公益財団法人全国高等学校体育連盟などが主催する「大正製薬リポビタン第44回全国選抜高校テニス大会」（3月20～26日／団体戦：3月21～25日◎福岡県福岡市・博多の森テニス競技場、個人戦：3月23～26日◎福岡県福岡市・博多の森テニス競技場博多の森テニス競技場＆福岡県春日市・春日公園テニスコート／砂入り人工芝コート）の競技4日目の団体戦は、男女の準決勝が行われた。

　男子団体は第1シードの相生学院（兵庫）が湘南工大附（神奈川）を退け3大会連続優勝（2020年は開催されず）に王手をかけ、九州2位の大分舞鶴（大分）は北陸（福井）を下して初の決勝進出を決めた。

　長い挑戦の末、ついに壁を乗り越えた。2015年と2019年、ベスト4なら過去2度経験している大分舞鶴。センバツだけでなくインターハイでも2014年と2018年に準決勝で敗れた。春夏を通じて初となる決勝進出をかけて、準々決勝で第2シードの四日市工業（三重）を倒してきた北陸と対戦。北陸には昨年のインターハイ準々決勝で敗れていた。

　準決勝と決勝は全試合3セットマッチで、シングルス1と2、ダブルス1が同時にスタートした。大分舞鶴は3試合とも第1セットを奪う快調な滑り出しを見せたが、2セット目はすべて北陸が奪い返した。

　高い壁があった場所には、これくらいの試練はあって当然だ。大園洋平監督はファイナルにもつれる展開を強く覚悟させた上で、「古い考え方かもしれないですが、部活だけで練習し、根性と団結力を養ってきたチームです。競ったら絶対いけるという話をしました」と明かした。

　その自信のとおり、3試合とも流れをもう一度引き戻し、シングルスの髙妻蘭丸（2年）と齋藤樹市（2年）のあと、もっとも競ったダブルス1の大野琢実（2年）／糸永龍矢（1年）がチームの勝利を決めた。

　部の新たな歴史となるこの快挙の裏には、特別な事情があった。16年に渡って同校のテニス部を率いてきた大園監督が転勤のため、この大会を最後に学校を離れるのだという。実は福岡入りしてから正式に決まったことで、選手たちは初戦の直前にその事実を聞いた。

「僕が号泣してしまった」という監督の思いが選手たちに響かないはずはなく、髙妻は「先生を最後に日本一の監督にしたいという思いで、ここまできた。明日、最後に全部の力を振り絞って勝ちにいきたい」と枯れた喉から決意を語った。

　決勝では過去5回の優勝実績を持つ相生学院に挑む。2015年の準決勝で惜敗した相手でもある。


初の全国大会決勝進出を決めた大分舞鶴（大分）（撮影◎上野弘明）

　相生はここまで1試合も落としておらず、昨年準優勝の湘南工大附にも3勝0敗で勝ってきた。昨年の決勝と同じカードになったこの準決勝、注目されたのはシングルス1対決だ。何しろ相生学院の三城貴雅（1年）は昨年まで荏原湘南スポーツセンターに籍を置き、相手チームは昔馴染みばかりで、ダブルス1の坂本健英（1年）は昨年の全日本ジュニアの16歳以下ダブルスを制したときのパートナーだ。対戦した石井凌馬（1年）ともクラブ内で勝ったり負けたりを繰り返してきたライバル関係だという。

　互いの手の内を知る間柄を表すように、第1セットはタイブレークへもつれ、石井がものにした。しかし第2セット以降は「積極的にポイントを取りにいく強い気持ちを出せた」と逆転勝ち。これがチームの勝利を決める3勝目となった。

　海外での本格的な挑戦を望む三城は、その願いが叶う授業カリキュラムを持った相生学院を選んだという。チームメイトたちも多くは「世界へ」という意識を持ち、今回は1年生主体のチームでありながら、優勝した昨年を上回るチーム力という評判だ。シングルス2の山本夏生（1年）も1戦ごとに調子を上げ、今日も危なげなく6-2 6-1の快勝だった。実力が拮抗している層の厚さも大きな強みだ。

　さて、泥臭さで勝負したいという大分舞鶴はこの大本命を崩せるだろうか。（ライター◎山口奈緒美）


荏原湘南スポーツセンター時代からのライバル対決を制した三城貴雅（相生学院2年）（撮影◎上野弘明）