「負けて打ちのめされるのも好き」35歳のジョコビッチを突き動かす原動力とは? [セルビア・オープン]
ATPツアー公式戦の「セルビア・オープン」(ATP250/セルビア・ベオグラード/4月18~24日/賞金総額59万7900ユーロ/クレーコート)の男子シングルス準々決勝で第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が第7シードのミオミル・キツマノビッチ(セルビア)に4-6 6-3 6-3で逆転勝利をおさめた。試合後の記者会見でジョコビッチは試合を振り返り、自分のモティベーションの源を語った。
「スコアは昨日の試合に似ている。だが、昨日は相手に圧倒されていた。今日の相手も安定していてミスが少なく、動きも凄くよかった。でも、全体的には昨日より自分の感触がよかった。1セット失い、ブレークをされてからプレーレベルを1、2段階上げられた。チャンスがあれば、生かせると信じていた。第2セットの終盤には相手のアンフォーストエラーにも助けられた。そのあとはまったく異なる展開になった。最終セット3-3まではまったくの互角だった。そのあとの3ゲームで、僕はこの試合で最高のプレーを見せた。このような形で試合を終わらせられたことに満足している。フィジカル面でも、また2時間半の試合を耐え抜くことができた。ラリーも長く、楽ではなかった。疲れはそれほど感じていないのは満足だ。1日休んで土曜日の準決勝に備えるよ」
試合直後、コートで筋肉の記憶と経験の記憶について話していた。
「ああ、筋肉で勝ち抜いたんだ。昨日も今日も、フィジカル的に相手に食らいついていった。すべてのポイントで全力を出しきれた。自分のほうに流れがくるように、正しいメンタルと姿勢で戦い続けた。それが今日起きたことだ。第2セットの途中までは相手のほうがいいプレーをしていた。彼が試合を支配していたし、試合の流れをうまく読んでいた。少しずついいプレーが出始めて、彼の攻略法が徐々にわかってきた。彼はとても高いレベルのプレーをしていた。同じセルビア人として彼の成長はうれしい。セルビアのテニス界にとってグッドニュースだ。経験はまた別の側面の話になる。このような場面は何度も経験しており、間違いなく相手よりも多い。その経験を生かしたんだ。それでも、終盤までどちらが勝ってもおかしくない、競った試合だった」
しばらく実戦から離れていたが、どのように規律を持って自分のプレーを構築してきたのか?
「一般論を話すことも、35歳の選手として話すこともできる。当然、25歳の選手とはまったく異なるものだ。ツアーで20年近くプレーしていると、まったく違ってくる。試合へのメンタル面でのアプローチの仕方も変わってきている。この10年で自分の人生が大きく変わってきた。当然自分の体も変化している。その変化に対応していかなければならない。自分の体をよく理解しないといけない。継続的にチームとともに自分のプランを構築していく。大事な試合でピークに持っていき、若い選手たちと戦えるようにするんだ」
「僕にとって年齢はただの数字だ。35歳だけど、体はそれより若いと感じている。これだけ長くプレーしていると、ツアーの日程への順応、調整が必要になる。若い頃のように1年間フルに戦いたいとは思っていない。どの大会に出場するか、どの大会が大事なのかしっかり判断して、自分のピークを調整していく。例えば今なら、ロラン・ギャロスが最大の目標だ。もちろんすべての大会、試合で勝ちたいと思っている。それが自分のメンタリティだ」
「早期敗退して試合数が少ないと、不思議な感覚になる。でも、幸運にもキャリアを通して早期敗退は少なく、ランキングは常に上昇していった。ケガをして手術を受け、ランキングが落ちていったとき以外はね。ずっと男子テニス界のトップに君臨し続けた。もちろん周囲の期待は大きい。僕がプレーすれば99%の試合は勝つと思われている。でも、そんなことは不可能だ。ときには負けを受け入れるしかない。調子が悪いときもあり、調子を取り戻すのに時間が必要なときもある」
「サーフェスにも、年間のどの時期か、自分自身の気持ち、自分の周りで何が起きているのか、私生活と多くの要素にも影響される。すべてがコート上のパフォーマンスに繋がっている。最高の状態に持っていくのに、規律は絶対に欠かせない。規律の前にまず必要なのが献身性と情熱だ。すべてを捧げることができなければ、必要な規律は手に入れられない。それより前にモティベーションがくる。何故プレーしているのか? 僕はいつでもテニスへの情熱と愛情によって突き動かされている。誰も僕がテニスをするように命令している訳じゃない。自分の意志でプレーしているんだ。いま引退してもいいくらい、多くのことを成し遂げてきた。でもまだモティベーションも刺激もある」
「セルビアの人々の前でプレーできるのは貴重な機会で、大きなエネルギーになる。ここにいるのが好きで、試合をするのが好きなんだ。少し変だと思われるかもしれないが、僕はビッグマッチに負けて打ちのめされるのも結構好きなんだ。それはつまり、負けた悔しさがあるということだから。世界最高の選手たちと戦って勝ちたい気持ちがあり、勝ちにこだわっているからだ。テニスのレベルや質について話すなら、この5年間は自分のやってきたことを信じて、どの大会が自分にとって重要なのかをしっかり判断してきた。いま自分のキャリアがどのように進んでいるかについて、とても満足している」
ジョコビッチは準決勝で、第3シードのカレン・ハチャノフ(ロシア)と対戦する。
写真◎Getty Images
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