初のグランドスラム決勝で完敗したルード「試す価値はあった。間違いなくいい経験」 [フレンチ・オープン]

写真は男子シングルス表彰式で準優勝プレートを受け取ったキャスパー・ルード(ノルウェー/中央)(Getty Images)


 今年2つ目のグランドスラム大会「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月22日~6月5日/クレーコート)の男子シングルス決勝で第5シードのラファエル・ナダル(スペイン)が第8シードのキャスパー・ルード(ノルウェー)を6-3 6-3 6-0で下し、同大会で14回目の栄冠に輝いた。

 ナダルに完敗を喫したが、ルードにとってこの初めてのグランドスラム大会決勝の味はほろ苦くはあっても何より甘いものだったらしい。

 自他共に認めるナダルファンのルードは初の決勝で敗れたあとの記者会見で、子供の頃にロラン・ギャロスに観戦にきた日のことを思い出し、「(そのときとこの決勝と)両方の日を楽しんだ。でももちろん、自分がそこにいてプレーしているほうがより楽しいね」と話した。

「皆のキャリアにとって、他のことよりも記憶に残る瞬間というものがあると思う。これは僕のリストの最上段にある、これまでプレーした中でもっとも大きな試合だ」

 試合序盤のルードは堅固にプレーしてはいたが、新人でも例えばカルロス・アルカラス(スペイン)やステファノス・チチパス(ギリシャ)、今回のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)が持っていたような、大物であろうが絶対に倒してやるという気迫(キラーインスティンクト:闘争本能)が欠けていた。初のグランドスラム大会決勝では無理もないとも言えるが、このサスペンスの欠如に苛立った専門家たちもいる。

 第1セットを落としたルードが第2セットでようやく奪ったブレークと3-1のリードをその直後のゲームでやや愚かなミスによって台無しにしまったあと、現地テレビの解説を務めていた元ウインブルドン優勝者のマリオン・バルトリ(フランス)は「シナリオはすでに書かれている。今の彼(ルード)には状況を覆す力はない」と口を滑らせて実況アナウンサーにたしなめられた。

 第2セットの序盤に訪れたその希少なチャンスを生かせず簡単に敗れたあと、「彼は僕がここ16~17年ずっとテレビで観てきた選手だった。その彼と対戦するというのはチャレンジだったけど、楽しい挑戦だった。もっと競った試合がしたかったけど、結局のところ僕はいつの日か孫に『ロラン・ギャロスのシャトリエ・コートでラファと決勝を戦ったんだよ』と言えるようになればと思う。孫たちは『えっ、本当に?』と言い、僕は『ああ』と答える。僕はこの瞬間を長いこと楽しめるんじゃないかな」とルードはコメントした。

 確かにこんなふうに喜んでいるようでは大舞台でナダルを倒すことなどできないが、これは彼にとって最初の一歩ということを考慮し、バルトリは彼を大目に見てやるべきだろう。

 今やロラン・ギャロス決勝を14回戦いすべて優勝した男であるナダルにその聖地で挑むのは、これまで直面した中でもっとも厳しいチャレンジだったと言ったルードは、「試合前にはこんな感じかなと想像していたけど、今は少なくともそこで自分が何に直面するのかを知っている。本当に厳しいチャレンジだ。ある意味でわかってはいたけどね」と話した。

 前述の第2セット出だしでナダルのミスもあって手に入れたせっかくのブレークを無駄にしてしまったことについてルードは「第2セットでややチープなブレークを手に入れ、3-1とリードした。そしてもちろんそのまま試合を進め、セットを取ることを目指したかった。でもそこから彼がレベルを上げ、必要な瞬間には素晴らしいプレーができることを示して見せたんだ」と弁明し、そこから勢いを失っていった終盤について「彼はフォアもバックも強いから、どこにボールを送ればいいのかわからなかった。最後にはどこでプレーすればいいのかわからなくなり、彼は僕を激しく振り回し、走り回らせた。クレーコートでラファに対して守備的にプレーしようものなら、彼は相手を生きながら食ってくる」と説明した。

 この初対戦の前にルードはマヨルカのアカデミーでナダルと練習したことはあったが、その練習の体験はグランドスラム大会決勝でのナダルとの対決を再現し得なかった明言した。 

「表現するのが難しいけど、彼は練習と試合と同じやり方でプレーしている。でも今日、状況は少し違った。グランドスラム大会決勝でプレーするのは僕にとって初めてだったんだ。今日コートに出るまで実感できていなかったけど、満席のスタジアムを見てその雰囲気を感じたよ。最初、あの状況を心地よく感じるのはちょっと難しかった。でも試合が進むにつれて少し気分がよくなっていき、落ち着いて息をつくことができた。でも僕はグランドスラム大会でもっとも多くのタイトルを獲った選手と決勝でプレーしていた訳だから、簡単ではなかったよ。でも試す価値はあった。間違いなく、いい経験だよ」

 安定感や一貫性という面で優れているルードは、「僕は大会を通してすべてのポイントで素晴らしいテニスをプレーしていた訳ではないけど、それでもほとんどの試合に勝った。ベスト・オブ5セットマッチが非常に長くなりかねないこともわかったよ。マラソンみたいにね」と話し、これが貴重な学びの機会だったということを強調した。

「それが、僕がこの経験から学ぶことだと思う。また自分が体をいい状態に保てていることにも気付いた。2週間に渡って痛みもケガもなく、かなり長い試合をプレーすることができた。それもまたいい兆しだと思うよ」

 極めて人のよさそうな印象を与えるルードがこれからガツガツと上位選手を食う男になるかは定かではないが、ひとまずグランドスラム決勝の第一弾を経験した彼は、この準優勝で世界ランク自己最高の6位に浮上した。

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写真◎Getty Images

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