アルカラスが短い不振を乗り越え頂点へ「僕は少し喜びを見失っていた」 [USオープン]
今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月29日~9月11日/ハードコート)の男子シングルス決勝で第3シードのカルロス・アルカラス(スペイン)が第5シードのキャスパー・ルード(ノルウェー)を6-4 2-6 7-6(1) 6-3で下し、19歳にしてグランドスラム初優勝を飾った。
インディアンウェルズで世界の注目を集め、続くマイアミで優勝したあとマドリッドでふたつ目のATPマスターズ1000大会タイトルを獲得して破竹の勢いだったアルカラスだが、その成功で膨れ上がった期待とプレッシャーの重圧を感じて一時小さな不振に陥っていた。
USオープンに先立つ北米ハードコートシーズンの最中に、アルカラスは「今のステイタスに初めてプレッシャーを感じ、それに対処できなかった」と明かしていた。それはモントリオールの初戦でトミー・ポール(アメリカ)に敗れたあとのことで、翌週にはシンシナティの準々決勝でキャメロン・ノリー(イギリス)に敗れて疑念は膨らんでいった。
ATP(男子プロテニス協会)によれば、USオープン前にコーチのフアン カルロス・フェレロ(スペイン)はアルカラスが「コートでの喜びを少し失ってしまっているのではないか」と心配していた。彼はニューヨーク入りした際に、よりリラックスしてネットに出てアタックするようアルカラスに薦めていた。
「僕は少し喜びを見失い、プレッシャーを感じていた。コートの上で微笑めなくなっていた。前には毎試合、毎大会でそうしていたというのに」とアルカラスは告白した。
「でも僕はここに、楽しむためにやってきた。コートで微笑み、テニスをプレーすることを楽しむために。僕はもちろん、テニスをプレーするのが好きだ。もし僕が笑顔で楽しんでいれば、最高のレベルでベストテニスをすることができるのだと思う」とアルカラスは決勝後の記者会見で語った。
優勝を遂げると同時に世界ランク1位になることを約束されたアルカラスは、少し前に今年の目標に挙げていたシーズン末にイタリア・トリノで開催される世界トップ8による「Nitto ATPファイナルズ」の出場権を獲得した。そこでいい成績を挙げれば、彼は年末世界1位になることも可能となる。
「僕は自分自身の内部にある困難を克服した。この2週間を通してインテンシティの高い素晴らしい試合を戦った。こんなことは以前に一度もやったことがなかった。僕に言えるのは、まだ成長過程ながら世界1位に上り詰めることができて本当にうれしいということだけだ。本当に、本当に幸せだよ」とアルカラスは喜びを吐露した。
「自分がこのようなことを19歳で達成するなんて考えたこともなかった。すべてはあっという間にやってきた。僕にとっては信じられないようなことだよ。それは僕がテニスを始めた幼い子供の頃から夢見ていたことだったんだ。でももちろん、僕はより多くを求めている。僕は何週間も、できるなら何年も世界の頂点にいたい。この素晴らしい2週間のあと、僕はふたたびハードワークに取り組み、もっと多くを手に入れるために戦うつもりだよ」
昨年の大会で本戦デビューを遂げたとき、アルカラスは世界55位に過ぎなかった。その年に彼はステファノス・チチパス(ギリシャ)を倒すなどして準々決勝に進出したが、当時はまだ自分が優勝までいけるとは思っていなかった。
グランドスラム大会で優勝することが夢から目標に変わったのは、マイアミでマスターズ初制覇を果たしてからだった。偶然にも彼は、そのときにも決勝でルードを破っていた。
「マイアミで優勝してから、僕はグランドスラム大会で優勝することは可能だと思うようになった。マイアミ以前には、まだまだ成長しないとと考えていたんだ。グランドスラム大会でいい成績を挙げられるんじゃないかとは思ったけど、チャンピオンになるなんて考えてもいなかったよ」
写真◎Getty Images
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