世界の一流シニアプレーヤーたちに成功の秘密を訊いてみた!
アメリカ、ドイツ、オーストラリア、南アフリカ、イタリアなどを代表して活躍するシニアプレーヤーたちへのインタビュー第一弾。取材・文◎ポール・ファイン【2019年6月号掲載記事】
取材・文◎ポール・ファイン 翻訳◎木村かや子 写真◎選手私物、Getty Images
Paul Fein◎インタビュー記事や技術解説記事でおなじみの、テニスを取材して30年以上になるアメリカ在住のジャーナリスト。多くのトップコーチ、プレーヤーを取材し、数々の賞を獲得している。執筆作品はAmazon.comやBN.comで何度も1位となった。テニスをこよなく愛し、コーチとしても上級レベルにある。
「人は歳をとったからプレーをやめるのではない。彼らはプレーをやめるから老いるのだ」 ――オリバー・ウェンデル・ホームズ・シニア(作家、医学者)
全米テニス協会(USTA)のモットー「テニスは生涯スポーツだ」は、これまでになく真実だ。レクリーエーション的な意味でも、競技的意味でも、シニア(45歳以上)とスーパーシニア(55歳以上)でプレーする選手たちの人数は、記録的な数字を示している。5年前、私はニューイングランドの男子90歳以上シングルス決勝で、活発な100歳が、若々しい93歳と対決するのを見た。
これらのアスリートたちは、彼らの人生にさらなる年月を擁しているだけでなく、彼らの残された年月に、より豊かな人生を擁している、とも言えるのだ。シニアのテニスプレーヤーたちは、彼らのサービスで少しばかりパワーを、走る際には少しばかりスピードを失ったかもしれないが、彼らのプレーしたいという、そして勝ちたいという欲望は、何十年も前にそうだったのと同じくらい激しく燃えているのである。
彼らが活躍する秘密を見つけるため、私、ポール・ファインは世界の一流シニアプレーヤーたちと権威者たちに話を聞いた。彼らは、これを読むあなた(ニッポンのシニアプレーヤーのみなさん)がプレーの変化と身体の成熟から最大のものを引き出すことを助けるため、幅広いトピックについて、彼らの経験と高度な専門知識を分かち合ってくれた。
Q シニアプレーヤーにとって、故障を予防し、また故障から回復するための最良の方法は何ですか?
PLAYER01
エレン・ニューマン◎57歳
2015年に50代部門のダブルスで世界1位、2016年に同シングルスで3位となったドイツ人選手
トレーニングは大切よ! 柔軟さ、バランス、コーディネーションに焦点を当てている
6ヵ月の間、強い痛みをともなうハムストリングの故障に苦しめられたあと、私はオフコートのトレーニング法を変えたの。というのも、故障を防ぐためには、柔軟性と、良いバランス、身体の良いコーディネーションを擁していなければならないことがわかったから。強さ、スピード、スタミナだけでなく、トレーニングでは、前述の分野(柔軟さ、バランス、コーディネーション)に焦点を当てなければいけないのよ。
そんなわけで私は、身体の柔軟性を向上させるため、ボブ・アンダーソンのテニスに特化したストレッチ・プログラムで、毎日を始めることにした。私は、ジャンプや、インパクトの強い動きのあるものから、よりスムースなピラティスとテラバンド(ゴムでできた布のように薄い帯状のバンド)を使ったエクササイズ に切り替えたわ。この双方が、脚の下部に重い圧力をかけることなく、多くの筋肉を強化してくれるの。同様に重要なことに、これらのエクササイズは、コーディネーションのスキルをも発達させてくれるわ。
リカバリーを始める最良のきっかけは友人たちとの交流にあり
身体の回復、すなわちリカバリーに当てるための日には、軽いライフ・キネティックや、バランスボードのエクササイズのほうを好んでいるの(ライフ・キネティックはドイツで高く評価されるようになった神経科学ベースの運動プログラムで、ボールなどを使った複数の素早い運動などにより、脳の問題解決能力を高め、集中力や反応の速さなどを向上させることを意図したエクササイズ)。良いリカバリーは、シニアプレーヤーにとって、よりいっそう必要不可欠なもの。試合後の再生を促すため、私の場合は10分の軽いサイクリングを行えば、膝や足首のプレッシャーを取り除くことができ、それが動きを楽にしてくれるの。
これらすべての工夫がテニスの結果につながったのだけれど、私はこのトレーニングの習慣をひとつも変えるつもりはないわ。これからも続けるつもりよ。
そうそう、リカバリーを始めるための最良の方法は、試合のパートナーや仲間たちと飲み物でもいただきながら、打ち解けた交流をすることでしょう。それは、サウナやマッサージ、ブラックロール(身体の下で転がす黒い筒型の用具)が身体をリラックスさせるのと同様、メンタルをリラックスさせるために有益なことだと思う。
Q シニアの大会でもっとも重要なことは何ですか? 正確さですか、それともストロークの構造ですか?
PLAYER02
ブライアン・チェネイ◎71歳
24の国際的チーム&個別の大会でアメリカを代表し、1982年以来、アメリカのジュニア・ベテラン、シニア、スーパーシニアの大会で「92」のタイトルを勝ち獲ってきたプレーヤー
ショットの正確さとプレースメントは打法より重要
ショットの正確さとプレースメントは、間違いなく打法よりも重要だ。私は自らの長いキャリアを通し、テニスボールを打つための多くの違ったスタイルと技術を目にしてきた。しかし圧倒的に肝心な点は、ボールがどこに行くかなのだ。特に深さ――ベースラインから3m以内のところに落ちるショットを打つこと――が、カギとなる。あなたのストロークが肉体的故障を引き起こさない限り、あなたは安定性――つまりボールを相手コートに返してプレーを続けることと、プレースメント(巧みな配球)に集中すべきだ。正確なプレースメントは、私の母であり最初のコーチであるドボ・バンディ・チェネイを、記録的な「394」のナショナル・タイトル獲得へと導いたよ。
技術の変更が目標を達成するのに必要なら、やってみればいい
もし両手打ちバックハンドへの転向が、安定性と良いプレースメントを達成する助けとなるのなら、その変更は時間と努力に値するものだと思う。ティーチング・プロでありコーチである私は、頻繁に、シニアプレーヤーは片手打ちバックハンドのトップスピンを発達させるべきか否か、という質問を受ける。私の答えは、必ずしもその必要はない、というものだ。テニスの偉人、ケン・ローズウォールとシュテフィ・グラフが、バックハンドスライスをいかに深く、正確に、そしてミスなく一貫して打っていたか、を思い出してみるといい。
10年前、私は、よりスピンを生み出すために、フォアハンドのグリップをイースタンからセミウエスタンへと変えた。私はスピンを増す機能を持つラケットとストリングのテクノロジーを、活用してみたかったんだ。私は、よりショットに安定性を与える意味で、この変更を好んだのだが、必要としていた深さと正確さをふたたび身につけるのに、数年かかったよ。
でも、もっとも骨の折れる厳しい試合において、私のフォアハンドのパワーとトップスピンは大きな効果を発揮した。私は対戦相手に対して、一貫してショットを深い位置に入れたんだ。そして、相手をいい体勢で打てないポジションへ走らせた。そうすると大概は、私がウィナーを取るか、私が相手にミスを強いるか、相手がアンフォーストエラー(凡ミス)をおかすかだった。実り多い変更だった。
Q 元グランドスラム・チャンピオンは、いかにしてよりシニア大会に適応し、ときに、絶頂期には圧勝していた相手に敗れることを受け入れるのしょうか?
PLAYER03
ロザリン・フェアバンク・ニデファー◎58歳
2度フレンチ・オープン女子ダブルスで優勝し、1980年代にシングルスで世界15位だった南アフリカの選手。2012年に50代のシングルス世界チャンピオンとなった。US50歳以上ハードコート選手権シングルス優勝5回
テニスと競争を愛しているなら、挑戦は変わらない
プロツアーでプレーした者なら誰であれ、シニア大会でプレーすることは、ウインブルドンやそのほかのグランドスラム大会からの大きなグレードダウンであるということは認めるでしょう。しかし、テニスと競争を愛しているなら、挑戦は同じであり続けるのよ。
私が最初にプレーしたシニア大会は2004年、そこで私は粗野なやり方で目覚めることになった。私は7年間シングルスをプレーしていなかったのだけれど、傲慢にも、問題なく自分の本来の調子を取り戻せるだろうと推測していた。ところが私は、準決勝の相手、トレイシー・ハウクと戦う準備ができていなかったわ。彼女は、私よりもずっと多くの時間を練習コートで費やした、年季の入ったシニアプレーヤーだったのよ。
その彼女を私は圧倒し、ネットに出てボレーを決められると思っていた。私の自信はすぐに砕かれたわ。自分のボレーは、もはやかつてのものではないことにすぐに気づかされた。そして数時間後、私のベースラインプレーは、彼女のそれに屈していたわ。
この敗戦は、私の誇りにひどいショックを与え、もう2度とシニア大会でプレーしないと誓った。その後、私がもう一度やってみようという気持ちになるには――サンディエゴのワールド・チャンピオンシップスで――5年を必要としたわ。それ以来、私は一年に数回、シニア大会に出場している。
プレッシャーに対処するため、私は元プロテニスプレーヤーとしての自分の評判を守ろうとしなくていいのだ、ということを認識して、自分の振る舞いを変えたの。私は、テニスが好きだから、シニア大会で戦うことから得る、肉体的、メンタル的、感情的、そして精神的な実りを心から楽しんでいるから、プレーしているのよ。
Q 長年鍛錬したストロークと、何十年にもわたる筋肉の記憶を持つ、年季の入ったプレーヤーが大きなストロークの変更を行うのは遅すぎるでしょうか?
PLAYER04
ロン・トニダンデル◎86歳
1988年以来、国中のUSTAスーパーシニアの大会でプレーし、2014年に80歳以上シングルス部門でアメリカ4位に。また2015、16年に息子のジェフと組み、ウルトラ・シニア・ファーザー&サン父&息子)ダブルスで1位となった選手
技術の変更に遅すぎるということは決してない
私は50代半ばに、友人でプロプレーヤーのジョー・デイザーに薦められ、両手打ちバックハンドを開発し始めたんだ。これは、私がこれまで自分のテニスに施した中で最良の変更となり、大きな上達を遂げる助けとなったんだよ。私の両手打ちバックハンドは、より強くなり、よりパワフルで、かつての片手打ちバックハンドよりも頼りになるようになった。私はいまだ、自分の両手打ちバックハンドを向上させるため練習していて、常により良く打てるよう努力を積んでいるよ。
私の意見では、選手にとってストロークに大きな変更を加えるのに、遅すぎるということは決してないよ。テキサス州ワコのジム・カリーが、両手打ちバックハンドを打ち始めたとき、彼は70代後半だった。そして5年も経たないうちに、彼はそれを恐るべき武器とした。今、彼はアメリカの80歳以上シングルスのランキングで5位だ。
私は84歳のときに、フォアハンドのグリップをセミウエスタンに変えた。するとバックスイングでラケットフェースが伏せるようになり、フォワードスイングでは円を描くような軌道のモーションになった。私は以前より幾分トップスピンをかけて打てるようになり、より攻撃的に、より安定性のあるフォアになったよ。
テニスプレーヤーは、変更を施すことをためらうべきではない。もちろん変更には多くの努力と練習が必要で、変更のプロセスは、ときにフラストレーションを誘うかもしれない。しかし長い目で見れば、その変更は実りを生み、楽しいものとなる可能性があるのだから、やらない手はないだろう!
Q シニアの女子テニスで最良の戦略は何ですか? そしてそれはどれくらい効果的でしょうか?
PLAYER05
ジュディ・ディクソン◎69歳
かつてウインブルドンとUSオープンでプレーし、1970年代にビリー・ジーン・キングと組んでダブルスをプレーした彼女は、2017年ワールド・チャンピオンシップスのシングルスで準々決勝、ダブルスで決勝に進出。またマサチューセッツ大学の指導者として、アトランティック10協議会の『年度最優秀コーチ』に6度選ばれた
『萎ませ、膨らませ 』のパターンはどうか?
私が考える基本的な戦略は、対戦相手の動き、スタミナ、守備的スキルをテストするため、相手をコートのいたるところへ走らせるというもの。ドロップショットのあとにロブ、あるいはパッシング、というのがもっとも一般的ね。
もうひとつの基本的な策は、シンプルな「萎ませ、膨らませ」パターンよ。例えば、ドロップショットではなくても短めのボールを打って、それから右か左に深いボールを打つ。相手が下がりながら、打ちづらそうにする深いボールを打つのよ。
上がったり下がったりさせるための3番目の策は、鋭い角度のついたクロスのアングルショットに続く、深いダウン・ザ・ラインのショット。
4番目はベースラインに近いコート中央から、ときに内側に踏み込んだりして、可能な限りフォアでボールを打ち、コート中央を自分の支配下におくの。
5番目は、相手から弱い返球を引き出すまで、クロスへバックハンドスライスを深く打ち続けるもの。弱めの返球を引き出したら、インサイドアウトのフォア(主にコートの外へ出ていくショット)、あるいはインサイドインのフォア(主にストレート)で叩くのよ。
最後は、対戦相手のセカンドサービスをフォアで攻撃する策。フォアはセンター深くへ打ちたいわ。センターはサイドアウトがないから強く打てる。これをすると、相手はプレッシャーを感じて、ファーストサービスの確率も落としてくるの。ただちに相手を守備的な立場に追いやることができ、チャンスを生み出したり、ミスを強いたりすることができるわ。
Q あなたが25年間休んで65歳でプレーを再開したように、20年かそれ以上競技テニスをしていなかったプレーヤーがコートに復帰する際は、どのようなアドバイスをしますか?
PLAYER06
ジョン・メイヨット◎71歳
1977年にジム・ラトリフと組んだダブルスでニューイングランド1位にランクされていた彼は、ナショナル65歳以上グラスコート選手権で優勝した2015年、シングルスでアメリカ3位となった
さまざまな年代のプレーヤーのスキルを考察して、自分を作り直す
何よりそれを楽しみ、上達したいという欲求を持ちたいね。そして、競い合うことを楽しんでほしい。いいプレーをすることに躍起になる必要はないよ。ほかの選手たちとの友情や、会場の雰囲気、競技そのものを楽しめばいいんだ。
必ずしも肉体的に最良の状態でなければいけないわけではないんだ。多くの選手がちょっとした故障を抱えてプレーしていて、それでも変わらずシングルスの1、2回戦、そしてダブルスをプレーすることを楽しんでいるよ。私がやったように、まずは試しに地方の大会から始めることをお薦めする。それから、慣れたらナショナル大会にエントリ―すればいい。
さまざまな年代のプレーヤーのスキルを考察し、あなたのテニスと、プレーの心理状態をふたたび分析してみよう。例えば、私はかつて、常にサーブ&ボレーを行っていた。今の私はそれを、ときどき行っている。自分を再考案して、作り直すのだよ。
若かりし頃のように才能に頼るのではなく、よりポイントをひねり出すためのハードワークに頼るんだ。若かりし頃に、フラストレーションを感じて、イライラするような態度をとった自分を、いま許すことはできないよ。シニアテニスでは、新しいメンタリティが必要だ。
Q シニアプレーヤーに対して(たとえ40、50年プレーしてきた経験者であっても)、重要な試合前、重要なポイントやゲームでナーバスになるのを克服する手助けをするため、彼らに何を薦めますか?
PLAYER07
ボブ・リトウィン◎70歳
メンタル・スキルを向上させるまでなかなか勝てなかった優秀なプレーヤーで、40歳で、35歳以上・40歳以上のアメリカ・ナショナル・タイトルを獲得。ワールド・チャンピオンシップスで優勝し、55歳で年齢別世界ランキングで1位に。現在はパフォーマンス・コーチと著作に従事している
未来を考えず現在に没頭しよう! そこにとどまるスキルをコート内外で練習する
ナーバスになるという現象は、例えば、勝つ、負ける、他者の意見、ランキング、自分の評判など、未来についての懸念と関係しているものだ。もし現在に気持ちを集中させ、未来についての考えを避ければ、ナーバスさの引き金は消散するものだよ。 新しい、そして長年のシニアプレーヤーのためのカギは、現在に没頭し、そこにとどまるスキルをコート内外で練習することだ。その練習は、深呼吸をして、自分の呼吸の大きな吸い込みと吐き出しに注意を払う、といったことほどシンプルなものであり得る。
メディテーション=瞑想を行うことは、その練習のもうひとつの方法だ。歩いているときに、自分の足が地面を叩く感触に注意を払う。顔に当たる風を感じる。食べている物をじっくり味わう。自分の車を乗り降りするとき、ドアが力強く閉まる音に耳を傾ける、など。
あなたの助けになるかもしれない、ほかの秘訣もある。よりありのままを受け入れ、ゲームでたった今起きたこと、つまりこの場合、先立つポイントに(気持ちを乱すなどの)反応をしない姿勢を身につけ、すぐに物事を批評したり非難したりしないようにし、過ぎたことから自分の考えを切り離して、超然とした精神状態を身につける、あるいは許す訓練をしよう。 これらすべてを体得するには、やはり訓練が必要だ。そのそれぞれが、非生産的な考えを除去し、そうすればナーバスさは消えていく。今この瞬間の存在が増すんだ。
そうするとテニスの試合は、何も賭けるものもない、公園で友達とボールを打っているような経験へと変わる。これは、「きっとうまく機能すると信じたから固執して頑張り抜いた」という類のものだ。
Q フィジカル面、メンタル面の双方で、最高のフィットネス・レベルに至るためのカギは何ですか?
PLAYER08
グレン・バスビー◎61歳
ITFの50歳、55歳、60歳以上の部門において、ここ11年のうち9年でナンバーワンだったオーストラリア人。6つの個人タイトル、5つのワールドチーム・タイトルを獲得し、現在クーヨン国際テニスアカデミーのディレクターを務める
テニスのために特化したシニア向けのトレーニングをやろう
テニスのすべてのレベルにおいて、徹底したフィットネス管理は、パフォーマンスの是非を分けるものとなるんだ。シニアテニスにおいては、いっそう重要かもしれない。シニアプレーヤーは、より若かったときにできていたレベルにまで、自分の身体を及ばせようと努力するが、頻繁に、十分なフィットネス強化の努力と知識なしに、そうしようとするよ。
シニアプレーヤーのほぼみんなが、軽いが慢性の身体の問題や故障に、前進を阻まれる。その人それぞれにあったフィットネス管理の方法を見つけ出すことが、極めて重要なこととなるんだ。テニスのために特化したトレーニングが必要不可欠だよ。フィットネス一般ではなく、テニスのための特別なトレーニングをしなければならない。
私は8年前に、長い距離を走ることとウエイトトレーニングをやめたが、今の自分はここ20年でもっとも強いと感じている。私はかつては四六時中、故障している選手で、より良いトレーニングプログラムを開発しなければならなかったんだ。
この試みの終わりにかけ、私はトランポリン、テラバンド、自重トレーニング(自分の体重を負荷にして行うトレーニング)を組み合わせた特別なトレーニング・プログラムを開発した。これらのエクササイズは、私の体幹の強さを向上させ、パワーを増加させ、故障を防ぎ、コート上のスピードを高めるためにデザインされたものだ。
重要な点は、このワークアウトが、30、40分しかかからないということ。長くやる必要はない。
すべての動き、動作は、テニスでの動きのパターンと、テニスで必要とされる強さをしっかりと考慮して考案されたものなのだ。
Q ダブルスで自分のパートナーと自分自身からベストを引き出すために、どのようなアドバイスをしますか?
PLAYER09
ニール・ニューマン◎70歳
パフォーマンス促進に焦点を当ててきた心理学者である彼は、35歳から60歳までの年齢別各段階のダブルスでアメリカ1位となり、「40」のUSTAナショナル・ダブルス・タイトル、4つのITFワールド・ダブルス・タイトルを勝ち取り、ITFワールドチーム・チャンピオンシップスで2度優勝した
自分はあなたに手を差し伸べるためにここにいると、パートナーに知らせよう
最高のパートナーーーとは、しっかりコミュニケーションをとり、仲間を支え、協力的でありながら他者を受け入れ、共感し、自分の意見を押しつけることなく、助けようとする姿勢を持つことを意味する。
もし私のパートナーが四苦八苦しているなら、私は、自分が彼に手を差し伸べるためにここにいるのだということを、彼に知らせるだろう。しかしそうしながら彼が問題を解決しようとしている間は、自分のプレーレベルを保つようにするのだ。
もし彼の助けとなりそうな考えがあったら、それを提案してもいい。ただし、彼は自分で自分のプレーの選択をできるのだ、ということもはっきりとわからせてやりながらだ。それが最高のパートナーというものだ。
Q シニア男子プレーヤーのための戦術的、技術的アドバイスを教えてください。
PLAYER10
ジミー・パーカー◎75歳
1964年にアメリカの男子シングルス16位だった彼は、USTAナショナル・チャンピオンシップスのタイトル数で最多記録を誇り(131)、35歳から70歳のシングルスの各年齢部門でアメリカ1位となった。彼はUSPTAマスター・プロで、テニス・チャンネルのインストラクターでもある。
オールコートテニスを目指そう!
テニスのプレーにおける戦術的要素と技術的要素は、密接に関係し合っている。というのも、テクニックは、あなたがどの戦略を使うことができるか、に影響を与えることになるからだ。私は常に、私の生徒たち、または自分自身に、オールコートテニス(オールラウンドなテニス)の能力を身につけさせようと努力してきたよ。なぜならそれは、あなたの道具箱の中の道具の数を最大限にする、ということになるからだ。たとえシニアであっても、ベースラインでと同様、ネットでも心地よくプレーできるなら、またドロップショットやアングルショットのような補足的ショットを打つことができるなら、より多くの選択肢を手にしていることになる。ある一試合で、持てる能力のすべてを使いはしないかもしれないが、それらはプランB、あるいはプランCに移る必要性が生じたときに、間違いなくそこにあるのだ。
相手が好きなものはわずかしか与えず、嫌いなものをたくさん与える
テニスの素晴らしいところは、本当に多くのやり方でプレーし、成功をおさめることができるということだ。まったく同じやり方でプレーする選手はふたりといない。そして我々は、フェデラー対ナダル、マッケンロー対ボルグのような、対照的なプレースタイルの者同士がぶつかり合うのを観るのが大好きだ。秘訣は、あなたの運動能力を活用した強さ、ストローク、フィジカル的特質、メンタル的・感情的な性向の、良いコンビネーションを発達させることだろう。
ひとたび試合に入ったら、あなたの任務は、対戦相手の好きなものをできるだけわずかしか与えないようにし、反対に相手が嫌いなものをできるだけ多く与えるようにすることだ。
それゆえ、あなたのショットの選択が、対戦相手に対しもっとも効果的に機能するようにするため、ネットの反対側で何が起きているのかを、しっかり観察しなければいけないよ。非常に頻繁に、プレーヤーは自らのテクニックに気持ちを集中させ過ぎる。そしてもし、この試合に勝つために必要なショットを生み出すことができない、と気づいたら、それをフィードバックとして使い、次の大会に向けての練習において、よりいい形で焦点を絞るんだ。明日までに上達することはできないかもしれないが、しかし時間をかければ、効果的な練習は、シニアプレーヤーにも間違いなく上達をもたらすものだよ。
ダブルスのパートナーは賢明なセルフコーチでもある
2005年にオーストラリア・パースで行われたITFワールド・シニアチャンピオンシップスにおいて、リト・アルバレスとピーター・リッグのペアと対戦した、私とラリー・タービルは、第1セットで2−6と圧倒された。
我々のペアは互いに支え合い、協力的であり続け、そうしながら第2セットのための作戦を立てた。私は第1セットを通して風下からサービスを打っていて、キープするのに苦労していたので、我々はサービスの順序を変えることを検討した。ところが、その作戦をとると我々双方が(私が左利きであるために)太陽を顔で受けてサービスを打つ状況をつくってしまうことになるため、結局私たちはサービスの順序は変えずに、私は風下からより強くサービスを打つようにしたんだ。相手のリッグが我々に対して、ダウン・ザ・ラインへのリターンでダメージを与えていたことを考慮して、デュースコートでIフォーメーションを使うのも止めることにした。
その結果、私は試合の残りを通してサービスキープができて、すると我々のストロークはスイッチが入ったようにいい流れに乗り、挽回を果たして、スリル溢れる2-6 6-4 6-3の勝利をつかんだんだ。ダブルスのパートナーは賢明なセルフコーチなのだよ。
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