ズベレフが並外れたプレーでアルカラスに勝利、準決勝はジョコビッチを倒したナダル [フレンチ・オープン]
今年2つ目のグランドスラム大会「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月22日~6月5日/クレーコート)の男子シングルス準々決勝で第3シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)が第6シードのカルロス・アルカラス(スペイン)を6-4 6-4 4-6 7-6(7)で倒したとき、ズベレフのほうが上位だったにもかかわらず多くの人々がこれを驚きと受け取った。それほど18歳のアルカラスは、早ければ今年にもこの大会を制す可能性がある大器だと見なされていたからだ。
その大器の挑戦を押し返して徹頭徹尾ハイレベルなプレーを見せたズベレフは、25歳となった自分も成長しているのだというところを示して見せた。皆がナイトセッションの大一番について話していた火曜日、今大会のベストマッチを演じたのは恐らくズベレフとアルカラスだった。
隙のないプレーで最初の2セットを取ったズベレフはそのあと不屈の精神で追い上げてくるアルカラスを前にプレッシャー下に置かれたが、第3セットを落としても、第4セットで5-4からブレークバックされても、タイブレークで5-6とセットポイントを握られても、過去に何度かそうだったように揺らぐことはなかった。
「今日は最初から最後まで、自分の絶対的なベストのプレーをしなければならないことはわかっていた。そしてそうできたことをうれしく思う」とズベレフは死闘の熱も冷めやらない試合後のオンコートインタビューで語った。
「彼は繰り返し挽回してきた。彼は本当に信じられないような選手だ。ネット際で(握手したときに)僕は彼に『君は一度だけでなく、何度も何度もこの大会で勝つだろう』と言ったんだ。彼が僕ら皆を打ちのめし始め、僕らにまったくチャンスがなくなってしまう前に僕も勝っておければと願うよ」
マドリッド決勝ではアルカラスに力なく敗れたズベレフだが、この日は最初からまったく様相が違った。出だしにややミスが早かったアルカラスは劣勢に立たされながらも決して諦めずにその都度蘇ってきたが、ズベレフは第3セットを落としたときでさえ高いレベルを保って完全に主導権を譲ることはなかった。
双方が一歩も引かなかったハイレベルな第4セットのタイブレークを9-7で制して勝利をもぎ取ったあと、「試合は彼のほうに傾きつつあった。だからタイブレークを取ることができてよかったよ。昨年の準決勝のように、5セットにもつれた末にがっかりしなくて済んだしね」とズベレフは率直な心境を吐露した。
確かに不屈のメンタルを持つアルカラスが相手だけに、1ポイントの違いで結果が覆る可能性もある試合だった。だからこそズベレフは、マッチポイントでギャンブルに出る決心をしたと明かした。タイブレークを終わらせたバックハンドで放ったダウン・ザ・ラインのリターンエースについて尋ねられたとき、ズベレフは「あれは僕がやるのが好きなワンショットなんだ。キャリアを通して何度もやったよ」と答えた。
「自分で勝利をもぎ取らなければならなかった。大アウトでミスするかウィナーを決めるかだと感じ、だからウィナーを打ち込んだ。それについてはかなり満足しているよ」
そしてその勇敢なアプローチは、この日の試合を通して彼が貫いた姿勢だった。
「カルロスは今、世界最高の選手のひとりだと思う。彼を倒すのは不可能に近いように思えるくらいだ。それをやるには、最初の1ポイントから自分が最高のプレーをしなければならないとわかっていた。彼にリードを許して自信を与えてしまうと、そこから挽回するのは僕にとって非常に難しくなる。4セットで勝ち、5セットに突入せずに済んで本当によかったよ」という言葉をズベレフは記者会見の場でも繰り返した。
男子テニスの『ビッグ3』とアルカラスやオルガ・ルーネ(デンマーク)など新世代の合間に位置するズベレフは「結局のところ、僕はもう20歳や21歳ではない。僕は25歳だ。僕は今、優勝したい段階にいる。勝って然るべき段階にいるとも言える」と自負を語り、現時点での自分の立ち位置を見つめた。
「僕たちの前にはまだノバク、ラファという世界最高の選手たちがおり、ロジャー・フェデラー(スイス)も戻ってくる。それから新世代が台頭してきているけど、僕らの世代も非常に強いと思うんだ。僕らの世代にはステファノス・チチパス(ギリシャ)やUSオープン優勝者のダニール・メドベージェフ(ロシア)がおり、僕もオリンピックという大きな大会で優勝した」
ズベレフは準決勝で、第5シードのラファエル・ナダル(スペイン)と対戦する。ナダルは日付が変わった深夜に終わったナイトセッションで、大会連覇を目指していた第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)を6-2 4-6 6-2 7-6(4)で退けた。
自分もついに一線を超えるべきときがきたと感じているズベレフは、「彼ら(ジョコビッチ、ナダル)がグランドスラム大会で世界最強なのには理由がある。ひとり(ナダル)は21、もうひとり(ジョコビッチ)は20のタイトルを持っている。彼が15~20年もテニス界の頂点にいることには理由があるんだ」とコメントした。
「確かに僕はグランドスラム大会で彼らを倒したことはないけど、かなり近くまできていると感じている。彼らに対して非常に競った試合を戦った。しかしもちろん、競った試合をするのと彼らを倒すことに間には大きな違いがある」
オンコートインタビューを担当した2001年フレンチ・オープン準優勝者で元世界ランク2位のアレックス・コレチャ(スペイン)は「このような試合に勝つには辛抱強く、同時に勇敢でなければならず、アグレッシブでなければならず、更に特別でなければならない」と言ったが、この日のズベレフは正にそのようにプレーしていた。問題は、彼がそれを次もその次も繰り返せるかということだ。
「今日のこの勝利を金曜日にもコートに持ち込むことができるよう願っている」と話したズベレフは、そのことを自覚している最たる人物だろう。
写真◎Getty Images
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