男子は5年ぶり出場のかえつ有明(東京)が中学の頂点へ、名経大市邨(愛知)との決勝含めて負けなしの完全V [2022中学センバツ]

写真は左からかえつ有明の君島渡海(1年)、篠原敬司郎監督、西村星吾(2年)(撮影◎上野弘明)


 全国中学校テニス連盟が主催する「第10回全国選抜中学校テニス大会」(3月28~30日/競技:香川県高松市・香川県営総合運動公園テニス場/砂入り人工芝コート)は全国の中学から男女それぞれ32校が集う団体戦で、大会最終日は男女の準々決勝から決勝までの試合が行われた。

 男子は5大会ぶり2度目の出場となるかえつ有明(東京)と2年連続5度目の出場となる名経大市邨(愛知)が決勝に進出し、かえつ有明が3勝0敗で勝利して1回戦から全勝での初優勝を果たした。

 強豪ひしめく関東から全国へ、そして最後まで勝ち残ったのは関東1位で第1シードの聖徳学園(東京)でも関東2位で第2シードの橘学苑(神奈川)でもなく、関東ベスト4のかえつ有明だった。準々決勝で橘学苑との関東対決を制し、準決勝では初のベスト4入りを果たした立命館宇治(京都)に勝利。明るく楽しくコートの中を駆け、一戦一戦勢いを増しながら全勝のまま勝ち進んでいった。

 かえつ有明の篠原敬司郎監督は、秋からの取り組みについてこう明かす。

「チームの雰囲気や、生徒同士の関係性を良質なものにすることを大切にしてきました。例えば、発する言葉ですね。円陣を組んだときにも『ありがとう!』とか『ポジティブ!』とか、自然に笑顔になれる言葉を言い合う。すると思考も変わってくるんです。今大会も、これだけ強いチームが集まっているのだから結果にフォーカスしすぎず、やれるだけのことをやって負けたらしょうがないじゃん!というリラックスしたメンタルで臨みました」

 監督の話を継ぐように、大会前に「フォー・トゥモロー、フォー・チーム」というスローガンを作ったと話してくれたのは、キャプテンの西村星吾(2年)だ。

「一人ひとりが明日のために、チームのために行動するようにという意味です。簡単なことだけど、例えば早く寝て明日の準備をするとか、皆が考えて行動したので勝てたと思います」

 西村は2回戦、準決勝、決勝と、1年生の君島渡海と組んでダブルスを戦ったが、それ以外に鷲巣廉平(2年)や長谷川新優(2年)とも組んだ。このことからも察することができる通り、かえつ有明は今大会を通して同じオーダーを一度も組んでいない。それは、監督の一存で決めるのではなく選手たちの“フィーリング”を優先し、対話の中で決めていくそうだ。

 1日目の夜からチームに合流した選手もいる。準々決勝、準決勝、決勝とダブルスで3勝を挙げた長谷川だ。個人の大会と重なったために1日目は参加できなかったが、それを終えて香川までやってきた。

「明日も試合なんですけど、今日だけ空いていたので来ました。1、2回戦は他のメンバーが頑張ってくれたけど、やっぱり僕がいないと勝てないだろうと思ったので」と冗談めかして長谷川が豪語すれば、「“暴れん坊”の新優くんがあとから来ることを心配していたんですけど、ちゃんと締まった状態だったので、チームの雰囲気もまたよくなった」と西村。確かに、思ったことを素直に言い合える関係性が伺える。

 一方の名経大市邨は2回戦以降はペアを固定してきた。その中で、第1シードの聖徳学園を破った準決勝で会心の勝利を掴んだ。ダブルス2は敗れたが、シングルスでキャプテンの水野晴貴(2年)が全国私学大会優勝の高橋朝陽(聖徳学園2年)を破り、接戦を戦っていたダブルス1の河野史乃介(1年)/下鍋虎清(2年)に望みを繋いだ。聖徳学園の久保哉人(1年)/田中陽太(2年)も引かなかったが、タイブレークの末に勝利をもぎ取った。


決勝でタイブレークの末に敗れたD2の河野史乃介(左)/下鍋虎清(名経大市邨1年/2年)(撮影◎上野弘明)

 フェンスにしがみついて応援していたチームメイトたちも思わず目線をそらすほどの息詰まる展開だったが、「緊張したけど、2年連続ベスト4は絶対イヤだっていう皆の気持ちがあったので、粘り強くプレーしました」と河野。シングルスで勝った水野も、「チャレンジャー精神で最後まで食らいついていこうと思って頑張りました」と胸を張った。

 こうして迎えた初優勝を狙うチーム同士の決勝戦は、早い段階で3試合ともかえつ有明が優位に立った。まずはここまで全ラウンドのシングルスを戦ってきた東浬玖(2年)が6-1で水野を退け、ダブルス1で長谷川/槐蒼太(2年)が第5ゲームをブレークして6-4で勝利。ここでチームとしての決着はついた。そして最後に残ったダブルス2でも、西村/君島が河野/下鍋に5-1 から5-4まで迫られながら逃げきった。

 初戦から最終戦まで誰も負けない完全制覇。敢えて「ありがとう」と言わなくても、無理して上を向かなくても、皆が心からの笑顔と自信を分かち合えた2日間だった。(ライター◎山口奈緒美)


シングルス全勝で母校の優勝に貢献した東浬玖(かえつ有明2年)(撮影◎上野弘明)

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撮影◎上野弘明

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