「俺はメドベージェフやルブレフと対戦したい。彼らの欠場は残念」大会に向けて語るキリオス [ ウインブルドン]
今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月27日~7月10日/グラスコート)に出場するニック・キリオス(オーストラリア)が大会への意気込みを語った。
ウインブルドンでふたたび満員の観衆の前でプレーするのはどんな気持ち?
「物凄く興奮するね。グラスコートでいいプレーができている。凄くいい感触だ。メンタル面も準備ができている。試合が待ちきれないよ。またグランドスラム大会に出場することができる。これを当たり前だと思いたくない。若い頃、グランドスラム30大会近くも出場できると思わなかった。とても誇りに思う。特別なエネルギーを感じられるよ」
マヨルカで棄権したが、今の状態は? グラスコートで9試合戦い、かなり状態がいいのでは?
「間違いないね。たくさんの試合をこなした。誰も予想していなかったと思う。シーズンの真ん中で2ヵ月間休養してからグラスコートで復帰するのは俺くらいだろう。たくさん試合をしていい結果も出ている。強い選手も倒している。自分のレベルに満足しているよ。これほどグラスコートに向けていい準備ができたのは久し振りだ。こなした試合数にとても満足しているよ。体に疲労が蓄積しているのがわかったから、マヨルカは棄権した。今大会はポイントが貰えないが、自分の力をすべて注ぎ込むべき大事な大会なんだ」
4月から6月の間に休養したが、自分のスケジュールの中で友人や家族と過ごす時間はどれほどのウェイトを占めている?
「それが俺のやり方さ。1年中大会に出続けるような選手になりたくない。オーストラリアに住みながらテニスのツアーを周るのは、これまで何度も言ったが、家族や友人と会うなど普通の生活を送るのが本当に大変だ。7~8ヵ月遠征に出るような生活はもうごめんだ。耐えられない。ランキングとかそんなものを追いかけたくない。どうでもいいんだ。今年トップ10の選手と何度か対戦してきたが、彼らが普通に見えるほど、俺はいいプレーを見せたはずだ」
「自分の状態はよくわかっている。自信があればいいプレーができる。大事なときに力を発揮できるよう、自分で自分をうまくコントロールできている。ただ大会を選ばないといけない。それほどたくさんは出られない。プレーするときは、自分の最高のプレーを出し尽くしていい結果を求める。もし若い頃にこのやり方を見つけていれば、全然違ったストーリーになっただろう。今はここにいることを誇りに思う」
今大会、多くオーストラリア人選手が予選を勝ち抜いた。仲のいい選手も一緒に戦うのはどれほどのプラスになる?
「彼らは皆それだけの実力がある。タナシ・コキナキス、ジョーダン・トンプソン、ジョン・ミルマン、アレックス・デミノー、ジェームズ・ダックワース。皆トップ50で戦える選手だ。一緒に成長を見てきた。彼ら自身よりも俺のほうが彼らの実力に自信を持っている。昨日トンプソンと練習したが、彼はグラスコートならトップ20に入れる。彼らが化けるする姿を見たいんだ。彼らならできる」
「それが自分の自信になるとは言わない。でも彼らの能力はよくわかっているつもりだ。3年前、ここでトンプソンと対戦した。嫌だったよ。5セットにもつれた。彼らのうち誰かが今大会でブレークしても驚かない。信じることが必要だ。もう少し自信を持てれば、可能性はさらに大きく広がるんだ」
観客はアンダーサーブを見て喜ぶが、君がグランドスラムを勝ち獲ったらテニス界はどんな反応を見せると思う?
「それでも何かネガティブなことを言うと思う。考えたくないな。なるべくポジティブな姿勢で自分のことに1日1日集中するだけだ」
センターコートをどう思う? また白いウェア以外禁止のルールについてどう思う?
「小さい頃あまりテニスを観なかったんだ。初めてセンターコートに立ったのは2014年にラファエル・ナダル(スペイン)と対戦したときかな。このコートにはいい思い出がある。素晴らしいコートで凄いエネルギーに溢れている。コートに入るとき、歴代の偉大なチャンピオン、すべてのテニス選手の歴史、そこに皆が辿り着くまでの努力などが頭に浮かぶんだ。かなり特別なコートだよ。いろんな選手がいろんなことを成し遂げてきた」
「服装については、自分はいつでも全身黒でまとめたいんだ。でも、このルールは変わるとは思えない。もし黒いヘアバンドやリストバンドが許されたら格好いいなと思う。まあ、ウインブルドンは何が格好いいかなんか関係ないんだろう。変わることはないだろう」
ロシア人選手、ベラルーシ人選手が出場できないことをどう思う?
「ロシア人が出られないのは正直、いいアイディアだと思わない。今テニス界で、ダニール・メドベージェフ(ロシア)は最高の選手だ。他にもアンドレイ・ルブレフ(ロシア)やカレン・ハチャノフ(ロシア)のような若手は、テニス界の発展に欠かせない。テレビをつけてテニスを見るとき、そこで最高の選手たちが観られることがテニスの発展には重要なんだ。個人の選手として、彼らと対戦したいと思う俺にとって、彼らの欠場は残念だ。メドベージェフがここにいないのは変だ。彼にどれほどの力があるのか、皆が知っているはずだ」
「ランキングのポイントについてはよくわからない。変だ。俺はポイントのためにプレーしていないから、他の選手に聞くべきだ。子供のときにウインブルドンを観て、ランキングポイントのために出場したいと思った訳じゃない。世界最高峰の大会に出場することだけを考えていた。そのために今ここにいる。ポイントが貰えないからプレーしないという選手もいる。ポイントの貰えるチャレンジャー大会に出るとね。もし何年後かに、自分の子供に“ウインブルドンに出場する代わりにチャレンジャー大会に出たんだ”とは恥ずかしくて言えないね。絶対にウインブルドンを選ぶよ」
トップ10選手を相手にいいプレーができていると言ったが、今大会誰にでも勝てると思う?
「ああ」
そのために必要なこと、カギになるのはどんなこと?
「いい睡眠と良い休養だ。体がいい状態にあることは一番重要だ。俺はサービスの調子がよくていいプレーができれば、誰でも倒せる。今大会に出場している多くの選手を倒してきたはずだ。当然簡単じゃない。グランドスラム大会で優勝する険しい道のりは誰でも乗り越えてきた訳じゃない。それは自分にとっても大きな課題だ。よく、“彼はグランドスラム大会で優勝できるのに、才能を持て余している”と言われてきた。でも、その道をシングルスで乗り越えられた選手は多くない。俺がいつか乗り越えたいと思っている道だ。俺には自信がある。ウインブルドン、オーストラリアン・オープンではかなりいいところまで勝ち上がったことがある。いつも絶好調の選手に当たってしまうんだ。いつかは、アンディ・マレー(イギリス)に4回戦で敗れたが、彼はそのあと勝ち進んで圧倒的強さで優勝した。あり得ないほど厳しいドローだった。2015年が一番優勝に近かったと思う。準々決勝でミロシュ・ラオニッチ(カナダ)と対戦したときだ。1セット先取したあと、先にブレークもしていた。ポイントになるのは大会序盤だ。できるだけ早く試合を終わらせることだ。でも、今はそんな先のことはまったく考えていない。しっかり練習していい状態でプレーすることだけを考えている」
1回戦の相手ポール・ジャブ(イギリス)についてどのくらい知っている? また、今年のオーストラリアン・オープンではダブルスで大会を盛り上げたが、今大会もシングルスでそうするつもり?
「どこでプレーするときも、観衆は俺が物凄いエネルギーを巻き起こすのを期待している。自分がしたいことでもある。1回戦の相手の気持ちはよくわかるよ。彼のように俺も若い頃にオーストラリアン・オープンでワイルドカード(主催者推薦枠)をもらって出場できた。メディア対応、ファンの反応、すべてが楽しくて仕方なかった。彼も同じだと思う。何も失うものなどなく、自由にプレーするんだ。自分がその立場のときは、楽しかったなあ。いつもアンダードッグとしてコートに立つんだ。プレッシャーが何一つない。だからこそ、危険な試合になる。勝って当然と思われるのは簡単じゃないんだ。過去に苦い経験もある。観客はホームの選手を応援するだろうから、俺は気持ちをうまくコントロールしなければならない。悪役は何度も経験しているし、得意だ。それを最大限に楽しむつもりだ。テニスを楽しむだけだ。この数週間の自分の成績を見ると、自分のことに集中すれば楽に勝てるはずだ。でも、そうはならないだろう。かなり集中しなければならない」
コキナキスが、今年のオーストラリアン・オープンのような雰囲気を作り出すことに自信を持っていた。ウインブルドンでも同じことができると思う?
「ここではオーストラリアほど大量の酒が用意されていないんじゃないか? 観客は楽しみにしているだろうが、ここが同じことをやるべき場所なのかわからない。俺は今シングルスのことだけに集中している。毎日ニック・キリオスとして過ごすのは簡単じゃないんだ。SNSも、期待も大きく、練習に集中するだけで大変だ。ダブルスについては何も考えていない。シングルスの準備をしているだけだ。ダブルスは楽しいが、今は考えていない」
アンディ・マレー(イギリス)の復活を喜んでいる?
「彼は今でもグラスコートでもっとも危険な選手の一人だ。彼の状態がいいなら、彼のスピードの使い方、リターン、スライス、ボレーは最高レベルだ。絶対に対戦したくない相手だ。だが、今は俺も絶好調だ。シュツットガルトでの対戦で、第1セットはかなりよかった。今の彼に何ができるのかよくわかっている。危険だ。今ランキング50位辺りだが、50位にいるのは簡単なことじゃない。今、この会見場でトップ50に入ったことがあるのは、見渡す限りトッド・ウッドブリッジ(オーストラリア)くらいだろう。彼は最高さ。これでいいかい?」
今も仲がいいんだね?
「そうだよ。彼はシュツットガルトで俺を倒した。その直後にメッセージを送ってきたんだ。これは仲がいい証拠だろう?」
2014年にここでラファエル・ナダル(スペイン)を倒し、ミックスダブルスではレジェンドのビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)と組んだ。男子ダブルスには出ないのか?
「ダブルスの5セットマッチは戦いたくないんだ。馬鹿げている。何故5セットマッチなんだろう? 誰もプレーしたくないし、観たいとも思わない。もし1セットオールになったら、あと3セットもやらなきゃいけないのか、と思う。だから嫌なんだ。意味がない。この大会ではシングルスでいい成績を残しているのに、せっかくのオフを5セットのダブルスで潰したくないんだ」
写真◎Getty Images
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