「東京パラリンピックのあとはしんどくなってきた」26度目のグランドスラム制覇を果たした国枝慎吾 [オーストラリアン・オープン車いすの部]
今年最初のグランドスラム大会「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・ビクトリア州メルボルン/本戦1月27~30日/ハードコート)の車いす男子シングルス決勝で、第1シードの国枝慎吾(ユニクロ)が第2シードのアルフィー・ヒュウェット(イギリス)を7-5 3-6 6-2で倒して優勝した。
「素晴らしい。今大会、この日までいいプレーができていなかった。でもコートに来てすべてが変わった、自分のキャリアの中で最高のプレーができた。特に最終セットが素晴らしかった。何故できたのか自分でもわからない。とてもアメージングだ」
第3セットの出来には自分でも驚いている?
「自分の力以上のプレーができたので、うまく説明できない。自分にパワーが漲っていた。よく覚えていないんだ。あとで映像を確かめたい。自分がやったことを確認したい」
5つ目のマッチポイントで相手のロブがアウトになったとき、11度目のオーストラリアン・オープン優勝が決まった。どんな気持ちだった?
「アルフィーはマッチポイントを何度もいいプレーで跳ね返した。彼はいつもそれができるから、怖さがあった。だから僕は押していくしかなかった。それしか考えてなかった」
アルフィーと素晴らしいライバル関係でお互いを刺激し合っている。
「僕もそう思う。彼と対戦してディフェンスに回りたくないものだ。いつも攻撃するのがいい。今日の戦術がまさにそれだった」
フィジカルの調子はどう? 先週メルボルンの大会でリタイアした理由は何だったの?
「腰がきつくて、オーストラリアン・オープンの前にそれ以上プレーしたくなかったんだ」
グランドスラム47度目(ダブルスも含め)の優勝だが、50回目は君にとってどんな意味がある?
「届くことを願うよ。でも、今はまずしっかり休みたい!」
試合のことをあまり覚えていないのは、ゾーンに入っていた感じですか?
「完全にゾーンに入っていたと思います。自分の力以上のものが出せた。最終セット5-1の場面かな、バックハンドのダウン・ザ・ラインを2本打ったら、綺麗に決まった。あんな打ち方は練習でもしたことがなかったくらい、まぐれの要素もゾーンじゃないと出ないと思う。そんなショットが2本も打てたのはゾーンに入っていたと思う」
アルフィーが出てきて一時期落ち込んだが、また盛り返した。彼とはどんな関係性?
「当然研究もたくさんしています。どの選手よりもクリーンにショットを打つ選手。真似できるところはしたい、追いつきたいと思うけど、なかなか届かないところもある。ショットの強さだけじゃないのがテニスだと自分自身に言い聞かせている。各ショットでは負けているけど、自分の手持ちの技術は何なのかを分析して、どういう展開ならこちらが有利に運べるかを考えながらやっている」
車いすテニスでジュニアの小田凱人が出てきた。東京五輪ではヒッティングパートナーをしてもらった。彼はどんな存在?
「日本の車いすテニス界にとって凄く明るい材料です。僕もそう長くはやらないと思うので、いつでもバトンタッチできる存在。成長を楽しみにしている。そのうち自分が見る立場になると思うので、そういう意味で楽しみ。全部のショットが一級品でいつトップにきてもおかしくない」
モティベーションが上がらなかった時期があるが、どういう風に自分を盛り上げてきたのか?
「難しいですね。昨日はもうテニス辞めようかと思ったこともあった。今日も試合前は最後になるかなと思ってやったところもある。ウインブルドンのタイトルが残っているんですけど、自分がこの業界で達成感を感じている中でプレーしなくてはいけない難しさに今直面している。試合になると負けたくない気持ちが湧いてくる。よりよいプレーを見せるんだという、テニスを始めたときの原点にいかに向き合えるか。そこしかない。誰が出てきても、自分がモティベーションを上げられるというのはない。あとは自分がどういうテニスをしたいか、どう成長したいかに集中してやっていくしかない」
モティベーションがないというのはコートに立ちたくない?
「テニスするのは嫌いじゃない、好き。競技するのはなかなかしんどいのが増えています。パラリンピックのあとから。戦う場所に自分を置くのにしんどさを感じている。そことどう向き合うか、いいテニスを見せるんだということしか答えは出てこない。目標がない中でやっている感はちょっとある。自分自身のテニスをより表現することが支えです」
写真◎Getty Images
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