『日本一を目指して』——ノアインドアステージの日本リーグでの歩み

テニスの日本リーグは男女とも1986年に始まった日本実業団の最高峰。第39回を数えた今年度の大会は、2月14〜16日に東京体育館で決勝トーナメントが争われた。男女ともにその舞台へ駒を進めたノアインドアステージは、初出場から10数年、着実にレベルアップを遂げてきた。その軌跡と悲願の初制覇を目指した今大会の戦いを追う。
◇ ◇
ノアインドアステージが日本リーグを目指して初挑戦したのは2010年。日本リーグに出場するには、まず全国8地区で行われる予選を突破し、全国実業団対抗テニストーナメントで上位に進出しなくてはならない。全国実業団対抗は、地区予選から勝ち上がってきたチームと前年度の日本リーグからの降格チームで争われるトーナメントだ。
ノアの男子チームは、当時スクールコーチのみで構成されていたが、関西予選を1位で突破。全国実業団対抗も初出場での優勝という快挙で日本リーグ出場を果たした。
当時のフォーマットでは、男子16チームがレッドとブルーの2ブロックに分かれてリーグ戦を行い、各ブロック3チームが決勝トーナメントに進出。ノアはブロック7位に終わったが、初挑戦にして一気にノアのブランドが全国区になったことは、すべてのノアスタッフたちの中にプライドを芽生えさせた。 当時全国で17校だったノアインドアステージが現在35校まで拡大していることは、日本リーグでの躍進とも無関係ではないだろう。
翌年再び全国実業団対抗で切符を勝ち取ると、ブロック内の順位を一つ上げて6位に。そこから毎年リーグ残留に成功している。初めて決勝トーナメント進出を果たしたのは2013年。当時プロ4年目の吉備雄也がチームに加わり、ブロック1位で通過したが、最終結果は4位だった。以降、準決勝までは5回進出。安定した好成績を支えた立役者の吉備が2019年から監督を務め、初の決勝進出、さらには優勝を目標に臨んだ今回の日本リーグだった。
ブロック2位でファイナルへ、リベンジ果たして決勝進出

レッドブロックでの結果は2位だった。「負けたままは性に合わない」(吉備監督)と期したリベンジは3週間後に実現
横浜国際プールで1stステージが行われたのは2024年12月。吉備監督は、「1stステージでのグループにプロの多いチームが集まっていたので、そこで勝ちをどれだけ取れるかというところが大事だと考えていました」と振り返ったが、4戦全勝で好スタートを切った。
2025年1月、ブルボンビーンズドーム(兵庫)での2ndステージも全勝のまま最終日を迎えたが、リーグ戦最後の相手、伊予銀行に1勝2敗で初黒星。ブロック2位での決勝トーナメント進出となったが、「雰囲気もいいし、全体的に勢いもあるし、優勝の可能性も十分あると思います」と話したのは、プロ6年目で今季はダブルスの柱として頼もしい市川泰誠だ。
その手応え通り、決勝トーナメント初戦となる準々決勝でブルーブロック4位のレック興発を破ると、準決勝は伊予銀行にリベンジ。18歳のルーキー富田悠太は敗れたものの、松田龍樹が2ndステージで敗れた中川舜祐に会心のストレート勝利を挙げ、市川が横浜綱島校のコーチである坂井勇仁とのペアで接戦をものにした。
チーム初の決勝進出。しかし日本一にはあと一歩届かなかった。2015年から2連覇した実績もあるエキスパートパワーシズオカとの決勝戦で、富田はJTAランク30位の27歳・望月勇希にマッチタイブレーク[8-10]と惜敗。エース対決でも松田が200位台のATPランクを持つ台湾出身の呉東霖に、やはりマッチタイブレーク[10-12]という大接戦の末に敗れた。市川/坂井のダブルスは第1セットを終えた時点で打ち切りに。悲願の日本リーグ制覇は来年以降に持ち越される。

ブルボンビーンズドームのある兵庫県はノアの“本拠地”。2ndステージではスクールの会員たちが大勢応援に駆けつけ、バルーンスティックを持って会場を盛り上げた
プロのみならず、コーチが総合力アップに貢献
女子の初出場は男子から遅れること2年の2012年。この年に創部されたばかりだったが、同年から毎年のように、12チームで争われる日本リーグ出場を果たしてきた。初めて決勝トーナメント進出を決めたのは2016年。この年に最優秀新人賞を受賞した上田らむが、26歳になった今はリーダー的存在だ。
チームの最高成績は2021年の準優勝だが、上田は「あの年は決勝トーナメントの組み合わせの運もあって、実力は今のほうが上だと思います」と確信を込める。エースはプロ2年目の19歳・松田鈴子。上田とのシングルス2本は1stステージで負けなしだった。
2ndステージはメンバー全員がプロという強豪・橋本総業ホールディングスに敗れ、レッドブロック2位での決勝トーナメント進出。その初戦、ブルーブロック3位のエームサービスを下した。シングルスで星を分けたあと勝負のかかったダブルスで、宝塚伊丹校でコーチとしても働くプロの塩谷夏美と、大阪茨木校コーチの伊藤日和のペアが値千金の勝利。伊藤は2年のブランクがあるが、かつてインカレで準優勝した実績もある。「前はシングルスのプロ2人で勝つパターンが多かったが、ダブルスも勝てるようになった」という高梨惇監督の評価にまさに応えるかたちだった。
しかし、準決勝でふたたび橋本総業ホールディングスの壁に弾かれた。3位決定戦では昨年度から参戦の橋本総業に敗れ、結果は4位だった。
優勝したのは橋本総業ホールディングスで、準優勝は島津製作所。島津もまたプロを多く抱えたチームだ。「打倒!プロチーム」を目標に、ノアインドアステージの挑戦は続く。
◇ ◇
吉備雄也|男子監督

1986年7月23日生まれ(38歳)。早稲田大卒業後プロ転向。ATPランク自己最高224位。2019年3月現役引退、同年よりノアインドアステージの監督を務める。
「以前は、チームの中でもプロとコーチの距離が多少ありましたが、今は全員仲もよく、勝ちを目指しながらも楽しめている雰囲気がいいと思います。その中でコーチの力も引き上げられますし、プロもプレッシャーの中でいいパフォーマンスを出し切るという経験ができれば個人戦に生かせる。それがまたチームに還元されるという相乗効果が理想的です」(吉備)

今年が初参戦の18歳・富田(写真左)を積極的に起用した吉備監督。「1戦目からすごくいいプレーを見せてくれました。大事なところで勝たせてあげられなかったのは自分の責任」と悔いた
松田龍樹

1999年12月28日生まれ(25歳)。近畿大卒。2022年プロ転向。村田精工を経て2023年にノアインドアステージへ。160cm。右利き。JTAランキング21位(2月11日付)。2023年全日本室内ダブルス優勝
「多くのチームはシングルス1に日本のトップ選手が出てくるので、そこで勝ち抜けるか、日本リーグは自分の実力を試せる場でもあります。そういう意味で、特にナンバーワンとして出場することが自分の中では意義あることだと考えています」(松田)

スピードを生かした高いコートカバリング力を武器に、チームの決勝進出に貢献。さらに攻撃力を磨いたプレーに取り組んでいる
市川泰誠

2000年12月21日生まれ(24歳)。西宮甲英高卒。2019年プロ転向。同年から日本リーグ出場。180cm。左利き。JTAランキング25位(2月11日付)。2024年全日本選手権ダブルス優勝
「高校卒業後にノアと契約させていただき、以前は神戸垂水、今は阿波座校で練習をしています。確実に練習相手のいる拠点があるのはありがたいですし、遠征にも吉備さんが同行してくださるので、心強いです」(市川)

昨年の全日本選手権のダブルスで優勝した市川(写真中央)が、その実力を示して今季は黒星なしの活躍。「チームの雰囲気もいいし、団体戦は楽しい」と話す
高梨 惇|女子監督

1991年5月7日生まれ(33歳)。清風高卒。24歳での現役引退までノアインドアステージに所属。その後はテニスから離れて職歴を積み、人材育成のコンサルタントとして独立。2023年にノアインドアステージに入社。横浜東戸塚校での支配人を務める。
「自分がノアでプレーし、レッスンコーチもし、その後コンサル業をしていたときは取引先でもありました。いろいろな面から会社を見て、社風には魅力を感じていました。テニススクール事業の会社なので、応援に来てくださったお客さんにも楽しんでもらえる、いっしょに参加してもらえるような戦い方をしたい」(高梨)

昨年度から女子チームの監督を務める高梨氏(写真右端)は、普段は横浜東戸塚校で支配人を務める。コーチの実力が上がってきたことで、ダブルスのオーダーには毎回悩まされているとか
松田鈴子

2005年4月10日生まれ(19歳)。西宮甲英高卒。2022年プロ転向。同年の日本リーグで最優秀新人賞を受賞。右利き。173cm。JTAランキング34位(2月11日付)。2023年全日本室内選手権ベスト4
「高校時代から神戸垂水のアカデミーを練習拠点にしていて、ノアに来てから自分の課題としっかり向き合えて練習できている実感があります。日本リーグは国内で自分の力を試せるし、みなさんが応援してくれるのが心強く、楽しんでプレーしています」(松田)

長身を生かした鋭いショットと攻撃的なプレーが持ち味の松田。WTAランキングはまだ600位台だが、来年のオーストラリアン・オープンの予選出場を目標に据えている
上田らむ

1998年3月18日生まれ(26歳)。2016年プロ転向。同年の日本リーグで最優秀新人賞に選ばれ、以後毎年出場。右利き。163cm。JTAランキング158位(2月11日付)
「テニスは普段は孤独な競技ですが、団体戦は応援が心強いし、チームメイトと過ごす時間が楽しいので好きです。高校を卒業してからすぐにノアに契約していただきました。小学生の頃から通っていて、母もノアでレッスンを受けているので(笑)」(上田)

日本リーグを戦い切って、10月の全日本選手権を目標に一つ一つの試合を全力で戦っていきたいと上田
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