青山修子_「ダブルスに愛されて。」
(※本文は当時のまま、以下同)2013年4月のスペイン戦でフェド杯デビューを飾った25歳。154㎝の身長は女子選手の中にいても目立ってしまうが、それをハンディとして捉えず、自分の武器にして戦っている。ダブルスでは2桁ランキングをキープし、すでにWTAツアーでも2勝をマーク。今後の日本女子ダブルスを担うキーマンに話を聞いた。【2013年7月号掲載】
SPECIAL INTERVIEW
青山修子「ダブルスに愛されて。」
インタビュー◎牧野 正 写真◎菅原 淳、毛受亮介 トップ写真◎Getty Images( 2020年2月スペインで撮影)
Shuko Aoyama|PROFILE ※当時のまま
あおやま・しゅうこ◎1987年12月19日生まれ。東京都町田市出身。9歳でテニスを始め、日大三高を経て早大へ進学し、2010年1月にプロ転向。ジュニア時代から主にダブルスで活躍。全日本ジュニアは16歳以下(2003年)、18歳以下(2005年)、大学では全日本学生選手権(2008年)のダブルスで優勝を飾る。全日本選手権のダブルスでは2011年、2012年と2連覇中。シングルスでは2011年にベスト4をマークした。WTAツアーのダブルスでは2012年8月ワシントン、2013年3月クアラルンプールと優勝2回(パートナーはともに張凱貞)。WTA最高位は単266位(2013年4月1日付)、複59位(2013年3月18日付)
「自分ではダブルスの
スペシャリストとは思っていません」
初出場でメンバー最年長
――フェド杯はチームも、青山選手が出場したダブルスも敗れてしまいましたが、戦い終えての率直な感想を聞かせてください。
「とても残念です。土居(美咲)選手と組んでプレーできたのは良かったのですが、チームの勝敗が決まったあとのダブルスでしたので、ちょっと難しかったですね」
――難しかったというのは?
「勝っても(勝敗に)関係ないというか、自分が勝利に貢献できない、できなかった、という思い、悔しさがありました」
――試合を振り返ってみて、自分のプレーは出し切れましたか?
「前(ネット)でのプレーは自分でもかなり良かったので、その点では出し切れたかなと思います。土居選手がストロークでしっかりと(展開を)つくってくれて、安心して自分のペースでできました。でも自分が後ろになったときに少し硬くなってしまって、いつもだったら出ないミスが出てしまいました。サービスも一度もキープできず、それは反省点だと思います」
――当初の予定だった森田/青山から、土居/青山に変更となって戸惑いはありませんでしたか?
「特になかったです。土居さんと組む可能性もあると思っていましたし、そのための練習もしていましたから。土居さんとは昨年11月の豐田(ダンロップワールドチャレンジ)でも組んでいて問題なかったです」
――フェド杯メンバーに初めて選ばれましたが、重圧は感じましたか?
「ちょっと緊張はしましたけど、変な重圧はなかったですね」
――選ばれたときの気持ちは?
「いつかは出てみたいと思っていましたので、本当にうれしかったです。でも、自分が日本代表っていうのが、少し変な感じでした。いや、うれしかったんですけど(笑)」
――実感がなかった?
「監督が決めたことですので、私が言うことではありませんが、伊達さん(クルム伊達公子)がメンバーに入っていなかったので、もし入っていたら私が選ばれていたのかな……とは思います」
――そろそろ選ばれるのではないか、という気持ちはありましたか?
「ダブルスでは結果が出ていましたけど、他のメンバーの実力も十分にわかっているので。ただ、しっかりと実力をつければ認めてもらえるかなとは思っていました」
――ユニバーシアードでは日本代表として戦い、金メダルも獲得していますが、ユニバーシアードの日本代表とは、また違いますか?
「まったく違いますね。フェド杯は日本代表のトップですから」
――初選出でしたが、25歳はチーム最年長でした。
「そうなんですよ、一番年上でした。でも経験は一番なくて、みんなの頑張りを見て自分も頑張ろうと思っていました。自分が一番フレッシュなのかな、と思いながら」
――またメンバーに選ばれたいと思いましたか?
「はい。団体戦は好きですから、また選ばれて日本代表として戦いたいと思います」
前の動きが自分の武器
――現在の練習拠点はどこですか?
「(早大(2010年3月卒業)です。NTC(ナショナルトレーニングセンター)は、たまに使わせてもらっています。(ナショナルチームの)Aメンバーですけど、まだ入ったばかりなので……」
――専属コーチはいますか?
「いません。早大で土橋(登志久)監督がいらっしゃるときに、見ていただいています。専属コーチはいませんが、トレーナーには一昨年の秋から同行してもらっています」
――トレーナーの必要性を強く感じたのですか?
「トレーニングはやらないといけないと、ずっと感じていて、そういう形になりました。専属コーチよりもトレーナーを、という気持ちの方が強かったです」
――青山選手の武器は?
「得意なのはフォアハンドなので、フォアで攻撃的に展開していきたいですし、そこに持って行けるようにしたいです。両手打ちなので回り込みすぎると苦しくなってしまうのですが、それでもフォアを軸に組み立てていきたいと思っています。ダブルスは後ろで(展開を)つくるのも好きですけど、やはり前の動きが自分の武器だと思っています」
――前に比べると、やはり後ろは苦手ですか?
「そうですね。ただ、フェド杯のクレーで戦ったときに思いましたが、後ろでもロブがしっかりと上げられるときは、すごくポイントにつながっていました。それをもっと自分のものにできれば、ストロークも楽になるのかなと思いました」
――身長は154cmとデータには書いてありますが……、
「本当です(笑)」
――その身長のメリット、デメリットを教えていただけますか?
「メリットは、低いボールでもしっかりと膝を曲げて打てること。フラットの低い弾道で打ち返せることですね。大きい選手にとっては非常にやりづらいのではないかと思います。ダブルスでは小さくてすばしっこいので、相手はイライラするんじゃないかと。デメリットは、高くボールを弾ませられたときです。どうしても打点が高くなってしまい、そこでパワーを出すことが難しい。それでも力を出せるトレーニングをしているんですけど、高い打点になると少し厳しくなります」
――青山選手と言うと、低い構えが特徴的ですが、あれは意図的に?
「前はもっと低かったんです。膝を曲げないとボールが入らないように感じていましたから。ただ、トレーナーからも(膝を)曲げすぎるのも逆によくないと指摘され、重心をあまり下げないように注意して、だんだんと姿勢を起こしてきました。それが今の位置です」
――プロ4年目に突入しましたけど、ここまでは順調ですか?
「毎年、新しい経験もできていますし、一歩ずつですけど、少しずつでも前進しているんじゃないかと思っています」
ダブルスが得意な理由
――シングルスよりもダブルスの結果が出ていますし、ランキングにもそれが表れていますが(単280位、複62位、5月6日付)、自分の中ではメインはシングルスだと思っていますか?
「シングルスが伸び悩んだりしたら、ダブルスを軸にというのも考えてはいます。でも今はまだ両方でプレーしたいですし、シングルスでもダブルスに生かせるプレーがたくさんありますから。シングルスがあるからこそダブルスもしっかりできている、集中できている、と思いますので」
――ダブルスのスペシャリストと言われることに対しては、どのように受け止めていますか?
「嫌ではないです。そのように言ってもらえるということは、結果が出ているということですから。そういう中でシングルスも結果がついてくればいいかなと。でも、自分では全然、スペシャリストなんて思っていないです」
――これだけランキングに大きな開きがあると、どんなことがたいへんですか?
「スケジュールの組み方が難しいです。シングルスのランキングを上げる、試合数を稼ぐには、ITFの大会に出て行かないといけないですが、そうするとダブルスのランキングを上げていくことはできません。ですから、今は何とかシングルスで150位くらいまで上がって、WTAツアー(の予選)にかかるようにでもなればWTA、あるいはITFでも上の方の大会で回っていけるのかなと思っています」
――WTAのダブルスランキングは気になりますか。日本ではトップでいたいという気持ちは?
「私よりも周りの方が気にしています(笑)。もちろんトップがいいに決まっていますが、特に気にはしていません。トップになったときはうれしかったですし、伊達さんに抜かれても、また頑張ろうと思うくらいで。もちろんトップを目指してやりたいと思っていますけどね」
――すでにWTAツアーのダブルスで2勝を挙げていますが、パートナーはどちらも張凱貞(台湾)。偶然ですか?
「なんでですかね。彼女の性格が明るいからかな。ストロークがとてもいいので、私の前の動きが生かされているのかなとは思いますけど、どうなんでしょう?」
――ダブルスが得意な理由は何でしょうか?
「小さいときに父親に(テニスクラブに)ついていって、そこでダブルスばかりしていたからでしょう。小さい頃からやっていると、何でもそうですが、習得が早いというじゃないですか。大人の方を相手にダブルスの試合ばかりしていましたから。ここに打てばいい、相手が嫌がる、というのを身体が憶えているのかもしれません。もっとシングルスもやっておけばよかったです(笑)」
――プロに入って、さらに磨きがかかりましたか?
「ボレーの技術も上がりました。前の動きが良くなったのは、Gプロジェクト(2016年リオデジャネイロ五輪での金メダル獲得のための女子選手強化プロジェクト)が始まって、そこで前衛の位置を教えていただいて意識が変わり、それから良なくったと感じています」
――最後に青山選手の現在の目標を教えてください。
「私はオリンピックに出たいんです。シングルスで60~70位、ダブルスだとトップ10に入らないと難しいので、かなりハードルは高いと思うんですが、少しずつクリアして、その道が見えるようにしていきたいと思っています」
サイドストーリー
「際立つ接近戦の強さ」 村上武資フェド杯監督
「反応がいいし、前でしっかりと決めきれる。接近戦の強さが青山の武器。ダブルスでも結果を残していますし、今年のオーストラリアン・オープンではグランドスラムで優勝しているバニア・キング/ヤロスラフ・シュベドワ(アメリカ/カザフスタン)も倒しています。フェド杯のメンバーに選ばれて当然でしょう。
ただ、まだ自分の良さがわかっていない部分もある。後ろより前でこそ生きる選手ですから、そこを理解して磨けば、まだまだ伸びるはず。“青山フォーメーション”と呼ばれる独特のフォーメーションをつくるなどして、ダブルスで自分の生きる道を模索してほしいと思います」
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