ナダルも皆も----彼の力を疑うことはもうやめるべきだ

 ひとつ例をあげよう。ナダルは長いこと究極のベースライナー、後方からすべてのボールを返し、ネット越しにストロークを叩き返してくるタイプだと思われていた。しかしフィリップ・シャトリエ・コートでナダルは非の打ちどころのないボレーをし、ネットに出た27回のうち23ポイントを取ることにより、これまでそれほど評価されていなかった部門での実力を披露した。

 彼はストロークや戦術的要素を調整するためのトレーニングを、コンスタントに行っている。

「彼は上達しているし、そのテニスを進歩させている」とティームはいう。

「もし彼がそうしていなかったら、間違いなく彼はこの大会で毎年成功を収めてはいないだろう」

 ナダルは気落ちしていたかもしれないが、決して諦めることはなかった。

「彼はそれらの苦しい期間に、信じられないほど見上げた態度をとっていた。それが今日、彼をここに誘ったんだ」とナダルのコーチを務めるカルロス・モヤ(スペイン)は語った。

「ここ1ヵ月半の間に彼がやったことには脱帽する。事がすべてうまくいっているときに、いいプレーをするのは簡単だ。でも、あの数ヵ月に彼が潜り抜けたことは、彼がどのような競技者かということ、彼が精神面で天才であるということを示して見せている」

 ナダルの次の大会は、3週間後に始まるウインブルドンだ。彼は休むために時間を取ることが他のどんなことより重要だと考え、グラスコートの準備試合には出場を予定していない。

 不可避なことに、記者たちは今や近くまで迫ったフェデラーのグランドスラム大会優勝回数の記録を追う話を持ち出してきた。そして不可避なことに、ナダルはその話に取りあわなかった。それも、かなり魅力的なやり方で。

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