「内転筋に弾けるような感触がした」メドベージェフの途中棄権でジョコビッチが決勝進出 [アスタナ・オープン]
ATPツアー公式戦の「アスタナ・オープン」(ATP500/カザフスタン・アスタナ/10月3~9日/賞金総額205万4825ドル/室内ハードコート)の男子シングルス準決勝で、ワイルドカード(主催者推薦枠)を得て参戦した第4シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が4-6 7-6(6)とした時点で第2シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)が棄権したため思わぬ形で勝利を手にした。
第2セットのタイブレークが終わると直ぐにネットに歩み寄って棄権を告げたメドベージェフは、タイブレークの最中に脚の筋肉を痛めてしまったのだと試合後に明かした。
「こんな風に筋肉を痛めて試合中に棄権したのは人生で2度めだ。タイブレークの2ポイント目で腿の内転筋に奇妙な弾けるような感触がしたんだ。最初はケイレンか何かかと思ったけど、そのポイントのあとに『いや、ケイレンじゃない』と気付いたんだ」とメドベージェフは説明した。
「タイブレーク中にあと5~10ポイントくらいはプレーできるだろうけど、そこまでだと感じた。あと1セットやろうと思えばできるかもしれないけど、1ヵ月どころか半年を棒に振ることになるかもしれない」
第2セットを取って勝っていたとしても決勝はプレーできないだろうと感じていたメドベージェフは、「何がフェアなのかわからない。もし僕が勝っても決勝をプレーできないだろう。僕は『よし、とにかく何本かショットを打ってみよう』という感じだった。もし勝ったとしても僕はそれ以上何もできず、棄権しなければならない。もし負けたらノバクを祝福しよう。彼は変わらずいい調子だ。彼に決勝での幸運を祈るよ」と話した。
「彼のケガが深刻なものでないよう願う。ダニールのことは知っている。彼は素晴らしい奴であり、ファイターだ。彼は続けられないと感じるか、やればケガを悪化させると感じない限り棄権したりはしない。彼は内転筋を伸ばしてしまったのだと言っていた」とジョコビッチは試合後に語った。
「非常に競った試合だった。特に第2セットはね。恐らく両セットとも、彼のほうが少し上だったと言えるだろう。僕は戦い続け、道を見つけ出そうと奮闘していた。僕は第2セットを取るための道を見つけ出した。でも戦いを楽しんでいた観客と大会、そしてこんなふうに試合を終えなければならなかったダニールのことを思うと心が痛むよ」
お互いにキープし合ってもつれ込んだタイブレークでドロップショットを多用したジョコビッチは、最初のポイントを落としたあと4ポイント連続でドロップショットを使って4-1とリードした。メドベージェフが脚に異変が起きたのが2ポイント目だったことを考えると、容赦のない効果的な戦法だった。
「僕たちはお互いに、ボールがケバ立ってくるとドロップショットを使った。彼は壁のようだ。僕もキャリアを通してそんな選手だった。対戦相手が僕を打ち崩すことはできないと思っていたけど、今はコートの向こうにほとんどミスをしない選手がいるときの気持ちがわかるよ。彼はすべてのポイントで相手を消耗させるんだ」とジョコビッチは振り返った。
「タイブレークは凄くエキサイティングで、スタジアムは沸き立っていたね」
ジョコビッチは決勝で、第5シードのアンドレイ・ルブレフ(ロシア)を4-6 6-4 6-3で破って勝ち上がった第3シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)と対戦する。両者の対戦成績は、ジョコビッチが7勝2敗でリードしている。
華やかにウィナーを奪うルブレフをより堅固かつオールラウンドなテニスで退けたチチパスは、「最後に勝負を分けたのはハートだった。状況がとても厳しくなったときは特にね」と試合後にコメントした。
「集中力が一気に上がったよ。僕は完全にその瞬間を生きており、すべてのポイントでそうだった。第3セット終盤の数ゲームで僕はゾーンのような状態のピークに至り、それが僕の予測を助けてくれた」
チチパスはATPファイナルズとマスターズ1000大会を含むツアー9勝を挙げているが、ATP500大会では過去8度決勝に進出しながらすべて敗れている。そのことを指摘された彼は、「これまでは不運だった。8度の決勝で勝てなかったけど、少なくとも2~3回は本当にもう少しだったんだ。決してビビった訳じゃないし、勝てなかったのは運がなかっただけだと僕は思っているよ」と答えた。
「決勝でプレーするというのはテンションが上がるし、すべての機会でベストを尽くそうとしている。その状況にプレッシャーを感じたり硬くなったりする理由はない。決勝は大会で最高の舞台なんだから、そこでベストのプレーをしたいといつも以上にやる気が湧くよ」
写真◎Getty Images
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