苦難を乗り越え14回目の栄冠を掴んだナダルの秘密「僕は足の神経に注射をしてプレーしていた」 [フレンチ・オープン]
今年2つ目のグランドスラム大会「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月22日~6月5日/クレーコート)の男子シングルス決勝で第5シードのラファエル・ナダル(スペイン)が第8シードのキャスパー・ルード(ノルウェー)を6-3 6-3 6-0で下し、同大会で14回目の栄冠に輝いた。
これでナダルはグランドスラム獲得タイトル数で自身の持つ男子最多記録を更新し、ロジャー・フェデラー(スイス)とノバク・ジョコビッチ(セルビア)よりふたつ多い「22」となった。
クレーコートシーズン直前に肋骨の疲労骨折に見舞われたナダルは復帰戦のマドリッドで同胞の若手であるカルロス・アルカラス(スペイン)に土をつけられ、ローマでは慢性的な足の痛みに苦しみながらデニス・シャポバロフ(カナダ)に敗れた。
多々あった苦境を乗り終えてこのタイトルに辿り着いたナダルはかなり一方的に勝ったにもかかわらず、勝利の瞬間にそれまで険しかった表情を崩し、両手を顔に当てて少女のように喜びの涙を抑えた。
「このトロフィーをふたたび自分の横に置けるということは、僕にとってすべてを意味する。本当に感情を揺さぶられる勝利だった。ある意味で予想外の優勝でもある。本当に幸せだ」とナダルは試合後の記者会見で語った。
「素晴らしい2週間だった。ゼロに近い状態からプレーし始め、試合ごとによくなっていった。そしていい決勝をプレーして大会を終えた。凄くうれしいし、ここに最初にやってきた日からのサポートについて皆にお礼を言いたい。本当に感動的だった」
決勝でこそ相手を圧倒したナダルだったが、競技面でもここまでの道のりは決して簡単ではなかった。4回戦で第9シードのフェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)にぎりぎりまで追い詰められ、準々決勝で大会連覇を目指していた第1シードのジョコビッチに対する苦闘を勝ち抜かねばならず、準決勝では絶好調だった第3シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)を前にときに守勢に回ることを強いられながらも駆けずり回って解決策を探した。
ズベレフが右足首を捻るアクシデントに見舞われ棄権を余儀なくされ、非常に長くなる可能性のあった試合が第2セット終了を待たずに打ち切られなければ、非常に長い死闘になっていた可能性は高かった。
そんなナダルが、すべてが終わったあとの試合後の記者会見である秘密を明かした。
「大会中に足の状態については何も話したくなかった。今は大会が終わったから、話すことができる。大会中は自分のテニスに集中して、僕のライバルたちをリスペクトしたかったんだ」と前置きした上で、「僕はここ2週間の間、極端なコンディションの中でプレーすることを可能にしてきた。僕は足を眠らせるため、神経に注射を打ってプレーしていたんだ。だからこそ僕はプレーすることができていたんだよ」とナダルは告白し、その苦難を乗り越えた喜びはひとしおなのだと強調した。
「ドクターが麻酔注射を打っていたから、痛みを感じなかった。でも足に感覚がないのだから、足首を捻るなど他のケガを負ったときには大きなリスクが付きまとう。でも、ロラン・ギャロスはロラン・ギャロス。僕にとってどれほど重要なものか皆が知っているし、優勝を目指すチャンスを自分に与えたかったんだ」
写真◎Getty Images
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