過去のチャンピオンのシャラポワ、クビトバが驚きの初戦敗退 [ウインブルドン]
それは、マリア・シャラポワ(ロシア)が負けるべき類の試合ではなかった。
「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/7月2~15日/グラスコート)の女子シングルス1回戦で、シャラポワは予選を勝ち上がった世界132位のビタリア・ディアトチェンコ(ロシア)に対し、奪ったはずのリードを次から次へとふいにした。
今回のウインブルドンが始まってから最初の48時間は、人々が慣れている以上の“驚きの敗退者”を生み出した。合計7人のトップ10シードの男女が、初戦で去った。これは、ここ半世紀でのプロ化以降の時代におけるどの年よりも多い数だ。
それには、ウインブルドンで2度(2011年、2014年)優勝した経験を持つぺトラ・クビトバ(チェコ)も含まれた。クビトバは、ノーシードのアリャクサンドラ・サスノビッチ(ベラルーシ)に4-6 6-4 0-6で敗れた。
それが起きたのは、2004年優勝者のシャラポワがディアチェンコに7-6(3) 6-7(3) 4-6で敗れる数時間前のことだ。シャラポワは一時コントロールを取り戻したかに見えていたが、最後の3ゲームを連続で落とした。
「ときどき自分をより優位な、勝利に向かうポジションに置きながら、実際に勝利で締めくくることができないということがあるものなのよ」とシャラポワはコメントした。
薬物使用による15ヵ月の活動停止処分のため、2016年ウインブルドンに出場できず、1年前には故障が彼女を脇に押しやった。
シャラポワがセットを先取し、第2セットも5-2とリードしたとき、それは心地よい、すっきりした帰還になるかに見えていたのだ。
ところがシャラポワは5-3からの自分のサービスゲームで、たじろいだ。
ディアチェンコに勝負を第3セットに持ち込まれたあと、シャラポワは先にブレークを果たして2-1としたが、そのリードはすぐに消失する。シャラポワはまたもブレークして4-3とリード。ところがその優位性もまた、すぐさま返上されてしまったのである。最終的にシャラポワの崩壊は、おそらくふさわしいことに11本目のダブルフォールトによって終焉を迎えた。
この結果は、どれほどあり得ないものだったのだろうか?
10代のときに最初の2つのグランドスラム大会で敗れて以来、シャラポワの4大大会における1回戦の戦績は49勝1敗で、ウインブルドンでは13勝0敗だった。
彼女は元世界1位で、現在第24シードであり、5つのグランドスラム・タイトルを保持している。
そして、シャラポワを破ったディアチェンコは?
様々なタイプの故障によって繰り返し脱線させられたディアチェンコは、「プレーを終えたあとには、本を書くと思うわ」と、体の問題の歴史についてジョークを言った。この日も鼠蹊部と背中下部の問題のため、トレーナーを呼んで治療を受けていた27歳のディアチェンコは、0勝2敗の成績でウインブルドンに至っており、ツアーレベルのすべての大会の本戦の成績でも8勝25敗だった。
「皆が、私が負けると予想していたわ」とディアチェンコは試合後に言った。しかし実際には、そうはならなかった。部分的にはシャラポワが勝つことに失敗したがために。
ここまでそうであるような、破天荒な結果が続いたことには、通常よりも太陽が照っている、今回のウインブルドンの気候も関係しているかもしれない。気温は26、27度程度で、雲一つなく、あるプレーヤーたちは、芝がより予想のつきにくいバウンドを生み出していることに気づいていた。
この先例のない結果を生み出している原因について、ほかの説もある。
昨年のUSオープン・チャンピオンのスローン・スティーブンス(アメリカ)と第5シードのエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)が敗れたあと、火曜日には第8シードのクビトバと第6シードのカロリーヌ・ガルシア(フランス)が負けた。
やはり火曜日には、男子の第7シードで先月のフレンチ・オープン準優勝者のドミニク・ティーム(オーストラリア)がマルコス・バグダティス(キプロス)に対して4-6 5-7 0-2と2セットとワンブレークを許したところで、背中の故障のため棄権。また、第10シードのダビド・ゴファン(ベルギー)は第6シードのグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)が敗れた翌日に、やはり1回戦負けを喫した。
「グラスコートの上では、何を期待すべきかわからない」と世界1位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)は言った。フレンチ・オープンでグランドスラム初制覇を遂げた彼女は、同じく全仏で11度目の優勝を飾ったラファエル・ナダル(スペイン)、元世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)同様、大会2日目にストレート勝ちをおさめた。
「あるプレーヤーたちは、(彼らの)ベストテニスをプレーできる。また、あるプレーヤーは普段より少しレベルが落ちるかもしれない。決してわからないものなのよ。すべての試合がどちらにも転び得る」
クビトバは、緊張感につきまとわれていたこと、グランドスラム大会で期待に応えるプレッシャーは、大会序盤にもっとも厄介な重荷になりかねない、という考えについて話した。
「私だけじゃないと思うわ」とクビトバは言った。「すべてのシードプレーヤーについて言えると思う」。
しかしながら彼女は、2016年12月にチェコの自宅で起きた強盗によるナイフの襲撃からカムバックしたことのほうが、より大きな勝利だと言って、試合後の記者会見で微笑むことができた。
一方のシャラポワは、クレーからグラスコートへの素早い切り替えは、ある選手にとってことを難しくする、と言った。彼女は年齢を重ねるにつれ、その移行はより難しくなると感じているという。おそらくそれは正しいのかもしれない。
それでも、こうも根性があり、どうすれば勝てるかを見出すことに秀でているとみなされている選手たちが、勝利にここまで迫りながら苦しみ、屈する様子を目にするのはショッキングなことだ。特に経験不足の相手に対し――。シャラポワは、神経過敏や苛立ちの病に襲われたのだろうか?
「それはテニスの一部よ。緊張の瞬間を感じ、ぴりぴりし、危険を感じるということは。それが人間なんだわ。以前に何度やったことがあろうと、センターコートやほかのコート、どのコートでプレーしていようと、ウインブルドンでも、ほかの大会でも、常にベストを尽くしたいものよ」とシャラポワは言った。
「もちろん、緊張感は感じる。でも、私はそのフィーリングが好きなの。それが、私がプレーしている理由のひとつでもある。私は今日、間違いなく、たぶん十分なだけ賢くなく、重要な瞬間に正しい方法でプレーできていなかった」(C)AP(テニスマガジン)
※写真はペトラ・クビトバ(チェコ)
LONDON, ENGLAND - JULY 03: Petra Kvitova of Czech Republic returns against Aliaksandra Sasnovich of Belarus during their Ladies' Singles first round match on day two of the Wimbledon Lawn Tennis Championships at All England Lawn Tennis and Croquet Club on July 3, 2018 in London, England. (Photo by Michael Steele/Getty Images)
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