寺地貴弘プロ_「格上」の倒し方を教えます~大金星を手に入れるための7つのポイント~

対戦相手が強いとわかると、すぐにあきらめてしまう人がいる。もったいない。確かにチャンスは少ないかもしれないが、そこから何とかして勝機を見出していく作戦を考えよう。クレバーなテニスで知られた寺地貴弘プロからアドバイスをいただいた。【2019年9月号掲載】

解説◎寺地貴弘

てらち・たかひろ◎1979年7月8日、東京都生まれ。97年インターハイ個人戦シングルスに優勝し、翌年プロ転向。バンコクでのアジア大会団体で銀、釜山では団体金メダルに貢献。01、04年には全日本テニス選手権のシングルスで優勝を飾る。08年に現役を退き、以降は指導者として活躍。世界ランク最高位はシングルス219位、ダブルス364位

1|格上と対戦するとき最初からあきらめていないか?

強い選手と対戦できる喜びを感じよう!

上との対戦が決まったとき、みなさんはどんなことを感じますか?「うわ~最悪!」「ついていないなあ…」「ダンゴ(0-6)だけは避けたい」という声を聞くことがありますが、こんなふうに考えていては、まず勝ち目はありません。

 強い相手だと認めた上で、感じてほしいのはワクワク感です。その強い相手に対して「どうやったら勝てるのか?」「どのように崩していくのか?」「どこで勝負を仕掛けていくのか?」「どこまで自分の力が通用するのか?」――そういうことを考えるのが楽しく、そこに強い気持ちでチャレンジできる選手になってほしいと思います。

 弱い選手には勝ち、強い選手には負けて、ひとりで納得していませんか? 強い選手を倒すことに喜びを感じる選手になってほしいし、それができればまた違う景色が見られて成長できるはず。まずはそこからスタートです!

実践アドバイス1
最低限の設定値を考えておく

 格上の選手に限らず、私はよく最低限の基準値を設定してから試合に臨んでいました。良いことよりも、悪いことを想定してコートに入っていたのです。

 例えば「出だしは緊張するから、あまり足が動かないだろう」とか「ファーストサービスの確率はそれほどよくないかもしれない」という具合です。そうすると、少し足が動くだけで「意外と動けているぞ!」となるし、ファーストサービスが続けて入ると「わりと確率がよいな!」とプラスの気持ちになることができます。たとえ悪くても「想定内。ここからだ」とネガティブにはなりませんでした。

 最初から(勝つために)設定値を上げすぎてしまうと、「まずい、足が動かない!」とか「ファーストがまったく入らない」と慌ててしまいます。減点主義ではなく、加点主義で気持ちを高めていくのも効果的だと思います。

2|どんなプレーができたら勝てると考えているか?

自分が勝つための具体的なイメージを描け!

上が相手の場合、客観的に見て、勝てる可能性は低いと思いますが、10%にしろ、20%にしろ、その低い可能性の中で勝つことを、どれだけ具体的にイメージできているかがポイントです。

 10%でも、20%でも、勝てるチャンスはある――であれば、その低い可能性の中で、どうやって勝負を挑み、勝ちに結びつけていくのか。そのイメージづくりをしましょう。

 「自分がこういうプレーをして、こういう流れに持っていく展開が増えれば…」とか「チャンスがくるならこういうプレーが成功したときで、こういうゲーム展開になるだろう。そのためには…」というように、具体的な勝利のイメージを描くこと。

 「どうせ勝てないと思うので、とにかく全力で戦うだけ」とか「相手は自分より格上なので何も考えていない。がむしゃらにぶつかっていく」では話になりません。それは無欲ではなく、ただの無策。ノープランです。勝てる可能性は低いかもしれないけれど、自分が勝つなら、こういうプレー、こういう展開と、勝てるイメージを描いておくことです。

実践アドバイス2
自分の武器の使い方を考える

 私の場合はバックハンドに自信があり、大きな武器でした。そこで格上の選手に対して勝負どころでよく使っていたのは、このバックハンドからのリターンダッシュです。

 デュースサイドでは、相手のセカンドサービスは、ほぼセンターに来るので、これを叩いてネットに出るのです。普通にリターンを打つような気配を漂わせながら、相手がトスを上げた瞬間、ススっと前に入っていました。エースは狙いません。これで相手も慌てることが多く、このプレーで、よくミスを引き出しました。

 もちろん最初の1ポイント目や、0–30や15–40など劣勢のときには使わず、ここぞの場面で多用していました。逆に、ネットダッシュするぞと見せかけてしないこともあり、それは相手との駆け引き。これは練習のときから試合を想定して取り組んでいたこともあり、かなり高い成功率だったと思います。

3|「自分のプレーをするだけ」と思い込んでいないか?

格上がどんなプレー、どんな気持ちなのかをよく考えろ!

上の選手を倒すためには、その選手のプレースタイル、プレーの特徴はもちろん、長所や短所、また、こういうときはこうしてくる、こうなると意外とこうしてくる、など、その選手の考え方、傾向をつかんでおくと有利です。簡単に言えば、相手選手の情報収集です。

 とても強いけれど競ってくると守りに入ってしまう選手がいれば、序盤は相手を圧倒していても終盤で失速する選手がいる、あるいは途中で必ず集中が切れる時間がある選手とか、どんなことでもいいので、相手の特徴をつかんでおけば、自分が勝つためのヒント、チャンスにつなげられます。

 また、試合中の仕草、態度、表情などからも情報は読み取ることができるでしょう。相手は今、何を考えているのか、どういう気持ちかなどがわかれば、戦いやすくなります。

 「相手は関係ない」「自分のプレーに集中する」「相手を見ている余裕はない」と言って、相手をまったく見ていない選手がいますが、不思議でなりません。ただ、じーっと相手を見つめて観察するよりも、見てないふりをして実はよく見ている、というのが理想です。そこも駆け引きだと思います。

実践アドバイス3
格上を想定して戦うことも必要

 例えばトーナメントで、3回戦で格上の選手と対戦する可能性が高いと考えた場合、1回戦、2回戦から格上との3回戦をイメージして戦う手もあると思います。

 目の前の試合に全力投球することが大事で、足元をすくわれてしまう可能性もあるかもしれませんが、格上に勝つためのプレーを仕上げていくという意味では大きいし、そうしたプレッシャーを自分にかけて戦うことも必要だと思います。

 1、2回戦の相手をなめているわけではありません。トーナメントのどこに重点を置くかということです。「この対戦のために、自分はここまで準備してきた」という気持ちは大きな自信にもなります。

気持ちは大切だが、勝つためにどんなプレーが効果的なのかを考えよう

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