テニス選手が受けた過去の罰金を調査せよ!
2016年10月の上海マスターズでニック・キリオスが無気力試合により2万5000ドルの罰金と年内の出場停止処分を受けた。今回は、過去に罰金・罰則を受けた事例を調査する。(※原文まま、以下同)【2017年1月号掲載】
写真◎中嶋常正、Getty Images、BBM
※※ 日本円は当時のレート換算
勝負所でフットフォールト!? 『線審脅迫事件』
2009年 USオープン/セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)
罰金額$82,500=約750万円
09年USオープンの準決勝、セレナ・ウイリアムズ対キム・クライスターズの一戦。サービスゲームを落とすと試合に敗れるセレナは15ー30の場面で“フットフォールト”をとられて激昂。判定をした線審に脅迫するような発言をし、スポーツ選手らしからぬ行為で1ポイントのペナルティーが課せられた。その1ポイントにより試合はゲームセット。相手のクライスターズも事態がのみ込めずに困惑する中、前代未聞のペナルティー・ポイントによる終焉となった。
試合後もセレナは線審への脅迫を否認したが、この事件に対し、アメリカテニス協会は1万ドル、グランドスラム委員会からは8万2500ドル(約750万円)の支払いが下された。試合中の反則行為による罰金額としては史上最高額の事件となっている。
試合続行を拒否し、当該主審を告発!?
1995年 ウインブルドン/ジェフ・タランゴ(アメリカ)
罰金額$63,000=約620万円
1995年のウインブルドン3回戦、ジェフ・タランゴはアレクサンダー・ムロンツ(ドイツ)との試合で、主審の判定に抗議。自分を罵る観客に対しては「黙れ!」と叱責して警告を受けると、最後はスーパーバイザーを呼び、言い争った末に試合の続行を拒否した。
タランゴは試合後の記者会見で、主審を務めた人物が以前から特定選手に有利な判定をする“不正”を暴露。さらに輪をかけて、タランゴの妻ベネディクトが試合後に主審を追いかけ、平手打ちを食らわせようとする一幕もあった。以前からコートマナーで評判が悪かった“前科持ち”のタランゴだけに信用できない話として批判の声もあったが、トップ選手の中にはタランゴの主張を支持する者も現れ、テニス界は混乱に陥った。
国際テニス連盟とATPはそれぞれの調査から処分を決め、双方の額を合わせて6万3000ドル(約620万円)の罰金を課し、タランゴの主張は結局うやむやとなった。
ルールの改正を知らずに失格!?
1990年 全豪オープン/ジョン・マッケンロー(アメリカ)
罰金額$6,500=約94万円
1990年全豪オープン4回戦、ジョン・マッケンローはミカエル・パーンフォース(スウェーデン)戦でグランドスラム初の失格者となった。発端は同年より改正された“ルール”。4段階だったペナルティー規則から①警告→②1ポイントのペナルティー→③失格の3段階に変わり、マッケンローはそれを知らずに3度目の警告を受けて失格処分となった。
試合後は「ルール変更を知らなかった自分が悪い」と非を認めたものの、記者からの「ルール変更を知っていたら、(2度目の警告となる)ラケットは投げてなかった?」の問いに「いや、たぶん投げた。でも、(3度目の警告となる)暴言は言ってないね」と本音を語った。さすが悪童。そう簡単に反省はしない。
線審をケガさせて傷害事件へ!?
2012年 エイゴン選手権/ダビド・ナルバンディアン(アルゼンチン)
罰金$12,560+$70,000=合計約650万円
2012年ATPツアー大会の決勝でマリン・チリッチ(クロアチア)と対戦したダビド・ナルバンディアンは相手にブレークを許して怒り爆発。目の前の広告ボードを蹴り飛ばすと、不運にも線審のすねに壊れた木製の看板が直撃。大会側はナルバンディアンに対してスポーツマンらしからぬ行為として“即失格”を言い渡した。
準優勝賞金の7万ドルに加え、獲得予定だった150ポイントも没収。さらに罰金1万2560ドルも支払う羽目に。最後は“傷害事件”として警察の取り調べまで受けることとなった。
紳士なレジェンドが放送禁止用語を連発!?
2009年 USオープン/ロジャー・フェデラー
罰金額$1,500=約15万円
09年USオープン決勝、第3セットの8ゲーム終了後にフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)がチャレンジを要求。チャレンジは本来プレー終了から2秒以内に要求するのがルールだが、このときのデル ポトロは10秒近く経ってから要求し、それを主審が認めたことでロジャー・フェデラーが憤慨。エンドチェンジの際もベンチに座ったまま主審に抗議を続け、口を慎むように制止した主審の態度にキレると、「F×××」などの放送禁止用語を連発。コート近くにあったマイクがその一部始終を拾い、全世界に生中継されてしまった。紳士なフェデラーの姿が好きなファンにとってはショッキングな光景だったはずだ。
ウイリアムズ姉妹への侮辱発言で代表はく奪!?
2014年 ロシアのテレビ放送/シャミル・タルピスチェフ(ロシア)
罰金$25,000=約262万5000円 (+クレムリンカップの代表資格1年剥奪)
ロシアテニス協会の代表を務めるタルピスチェフ氏が国内のテレビに出演した際にウイリアムズ姉妹を「兄弟」と揶揄する発言をして罰則を受けた。WTAは罰金の上限に定められた2万5000ドルの罰金に加え、姉妹への直接謝罪、ロシア開催のクレムリンカップの代表を1年間剥奪する処分を下した。タルピスチェフ氏本人はあくまでも「番組内のジョーク」と説明したが、ロシア界のドンも次第にトーンを落とし、罰則を受け入れた。
大会側が選手の入国を拒否!?
2009年 バークレーズ・ドバイ・テニス選手権(大会側)
罰金$300,000=約3000万円(+翌年のイスラエル人選手入国許可)
ドバイ開催のWTA ツアー『バークレーズ・ドバイ・テニス選手権』に出場予定だったシャハール・ペール(イスラエル)が、同国への入国を拒否され、大会に出場できない事態が起こった。
ペールの出身国・イスラエルは、当時パレスチナ自治区ガザへの攻撃を強め、それを認めないドバイは彼女の入国を許さず。ペール本人は大会に猛抗議し、最後はWTAが「事態が改善されない場合、ドバイをツアーカレンダーから外す」条件を付きつけ、30万ドル(約3000万円)の罰金と翌年の「イスラエル人選手」の入国ビザ発給を義務づける決定を下した。ちなみに、ペールは翌年にベスト4入りしている。
ポロリと本音で罰金!?
2007年 メディバンク国際/ニコライ・ダビデンコ(ロシア)
罰金$10,000=約120万円
07年シドニーのATPツアーで元世界3位のニコライ・ダビデンコが試合途中に棄権し、その後の会見で「小さな大会だし、誰もここでのことは気にしていない」とコメント。この発言に各方面から批判が殺到した。
ダビデンコの発言は、全豪オープンの前哨戦でトップ選手の欠場や棄権が続出する中、記者からそのことを問われた際に発した本音。ただ、結果的に代償は大きく、ATP最高責任者は「男子テニスの名を汚した」と激怒。1万ドル(120万円)の罰金が科せられた。
奇行! 反抗! コレクション!
ここでは罰金のある・なしに関係なく、お騒がせ選手の“奇想天外な事件”を紹介する。
試合中に球跡をスマホで撮影!?
2013年 全仏オープン/セルゲイ・スタコウスキー(ウクライナ)
罰金$2000=約20万円
13年全仏オープンの1回戦、リシャール・ガスケ(フランス)戦で審判の判定を不服としたセルゲイ・スタコウスキーが、自分のスマートフォンで球跡を撮影したとして、試合後に罰金を命ぜられた。本人は「あの誤審によって、賞金を得る権利が失われかねないし、権利確保のために証拠写真を撮った」と主張。しかし罰金2000ドル(約20万円)をとられ、賞金額の7%減となる2万7000ドルを手にして大会を去った。
警察の言うこと無視して出廷&罰金!?
2012年 交通違反ののち逃走/バーナード・トミック(オーストラリア)
罰金$1750=約14万円
2012年のある日、バーナード・トミックは誕生日パーティーで大騒ぎした際に友人と大喧嘩。通報されて警察が出動することもしばしば。また、ある日は交通違反をした挙句、警察官の運転停止命令を無視して逃走。立派な罪を犯してしまう。裁判所にも出廷し、罰金1000ドル(約8万円)、停止命令に逆らった罪で別に750ドル(約6万円)と執行猶予1年の判決を受け、不名誉ながらこの頃から問題児として有名になった。
試合中に短パン下ろすも罰なし!?
2004年 全仏オープン/マラト・サフィン(ロシア)
罰金なし
04年全仏オープン2回戦でフェリックス・マンティラ(スペイン)と対戦したマラト・サフィンは、ロングラリーの末にポイントを奪うと、短パンを膝までずり下ろす問題行動をとった。会場にいた観客からは拍手喝采を浴びるも、主審はその行動に対してすぐさま警告を言い渡し、相手に1ポイントが与えられた。サフィンは試合後の会見で短パンずらしの理由を問われ「そういう気分になったから」と反省せず。その開き直りがよかったのか(?)、罰金を受けることもなかった。
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