“悪役”キリオスがテニスを面白くする!「僕がテニスとって悪い存在だと考える人々はただの愚か者だよ」 [ATPインディアンウェルズ]

写真はニック・キリオス(オーストラリア)、後ろはラファエル・ナダル(スペイン)(Getty Images)


 ATPツアー公式戦の「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズ/3月日10~20日/賞金総額955万4920ドル/ハードコート)の男子シングルス準々決勝でニック・キリオス(オーストラリア)は第4シードのラファエル・ナダル(スペイン)に6-7(0) 7-5 4-6で惜敗したが、ナダルが繰り返し言っていた通り「やる気のあるときのキリオスの凄さ」をふたたび示して見せた。

 持ち前の勝負強さや締めるべきポイントでのしぶとさで今回はナダルが勝者となったが、キリオスはトップ10プレーヤーではないにもかかわらずナダルが複数回敗れている相手でもある。キリオスは今回もナダルを倒す可能性があったが、もし彼が勝っていたとしても次の試合で勝つ保証はまったくない。予想がつかない気まぐれな天才、それがキリオスという男だ。

 取るべきサービスゲームを取り損ねて第1セットを落とした失望のあと、直ちに体勢を建て直してセットを取り返した奮起に誇るべきものを見出したキリオスは、「これは子供のときに夢見るような試合だ。大舞台でのナダルとの対戦に、それを取り巻く観客の熱狂。こんな熱狂を生み出す試合はそうあるものじゃない。僕らが対戦すれば、ソーシャルメディアも熱狂する。期待に沿う戦いとなったと思うよ」と試合後にコメントした。

「会場は驚くべき雰囲気だった。ラファやロジャー・フェデラー(スイス)、或いはノバク・ジョコビッチ(セルビア)とプレーするたびに観客たちは彼らを大いに応援するのはわかっている。僕は彼らに、自分を応援してくれと頼むつもりはないよ。僕は自分がある種の悪役、アンダードッグでいるほうが好きなんだ。そんな感じであっても素晴らしい雰囲気であり、僕は決してそれを当然のことと受け取りはしない。ラファは名選手だ。僕たちの間には、お互いへの大きな敬意がある。試合後のネット際で言葉を交わしたけど、僕にはそれが感じられるんだ。僕たちは敬意を払い合っているし、実際に彼は凄いプレーヤーだよ。今のところ、史上もっとも偉大な選手だね」

 過去にあった摩擦を記者に指摘されると、キリオスは「僕は彼について悪口を言ったことはない」と反論した。

「僕はいくつかのコメントをして彼もいくつかコメント返したけど、それはテニスとっていいことだよ。そういうライバル関係はね」

 ナダルがキリオスと対戦するとき、人々は熱戦を期待し、興味を掻き立てられる。それは事実だ。

「テニスにとって、エキサイティングなことだ。わかるだろ? 人々はそれについて話題にし、騒ぎ立てる。僕のキャリアは彼がやったことの40分の1くらいだけど、そのちょっとしたやりとりがあるからこそ僕たちはライバルなんだ」とキリオスは語った。

 そしてこの日の彼は、股抜きショットやアンダーサーブ、ポイント間に言い続ける独り言や観客とのやり取りではなく、ナダルと堂々と渡り合った。そして彼は実際にナダルをぎりぎりまで追い詰め、テニスの実力で戦いを盛り上げた。

「僕は自分がテニスを助けていると感じているんだ。僕はより大きな注目を生み出す。僕がテニスとって悪い存在だと考える人々は、ただの愚か者だよ。彼らは何もわかっちゃいないんだ」

 ケガや新型コロナウイルス(COVID-19)の状況による長い不在で世界ランクを132位まで落としていたキリオスは今大会にワイルドカード(主催者推薦枠)で出場したが、この活躍で100位前後までランキングを戻す見込みとなっており、来週のマイアミでもワイルドカードを与えられている。

  大会がワイルドカードを与えたくなる男――この事実もキリオスが主張することの正当性を後押ししているだろう。

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写真◎Getty Images

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