような雰囲気だ。俺たちが楽しめれば、最高の集中力が発揮できる」

コート上での2人の会話は90%がただのじゃれ合いで10%が戦術的な話だと過去に言っていたが、今はその割合が変わっている?

コキナキス「多少変わったかもね」

キリオス「間違いなく変わった。俺たちは今最高にノッている。これまでとはまったく違うマインドセットで臨んでいる」

コキナキス「これが歳を重ねるということさ。彼は成熟し始めている」

キリオス「ああ、しているよ。しているとも。やめてくれ! でも以前とは違う感情だ。過去にダブルスをプレーしたとき、自分のプレーは明らかに足りなかった。今はリターンを以前より返せるようになり、ペアを引っ張っている。でも彼も素晴らしいプレーを見せている。彼と一緒にプレーしてきて、今回が間違いなく最高のプレーをしている」

君らは先週の活躍でダブルスに新たな価値をもたらしたことに気付いている?

キリオス「俺が答えていいか」 

コキナキス「どうぞ」

 キリオス「僕らはテニスを新たなレベルに導いている。ダブルスだけじゃないぞ。今大会の視聴率が45%まで上がったというニュースを見た」

コキナキス「彼は喜んでいるよ」

キリオス「正直に言おう。彼がエキサイティングだから、皆が観に来るようになった。テニスに必要なんだ」

コキナキス「俺たちはこれまでのような普通のダブルスペアとは全然違うんだ。俺たちはエンターテインメントだ。彼のほうが俺よりも魅せることができるが、それは個性の違い。俺たちはお互いを褒めるのが上手。彼とプレーするのは誰よりも楽しいし、大好きだ。俺たちはコート外でも気が合うし、それがテレビで観ている人にも伝わっているんだろう。俺たちがコートで楽しみ、観客もそれを喜んでくれている。まるでデビスカップを戦っているような雰囲気でプレーできる。俺たちはシングルスで勝ち進んでいる選手よりも注目されていると感じることがある。それが大事なんだ。エンターテインメントと楽しむこと」

観客の声援は君らにどんなことをもたらしてくれる?

コキナキス「俺たちは最高に楽しんでいるし、このままでいいと思う。ファンがここに来て俺たちを応援してくれる。素晴らしい週末だよ。だから、AOが大好きなんだ。このまま応援してくれたら嬉しいね」

ニック、君はシングルスの試合のあとで、これがテニスの未来だと語っていた。5年後、10年後にテニスがどんなふうになっていればいいと思う?

キリオス「テニスはこれまで個性を受け入れるという面で、まったくダメだった。この10年は3人のプレーヤーしか売り出してこなかった。今はようやく彼らに追いついてきている。そして次世代の選手たちを売り出そうと努力し始めた。その中で2人のカナダ人選手(デニス・シャポバロフとフェリックス・オジェ アリアシム)は素晴らしい。彼らはテニスで何か特別ことを成し遂げられる逸材だ。でも、テニスは人と違うことをするのをなかなか受け入れられなかった。俺はタナシがシングルスの試合をしていると、勝っていようが負けていようがテレビに釘付けになる。その姿が惹きつけるんだ。テニス界はそこをもっと大事にしないといけない。俺とダニール・メドベージェフ(ロシア)との試合を見てごらんよ。2つの対極にある個性がぶつかり合って、実際にテニスのレベルも非常に高かった。俺自身が楽しかった。試合後は、“お前が良過ぎた!”と言って彼の手を強く握ったんだ。試合はかなり見応えがあったと思うし、そういう部分をテニスはもっと押し出すべきだ。さもないと……」

コキナキス「死んでしまう!」

キリオス「その通りだ。今大きな問題だと思う」

 キリオス/コキナキスは準々決勝で、第6シードのティム・プッツ(ドイツ)/マイケル・ビーナス(ニュージーランド)と対戦する。

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写真◎Getty Images

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