丸山淳一_1ポイントにフォーカス、エネルギーを出せ❗️ タイブレークをものにするためのアドバイス
タイブレークを取るための戦術(どのようにポイントを取るか、そのためにどのようにプレーするか)を頭に入れておくことは必要ですが、それ以上に1ポイント、1ポイントにフォーカスして戦う、という気持ちが大切です。ここではタイブレークをものにするためのアドバイスをします。【テニスマガジン2018年12月号掲載記事】
指導◎丸山淳一
まるやま・じゅんいち◎1965年4月8日、東京都生まれ。早稲田大学時代の88年にインカレ準優勝。95、96年全日本選手権混合複2連覇。元デビスカップ日本代表選手。現役引退後は杉山愛プロ(95~99年)、岩渕聡プロ(2000~03年)を指 導。その間、フェドカップやシドニー五輪の日本代表のコーチとしても活躍した。現在は、森田あゆみプロの専属コーチを務め、世界を転戦している。
Lesson 1
タイブレークとは──
私はこう考える
1ポイント、1ポイントにフォーカスして戦う!
タイブレークは運も大きく作用するので、トッププレーヤーでも簡単にコントロールできるものではありません。今年のUSオープンで錦織圭に敗れたマリン・チリッチのように、ミニブレークをして4-3でリードしていた場面で、2本のダブルフォールトにより流れを逃してしまうことも珍しくありません。何が起こるかわからないのがタイブレークです。
タイブレークは“水物”──そのときの条件によって変わりやすく、予想しにくいもの──ですから、まずは、どんなことも起きる、起きても動じないという心の準備をしておくことが大切です。何が起きても受け入れ、自分ができることをやり切ることです。
もちろん、タイブレークを取るための戦術(どのようにポイントを取るか、そのためにどのようにプレーするか)を頭に入れておくことは必要ですが、それ以上に1ポイント、1ポイントにフォーカスして戦う、という気持ちが大切だと思います。
Lesson 2
心構えや準備
実力でプレーする
ないものを出そうとしない
例えば、自分がサービスでポイントを取る能力が高くないのに、タイブレークになるとサービスポイントを期待して、ファーストサービスを強く打ちすぎて確率を下げてしまうようではまったく意味がありません。
それよりも、セカンドサービスを打って相手にアタックされないように、ファーストサービスを確実に入れてグラウンドストロークで優位にラリーをする戦術を考えるべきだと思います。逆に、エースを取れるだけのサービス力があるのなら、中途半端に確率を上げることよりサービスから攻めていく姿勢を忘れてはなりません。
レシーバーが意識すべきことは、ファーストサービスに対しては、何とかリターンをコートに入れ、ラリーに持ち込みプレッシャーをかけていくことです。またセカンドサービスをアタックする勇気を持つことも大切な要素です。
相手に考えさせる、相手にプレッシャーを与える“スマートなプレー”と“リスクをおかしてでも勝負するプレー”の両立ができれば、勝負強いテニスになってきます。
本当の強さを目指すのであれば、自分から勝負をすることが必要です。時には失敗をして負けてしまうこともありますが、失敗を繰り返し乗り越えていくことを求められるのが、テニスプレーヤーです。
Lesson 3
タイブレークをものにするためのアドバイス
集中力と動きのギアを上げ自分からポイントを取りにいく
私がコーチなら、相手にプレッシャーを与える方法を考えながら、勝負どころでは思い切って勝負するようにアドバイスします。そしてタイブレークに入ったら、集中力、動きのギアを上げられる力が必要になるので、自分にスイッチを入れることも欠かせません。選手によっては、それまでやっていないプレーをすることもあります。
大切なことは、思い切って勝負すること。それによって相手にプレッシャーをかけ、相手に考えさせることです。その場面、場面で何が必要なのかを考え、勇気を持って実行することです。
勝負所で自分からポイントを取る── そのための練習をしている選手は強いと思います。絶対やってはいけないのは、相手が失敗するのを待つことです。自分が堅実なプレーをして勝てるのは、相手が格下の場合のみ。互角か、それ以上の相手なら受け身のテニスでは勝てません。
エネルギーで相手に負けない
“何としてもポイントを取る”
というエネルギーを出す
タイブレークをものにするために、もうひとつアドバイスをするとすれば、エネルギーで絶対相手に負けないことです。“何としても取る!”というエネルギーを出すのです。
また、全力を出せたなら、タイブレークを取れなかったとしても動じないことが大事です。タイブレークを落としてがっかりしてしまう選手は、その次のセットにまで影響が出てしまいます。また、タイブレークを取った側も気持ちを引き締めて次のセットに向かうことが必要です。
Lesson 4
タイブレークに強くなる練習
以前の試合を分析して練習を行う──
5つの例
タイブレークを練習する方法は、以前の試合分析からヒントを探して行う方法があります。そこで5つの具体的な 例を挙げてみましょう。
練習例 1
タイブレークでファーストサービスが全然入らなかったら
ワンサービスの練習試合をする。
練習例 2
タイブレークで攻める勇気を持てず、サービスを入れにいってしまったら
ダブルファーストサービスのセット練習を行う。
練習例 3
タイブレークで相手の甘いセカンドサービスをアタックする勇気を持てなかったら
ベースライン上に立ち、アグレッシブなサービスリターンを打つ練習を行う。
練習例 4
タイブレークで相手に展開されて何もできなかったら
同じ球種のショットを連続で打たない練習をする。
練習例 5
タイブレークで自分から展開できてもミスが多かったら
100球連続でコートに入れる練習を行う。
このように、その選手がプレーしたタイブレークにどのような課題があるかによって、その後、行う練習方法は変わります。
Q ダブルスのタイブレークの戦い方はありますか?
A サーバー側が3本目攻撃を仕掛けます
サーバー側が3本目攻撃を仕掛けることが大切です。前衛が手を出してポーチをする確率を高め、レシーバーがコートの内側(センター)にリターンを打ったら、サーバー側前衛にボレーを打たれてポイントを失ってしまうという状況をつくるのが基本です。そのようにレシーバーに思わせられれば、次は内側ではなく、外側(ライン際)に打たないとポイントが取れないというプレッシャーを感じさせることができます。
Q ダブルスのノーアド(40-40のあと、1ポイント勝負)の戦い方はありますか?
A 相手より先に仕掛けて受け身に回らないことです
ファーストサービスの確率がポイント獲得率に直結します。セカンドサービスになってしまうと、主導権は一気にリターン側。レシーバー側は、サービスが浅くなろうものなら攻撃しようと準備しています。
しかし、そんな場面でも相手が予測できないプレーをする勇気があれば、ポイントできる確率は上がります。そこで求められるのは勝負すること。安全にプレーしても相手にポイントを取られる確率が高くなるので、大切なことは、相手よりも先に仕掛けて受け身に回らないということです。
シングルスでは相手にプレーをさせることが必要な場面はありますが、ダブルスでは先手必勝が基本的な考え方です。
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