今回のウインブルドンは、マレーにとって違いがいっぱい

 今回の「ウインブルドン」はアンディ・マレー(イギリス)にとって、すべてが変わった。オールイングランド・クラブで2度優勝を遂げた男は、自身によっても、そして、ほかの誰からも優勝候補とはみなされていない。月曜日の開幕が近づく中、彼は腰の故障からの復帰後、わずか3試合しかこなしておらず、通常ほどしっかりとウインブルドンのための準備を行っていない。ランキングが150位以下に落ちているため、シードもつかない。

 しかしながらマレーは、火曜日に行われる予定の1回戦でブノワ・ペール(フランス)と対戦する前に何も思いがけない問題が生じなければ、プレーできるということにわくわくしている。

「ずっとここで戦いたかった。今年、大会にやって来ることに少し奇妙な感じを覚えているけれど」とマレーは、土曜日にオールイングランド・クラブで練習を行ったあとに言った。

「通常、1年のこの時期のこの段階では、僕は非常にナーバスになり、多くのプレッシャーを感じ、自分から多くを期待している。僕はそういったことが、ある意味で好きであり、楽しんでもいた。厳しかったけれど、楽しんでいたんだ。でも今年は非常に違った感じを覚えている」

 2013年にウインブルドンのシングルスで優勝した77年ぶりのイギリス人となり、2016年に再度タイトルを獲得したマレーは、2017年、明らかに腰の故障の影響を受けている様子を見せつつ、準々決勝でサム・クエリー(アメリカ)に敗れた。そのウインブルドン後に、マレーはまったく試合に出られず、それから今年1月に手術を受ける道を選んだ。

 彼が2週間ほど前に、グラスコートのクイーンズクラブで大会に戻る賭けに出たときには、プレーを休止してからすでに12ヵ月が過ぎ去っていた。まだ少し足を引きずっていたマレーは、フルセットでニック・キリオス(オーストラリア)に敗れる前に2時間半以上プレーした。

 先週、彼はまたもグラスコートの上で、グランドスラム大会優勝歴3度のスタン・ワウリンカ(スイス)を破ったが、続くラウンドで同国のカイル・エドマンド(イギリス)に敗れた。

「言うまでもなく興奮している。4、5週間前には、そこそこ満足できるレベルで戦うことができるのか、わからなかったわけだからね。ここ数週間は実り多きものだった」とマレーは言った。彼はウインブルドン優勝に加え、2度オリンピックで金メダルを獲得しており、2012年にUSオープンで初めてグランドスラム大会を制していた。

「復帰してからの数試合で素晴らしいプレーをしたとは思わないけれど、対戦相手の質を考えれば、そこそこよくやったと思う」

 現在48位だが、元トップ20のペールとの試合がやってくる。マレーは、1年前のウインブルドンでの対戦を含め、ペールとの過去の2対戦の双方に勝っている。

「彼は、そのプレースタイルゆえ、トリッキーな対戦相手だ」とマレーは言った。

「彼は多くのドロップショットを打ち、サーブ&ボレーをする。彼はショット・セレクションにおいてオーソドックスなタイプではない。またときに、かなりアップダウンのある選手でもある」

 もしこのテストを乗り切ったら、マレーは2回戦で第26シードのデニス・シャポバロフ(カナダ)と対戦する可能性がある。本戦ドローでどれほど勝ち上がれると思うか、と尋ねられたマレーは、右手の上に顎を乗せ、ため息をついた。

「わからない。最初の試合で、もし4時間プレーすることになったら、どんなふうに感じるか、どう言うべきだというんだい? 率直に言って、その質問には答えられないよ」と彼は言った。

「僕がどんなふうにやっていくか、成績という意味で、大会でどうやるかに関しては見当もつかない」

 マレーは、ウインブルドンでの2週間の間、膨大なプレッシャーと注目を経験することに慣れている。少なくとも理論的には、その部分は緩和されるはずだ。率直な査定をするなら、過去10年のウインブルドンで少なくとも準々決勝には至っているマレーの記録は、危険にさらされていると言っていいはずだ。

 シンプルに『チャンピオンシップス』の名で知られるウインブルドンのタイトルを数回獲っており、それぞれの展望についての問いにしつこく追い回されている選手はほかにもおり、男子選手の中には、ロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)がいる。

 また、セレナ・ウイリアムス(アメリカ)とペトラ・クビトバ(チェコ)も、女子の中のそんな選手だ(セレナは土曜日に記者会見を行う予定になっていたが、最後の瞬間に、日曜日に延期になった)。

 ここ12年で初めてマレーはもっともランキングの高いイギリス人プレーヤーではない。栄誉ーーあるいは重荷?ーーはエドマンドに帰属する。エドマンドはウインブルドンで第21シードとなっており、今年1月のオーストラリアン・オープンで初のグランドスラム大会準決勝に至っていた。

「アンディが出場するということは、テニスファンの視点から見れば素晴らしいことだ」とエドマンドは言った。

「でもまたイギリス人としても、彼とちょっとした個人的関係を持つ者としても、ほぼ1年の不在のあとに彼の復帰を目にするというのは、いいことだよ」

(APライター◎ハワード・フェンドリック、翻訳◎編集部)

※写真はアンディ・マレー(イギリス)
LONDON, ENGLAND - JUNE 29: Andy Murray of Great Britain is surrounded by journalist after his practice during training for the Wimbledon Lawn Tennis Championships at the All England Lawn Tennis and Croquet Club at Wimbledon on June 29, 2018 in London, England. (Photo by Matthew Stockman/Getty Images)

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