レーバー・カップで最後の大会に臨むフェデラーがロンドンで会見「素晴らしい旅だった」

写真は大会前の記者会見でのロジャー・フェデラー(スイス)(Getty Images)


 2017年に創設された『欧州選抜vs世界選抜』のチーム対抗戦「第5回レーバー・カップ」(イギリス・ロンドン/9月23~25日/室内ハードコート)を最後に引退することを表明した41歳のロジャー・フェデラー(スイス)が9月21日に大会前の記者会見を行い、「苦くて甘い」心境を語った。

「常に、永遠にプレーしたいと思うものだ。僕はコートにいるのが好きだった。ライバルたちと対戦し、世界中を旅して周るのが好きだった。僕にとってそれが大変と感じたことはあまりなかった。勝つことも敗戦から学ぶことも、すべてがよかった。僕はあらゆる角度から、自分のキャリアを愛している。それが引退の辛い部分だ」とフェデラーはコメントした。

「甘く優しい部分は、誰もがいつか引退しなければならないとわかっていることだ。誰にでも競技から離れるときがくる。本当に素晴らしい旅だった。そのことに関して、僕は心から感謝している」

 2004年2月2日から2008年8月17日まで歴代最長記録となる237週連続でATPランキング1位の座に就いたフェデラーはツアーレベルで「103」のタイトルを獲得し、グランドスラム大会で20回栄冠に輝いた。

 自分がテニスの歴史上に占める位置について、「僕は間違いなく誇りに思い、自分のいる場所に非常に満足している」とフェデラーは語った。

「僕の重要な瞬間なひとつは、ピート・サンプラス(アメリカ)が男子の最多記録保持者だったときに僕がウインブルドンで15回目のグランドスラム制覇を果たしたことだった。あれ以降に勝ったのはすべてボーナスだ。あれは重要な記録であり、その過程で他の記録もあった。15からさらに5つもタイトルを獲ることができて凄く幸せだ。僕にとって、それは信じられないほど素晴らしいことだった。それから100以上のタイトルを獲ったけど、そのすべてが夢のようだった」

 1998年のグスタードでツアーデビューを果たしたフェデラーは、20年以上もテニス界の頂点に君臨してきた。若い頃にはムラ気もあったが、そこから人間としても選手としても成長して長寿のキャリアを送ったことを誇りに思っているフェデラーは、「キャリアを始めた頃、僕はかなり波があることで知られていた。僕は不安定さで有名だったんだ。でもそのあと、自分がもっとも一貫性のある結果を出せる選手のひとりになったというのは僕にとっては驚きだよ。それは個人的に、僕にとっての素晴らしい成果だ」と話した。

 これに先立ちフェデラーが最後にプレーした大会は、準々決勝でホベルト・フルカチュ(ポーランド)に敗れた2021年ウインブルドンだった。彼は2022年にもウインブルドンでプレーすることを目指していたが、膝が思うように回復しなかったのだと説明した。

「夏の初めにトレーニングで次のレベルに進むためのプロセスが始まり、その頃に難しくなってきているのが感じられたんだ。テニスは復活が難しいスポーツだ。毎週のように違う大陸に移動し、違うサーフェスで長い試合を5試合連続で戦わなければならない訳だからね。メンタル的に、そこまで戻っていけると知っている必要があるから難しいんだ。そしてもっとも辛いのは、そのあとかもしれない。ある時点で『これで終わりなんだ』と気付く瞬間は凄く悲しいものだ。僕は暫くその事実を無視しようとしていたけど、その瞬間はウインブルドンに行った少しあとに訪れた。僕はまだ、来年はそこに戻ってくる可能性があると心底信じていたんだ」

 友人であり宿命のライバルでもあるラファエル・ナダル(スペイン)とキャリアを通して40回対戦したフェデラーは、レーバー・カップでナダルのチームメイトになる。ナダルとダブルスを組む可能性について尋ねられたフェデラーは、「もし実現したら、ユニークな比類ない状況になるだろうね」と答えた。

「僕たちは長いこと、常に互いに敬意を払いながら戦ってきた。家族同士もお互いのコーチングチームとも、いつもとても仲よくやってきた。僕らのようなキャリアを送ってきてこれだけいい関係を築くことができるというのは、テニスだけでなくスポーツを超えた意味でも素晴らしいメッセージかもしれない。その意味でも、もしそれが実現すれば特別な瞬間になるだろう」

 こよなく愛したウインブルドンがあるロンドンでライバルや名選手たちに囲まれて最後の試合を戦えることを喜ぶフェデラーは、「ロンドンでできることがうれしい。もっとも特別な場所、ウインブルドンも直ぐ近くにある。ぴったりだと思う。僕はいつもここの観客たちと一緒に楽しんできたからね」と同地への思いを口にした。

 レーバー・カップでは身体の問題を考慮し、シングルスはプレーせずダブルスのみになるだろうとフェデラーは明かした。

「月曜日にステファノス・チチパス(ギリシャ)と練習して自分がいい感じでボールを打てたことに驚いているけど、シングルスはプレーしない。不可能なんだ。だからこそ僕は、バーゼルでのスイス室内出場を断念したんだよ。金曜日の夜にダブルスをプレーすると思う。許容できるレベルでプレーできると思うけど、本当に長いこと公式戦でプレーしていないからプレッシャーは大きいよ。でもプレーできなくても問題じゃない。重要なのはファンに感謝の気持ちを伝え、彼らが僕を観ることができるということだからね」

 フェデラー、ナダル、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、アンディ・マレー(イギリス)の『ビッグ4』が顔を揃えた欧州選抜は今年もビヨン・ボルグ(スウェーデン)を監督に5連覇を目指し、フェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)やテイラー・フリッツ(アメリカ)を擁しジョン・マッケンロー(アメリカ)率いる世界選抜と対戦することになる。

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写真◎Getty Images

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