「自分がやると決めたら真摯にやり抜く」映画『ドリームプラン』トークイベントで伊達公子と工藤阿須加が語る“家族のルール”

『ドリームプラン』のトークイベントでフォアハンドのスイングを披露する伊達公子と工藤阿須加(写真◎BBM)


 ビーナス&セレナのウイリアムズ姉妹と、テニスの素人ながらも2人を育て上げた父リチャードやその家族たちの物語を描いた映画『ドリームプラン』《2月23日(水・祝)全国ロードショー》のスペシャルトークイベントが東京都内で行われ、伊達公子さんと、学生時代にテニスに熱中していたという俳優の工藤阿須加が登壇した。

 現役時代に姉妹と対戦経験のある伊達さんは当時を振り返りながら語った。

伊達「サクセスストーリーであることには間違いないですけど、それだけでは語れない家族愛、家族の絆、諦めずに夢を持つことの大切さを感じる映画でした。リチャードさんが娘たちを愛する気持ちの大きさが凄く伝わってきます。そこに教育、人生の生き方を示してくれる。私は彼女たちとの対戦もありますし、会場でリチャードさんをお見掛けすることが度々ありました。ウイリアムズ姉妹とその家族は独特の空気感を持っているので、他の選手と交わるところ、選手同士で練習することも私が見た限りではゼロです。それくらい家族、チームでずっと行動していました」


『ドリームプラン』トークイベントで現役時代のエピソードを披露する伊達公子(写真◎BBM)(衣装◎MIKAKO NAKAMURA/ミカコナカムラ)

2月8日(火)にノミネート作品が発表され、3月28日(月)に授賞式が行われるアカデミー賞でもかなり期待されている。

伊達「主演のウィル・スミスさんを見ていると、リチャードさんを見ているかのようにそっくりなんですよ。しぐさ、ちょっとした背中の曲がり具合までそっくり! テニスウェアも時代背景として当時のものを着ているのも、テニスに関わってきた人間としては面白いんです」

工藤「この映画では破天荒な父親と書かれますけど、破天荒というよりは新しいこと、皆が常識だと思っていることの外で自分にはその先が見えていて、それを実行しようとするとどの分野でも必ず邪魔しようとする人がいるのをこの映画を観て改めて感じました。でも、周りの目や小さな意見を鵜吞みにせずに自分たちがやるべきことを信じて突き進んだ結果が、ウイリアムズ姉妹の結果になったのだなと感じました。この映画で人生の生き方、何を学ぶべきか、何を信じるべきかを教えてもらいました」

ウイリアムズ姉妹はグランドスラム優勝合計30回で、オリンピックで金メダルを5つ獲得している。

伊達「本当に時代を作り上げた2人だと言えます。私のほうが年齢は遥か上。90年代最初のころにアメリカの大会で、現地の方から“これから出てくる姉妹がいるんだよ”と言われたのをよく憶えています。それから数年後、大会の予選などに出始めるところから始まり、そこから一気に上り詰めていった。女子は現在“パワーテニス"、"スピードテニス"と言われているけど、その時代を作り上げるきっかけになったのがウイリアムズ姉妹」

黒人差別が色濃く残る時代に恵まれない環境の中で姉妹がテニスに打ち込み、周りに信じてもらえなかったお父さんのプランを信じてやって、前人未到の記録を作り上げた。

伊達「90年代は白人のほうが圧倒的に多かった。ウインブルドンの決勝に黒人選手が行っても、一つもスポンサーがなかったほど。それほど当たり前に人種差別的なことが90年代のテニス界に残っていた。そんな中で2人が凄く苦労して成功している。どの世界でも、何かを目指すときに成功する保証は何にもない。私もプロを目指したとき、何もなかった。夢を見て、それに近づけるように日々コツコツ積み重ねていく。時代背景には日本人、アジア人でもわからない大きな覚悟があったのだと思います」


元プロ野球選手を父に持つ工藤阿須加がテニスをプレーしていた頃の逸話を披露した(写真◎BBM)

作中で見られる家族独自のルールは伊達家、工藤家にもあったのか?

伊達「工藤さんのところ(父が元プロ野球選手の工藤公康)とは違って(笑)、うちの両親は健康のためにテニスを始めた。ある意味リチャードさんと同じで素人。運動が好きなテニス愛好家の両親に生まれた3人兄弟で、私だけテニスをやった。ひとつだけいつも言われてきたのは、自分で決めてやり抜くこと。ごく普通の家庭で育ってテニスをやっていたけど、テニスは物凄くお金がかかるスポーツで兄弟が我慢することもあった。途中で投げ出したり、諦めたりしないことはベースとして決められていました」

工藤「うちはルールというよりは、常に小さい頃から言われてきたのは“礼儀・挨拶・態度”です。誰に対してもしっかり挨拶をしろ、誰に対しても感謝の気持ちを持ちなさいと。そこには一番厳しく、ルールとしてずっと言われてきました」

勝ち負けには厳しかったですか?

工藤「勝ち負けよりは内容ですね。試合に挑む前にどういうプロセスを踏んできたのかに対して、物凄く厳しかったです。例えば、テニスで太陽の位置によってはサービスのトスを上げるときにボールが見えないときもあるじゃないですか。自分が調子悪いくせに、太陽が邪魔してイライラして投げやりになったりすると、もう大変でした! ずっと言い訳ばかり言っていると、“もうテニス辞めろ”とずっと言われました。怖かったですよ。普段は優しいんですけど、勝負事で自分がやると決めたことに対して真摯に向き合っていないと、厳しかったです。そこの家族のルールは伊達さんのところに近いなと思いました」



『ドリームプラン』
製作:ウィル・スミス、ティモシー・ホワイト、トレバー・ホワイト、セリーナ・ウィリアムズ、ビーナス・ウィリアムズ
監督:レイナルド・マーカス・グリーン
脚本:ザック・ベイリン 撮影:ロバート・エルスウィット(『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』)エンディング・テーマ:ビヨンセ「Be Alive」
出演:ウィル・スミス、アーンジャニュー・エリス、サナイヤ・シドニー、デミ・シングルトン、トニー・ゴールドウィン、ジョン・バーンサル

字幕:松浦美奈/字幕監修:伊達公子/映倫区分:G  配給:ワーナー・ブラザース映画

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