若き挑戦者コルダに崖っぷちから逆転勝利のナダルが不屈の精神について語る「僕は決して途方もない自信の持ち主ではない」 [ATPインディアンウェルズ]

写真は試合後に握手を交わすラファエル・ナダル(スペイン/左)とセバスチャン・コルダ(アメリカ)(Getty Images)


 ATPツアー公式戦の「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズ/3月日10~20日/賞金総額955万4920ドル/ハードコート)の男子シングルス2回戦で、第4シードのラファエル・ナダル(スペイン)が第3セット2-5から巻き返す挽回劇の末にセバスチャン・コルダ(アメリカ)を6-2 1-6 7-6(3)で退けベスト32に進出した。

 第2セットから第3セットにかけて若きコルダの攻撃に圧倒されて要所でミスをするなど彼らしくないプレーをしていたナダルだが、最後にきて彼の最大の武器である『不屈の精神』を発揮した。

「今日は負けたと思った…。オーストラリアでもそうだったけど、非常によく似た感覚だった」とナダルは試合後に打ち明けた。

「でもだからと言って僕がトライし続けること、戦い続けることを止める訳ではない」

 追い詰められていた試合終盤の心理について、「負けるだろうと思ったとしても、2-5からのゲームに臨むときの精神姿勢は『僕はまずいプレーをしている。2度ブレークされた。でも負けるにしろ、よりいい感覚で試合を終えられるようトライしよう』というものだった」とナダルは説明した。

 そこからナダルが挽回していったときの様子を、「彼はプレーの仕方を変えてきた。彼はよりベースラインに近づいた。彼が戦略を変え、少し不安にかられているのは見て取れた。でも僕はそこでいいゲームができず、彼はそれに付け込んできた」と21歳のコルダは振り返った。

 5-5に追いついたナダルは、コルダが動揺していく中でタイブレークに入る頃までには安定性を取り戻していた。

「彼がナーバスになっていたというのは事実だと思う。彼は前よりもミスを犯すようになったからね。そして僕のほうはよりよいプレーをし始めていた」とナダルは分析した。

「試合を締めくくろうというとき、僕らは皆ナーバスになる。もし誰かがそんなことはないと言うなら、その人は嘘をついているかどうでもいいと思っているかのどちらかだ」

 第2セットから第3セットの5-2まで自分を圧倒したコルダについて、「セバスチャンは今日素晴らしいテニスをした。正直に言って、今日勝てたことは非常に、本当にラッキーだったと感じている」とナダルは称えた。

「彼は勝つチャンスを手にしていた。しかしそれがテニスだ。彼はまだ凄く若い。彼には素晴らしい未来があるよ」

 2020年フレンチ・オープン4回戦でナダルと対戦したときに簡単に敗れていたコルダは、日に日に成長している。

「彼(ナダル)はこれからもずっと僕のアイドルだ。彼は僕がテニスをやろうと決めた理由のひとつだったんだよ」とコルダは明かした。憧れの理由のひとつは、ナダルのその並外れた不屈の精神でもある。

「もし人々が、僕は常にカムバックできると信じていると思っていたとしたらそれは間違いだ」とナダルは語った。

「僕は2-5になっても『よし、ここから挽回するぞ!』と思うような途方もない自信の持ち主ではない。そういうときに僕の頭にあるのは、『ほとんど不可能だ。でも諦めたくはない。トライし続けるんだ。とにかく相手を余計に手こずらせようとするんだ』といった類いの考えだ」

 そしてナダルはそのようにできる理由を、「僕がキャリアを通して戦い続けられる理由、自分を正しくコントロールして正しい姿勢とファイティングスピリットを持つことができている理由はシンプルだ。僕がそのような教育を受けて育ったからなんだよ。僕の叔父や家族はラケットを折るようなこと、暴言を吐いたり試合を放棄したり諦めたりするような真似を決して僕に許さなかった。僕が子供のとき、彼らは僕が勝つか負けるかをそれほど重視していなかったんだと思う」と解説した。

「もっとも重要なのは(正しい振る舞いをするという)教育であり、僕が正しい価値観を持って成長するという事実だったんだ。僕はそういうふうにしなければならなかった。そうでなければテニスをプレーできなかったろうね。もし僕がコートで悪い振る舞いをしたりラケットを壊したり癇癪を起こしたりしていたら、僕は次の大会でプレーさせてもらえなかっただろうから。恐らくそういったことが理由で、僕はこのメンタリティを身に付けたんだ」

 ナダルは次のラウンドで、フェデリコ・コリア(アルゼンチン)を6-2 6-0で破って勝ち上がった第27シードのダニエル・エバンズ(イギリス)と対戦する。

 この永遠の努力家は試合後、「今日はあまりいい感覚でプレーできなかった。でも幸いなことに明日は試合がないから、準備を整えるため練習するよ。練習し続ける必要がある。でも勝ち方がどうであろうと、この試合に勝つことができて素晴らしい気分だよ」とコメントした。

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写真◎Getty Images

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