木本知_“強気”や“勢い”だけで臨んではいけない❗️ タイブレークの戦い方

Lesson 2
タイブレークに入る前に

6-5か5-6から始まりタイブレーク終了まで休めない

 7ポイントのマッチタイブレークは、最低でも7-0の7ポイント、7-5なら12ポイント、さらに決着がつかなければ、2ポイント以上の差がつくまで続けられ、どんどんポイントを積み重ねます。

 1ゲームは40-30または30-40のあとに決着したとすると、全部で6ポイントをプレーしたことになり、これを1ゲームの平均ポイント数とすると、タイブレーク前の6-5か5-6からタイブレーク終了までに、6ポイント+12ポイントαでおよそ3ゲームを連続でプレーしたことになります。10ポイントのマッチタイブレークになれば、もう1ゲーム分多くなると思われ、とにかく非常に長いのでエネルギーが必要です。

 タイブレークは「連続的プレー」というルールの中で行われるため、基本的に休めないのですが、長い勝負になるということを頭におき、できる範囲でタオルで汗を拭ったり、水を口にするなどして、ケアすることが必要です。

Lesson 3
タイブレークは2ポイント交代

5-1、1-5は逆転チャンスあり

 タイブレークは1ポイントの取り合いです。1ポイント目だけサービスポイントは1回ですが、その後は2ポイントごとにサーバーが変わります。つまり同条件でのポイントの奪い合いであることを認識しましょう。

 エンドチェンジは基本的に6ポイントごとで、そこで間が空きます。そのとき6-0または0-6だと、挽回するのはゼロではないですが、まず難しいです。可能性として私は10%以下と見ています。

 しかし、それ以外のスコアでは、すべてチャンスがあると思います。5-1や1-5は差があるように見えますが、あと2ポイントを取って試合を終わらせるのはなかなかきついものです。逆に5-1から2ポイントを取って5-3とできれば、ポイントが狭まったことで、リードしているほうもプレッシャーを感じます。

 しかし、6-0は、リードしているほうはノープレッシャーです。リードされているほうはポイントを取りにいくしかなく、かなり極端な方法(例えば全部のボールをミドルに打つ)をとらない限り逆転するのは難しいでしょう(これがもしはまれば10%以下の可能性に結びつきます)。

 6-0や5-1も、リードしているほうにも、まさか、はあります。例えばサービス力がない女子選手に多いのは、もう勝ったと思って油断してしまうことや、早く終わらせようとして攻撃すべきときを見極めずに攻撃してミスをするケース。そのうちスコアが接近していきプレッシャーを感じて、何もできなくなってしまうのです。これが、サービス力がある男子になると6-0の優位な立場を生かして、ワイドサービスを打って決着をつけます。

 エンドチェンジのときに3-3や4-2、2-4といったスコアは、タイのスコアと考えたほうがよいです。

Lesson 4
サーバーとレシーバー、第一打について

最初の一打が肝心
アンフォーストエラーをしない

 サーバーもレシーバーも最初の一打のアンフォーストエラーはしないことです。サーバーはダブルフォールト、レシーバーはリターンミス。タイブレークは最初が肝心であり、自らミスをすると、相手はそのあと気分よくプレーしてしまいます。

サーバー側

 ファーストサービスを入れてプレーすることをベースにします。ただし相手に予測されてしまうようなサービスや、ただ入れにいくようなサービスは打ってはいけません。攻撃のための一打目として打っていくことがベースです。

レシーバー側

 リターンの凡ミスはしないことです。一方で、ただ返球しただけでは相手に攻撃されてしまうので、甘くない、深さがあるリターンを打ちたいものです。サイドを狙うとミスと隣り合わせなので、左右のアウトがないミドルを使います。スライスを使ったブロックリターンは、相手コートの深い場所に確実に返すために欠かせないショットです。これをしっかり使うプレーヤーでイメージするのは、今でも伊達公子さんです。

Lesson 5
サービスのコース リターンのコース

サーバーはセンター、ボディ
レシーバーはミドルがベース

 基本的にサービスはファーストにしろ、セカンドにしろ、レシーバーに対してセンターかボディに打つことをベースにします。甘くない(深い)サービスが打てれば、相手は簡単に返球できません。

 もちろんすべて同じサービスでは相手に待たれてしまいますから、球種をはじめとしたバリエーションは大切です。

 では、ワイドサービスはいつ打つのか?ですが、これは勝負所にとっておくという考え方です。リードしている状態、例えば2-1を3-1にしたいときに、アドサイドからワイドにスピンサービスを打ってリターンミスを誘います。

 一方で同点のときはセンターやボディへのサービスをベースにして、これはすなわちミドルへのボールなのでラリーとなる確率が高く、強引にポイントを取りに行ったりせずに、堅実にポイントを取りに行くという方法です。

 リターンは、第一打を自ら凡ミスしないことです。無理にサイドを狙い、左右にずれてミスになるのを避けて、左右にアウトがないミドルに深く返すことが大切です。サーバーは、サービスを打ったあと攻撃的に、前に出てきても、そのときもサイドを狙うとミスと隣り合わせですが、ミドルに低く打っておけば、次のショットで決められることはほとんどなく、続きのプレーがあります。有効なのはスライスを使ったミドルへのショットです。

Lesson 6
同じストローカー同士、拮抗した場合

両者粘り型なら、どちらか前に引っ張り出したほうが有利

 お互いがストロークが得意で、粘り強くてタイブレークになったとき。おそらく鉄壁の守りがあるのでしょう。エースを狙っても拾われます。そうすると、前(ネットプレー)に出る(出される)のが好きではない可能性が高いです。

 前に引っ張り出して、さらにロブを上げるとスマッシュが得意ではない可能性もあります。また、ドロップショットを拾いに走れば体力的にきついはずで、タイブレークの前にはすでに12ゲーム(6-6)をプレーしているのですから、その点も考えるとやらない手はありません。

 ちなみに疲労してくると、スピン系ストローカーはボールが浅くなりがちです。フラット系ストローカーは身体のバランスが崩れてアウトなどのミスが増えます。

 そして、スライス系ストローカーは実は一番注目で、スライスは体力的なロスが少なく安全に返球でき、しかも時間のコントロールができるので、ポジショニングを回復できます。スライスの回転はバウンドが低いので、相手に攻められにくい点も見逃せません。40歳以上の方が、これを使わない手はないでしょう。

このままでは負ける、となったら仕掛けるしかない!

 このままでは負ける、となったら、勢い、はったり、自己催眠なども必要かもしれません。ただし、まったくできないことをやったところで、結局できないので、それはしないことです(例えば強打で一瞬びびらせることはできるかもしれませんが…)。この場合は、1ポイントでも多くポイントを取ることを目指すか、または、1ポイントが3ポイントを引き寄せるくらいの、リスクは高くてもこれまでと違うものを仕掛けるかです。

 いきなりフラット系サービスを打ったり、ベースラインの中でプレーし始めたり。こうしたことに相手が驚いて「え?」となったときに、もしかするとそれまでに出来上がっていた“回路”が壊せるかもしれません。ハイリスク、ハイリターンの作戦です。

 フェデラーのサービスは、はったりではなく、常に相手に「え?」と思わせています。同じサービスを打たないので、相手は「え?」の連続です。

 私は、このままでは負けるというときに、簡単に落とすより、しがみついて落とすほうが、(次のセットにつながる)流れが感じられると考えます。

タイブレークに強くなる練習

これがベース

攻撃できるボールを攻撃することをベースにする

 前述したように、5-1や1-5のスコアは、まだ逆転可能なスコアです。

 リードしている人が負けるのはなぜかというと、考えられる理由の一つに「普通にやればよい」という考え方があります。普通にやることの意味が、攻撃できるボールを攻撃するということであればよいのですが、気を緩めてプレーが甘くなれば、相手はその隙をついてくるのです。

 リードしている人もされている人も、このことは覚えておきましょう。大切なことは常に、攻撃できるボールは必ず攻撃するということです。

練習例 1
コースの打ち分け
攻撃できるボールを攻撃する

 基本的にラリー(打ち合って)でポイントを奪います。攻撃できるボールを攻撃するという練習です。イラストのように、サービスラインとベースラインの真ん中よりも後ろ、ミドルと両サイドに、ラケット一本(約70cm)をコンパスにしたターゲットを描いて狙いの目安にします。

ポイント

● ラインぎりぎりを狙わずに、コースを狙ってポイント獲得を目指す。

● プレッシャーがかかっているときはミドルを狙う。狭いところは狙わない。

● 相手が強敵のときは後方に下がる。

● 相手の動きの裏をかく、相手が後方にいるときにドロップショットを打つ。センターに打ち、サイドミスは絶対にしない。

● 相手がネットについたら、攻撃できるならパスやロブを打ち、そうでないときはサイドアウトのないミドルに打つ。

● ネットについてボレーを打つとき、攻撃できるなら角度をつければよいが、そうではないときに角度をつけると角度で切り返されることを覚えておく。その場合はミドルに短く打つのも方法

押さえておきたい

練習例 2
タイブレークを繰り返す

 タイブレークを徹底的に練習するということをしていますか? セット練習をしても、タイブレークにならない限りタイブレークをしない、というのではなく、ひたすらタイブレークを繰り返します。これまでアドバイスしたことを取り入れて、タイブレークの3セットマッチや5セットマッチをやりましょう。

どんどんやってほしい

練習例 3
サービスをボディに打つ

 レシーバーのボディを狙ってサービスを打ちます。レシーバーが食い込まれて返球すれば、ボールは浅く、甘くなり、回り込んでフォアハンドで攻撃できます。フラット系、スライス系、スピン系と球種を使って、両サイド行います。

練習例 4
勝負所のワイドサービス

 勝負所でのワイドサービスの練習です。打ちたいときに打てるようにしておかなければなりません。デュースサイドなら、ワイドに切れていくスライス系、アドサイドならワイド(相手のボディからワイドでもOK)に弾むスピン系。このサービスがあれば、レシーバーとの駆け引きの中で、勝負所でワイドでもセンターでも選べます。

 ちなみにセカンドサービスで、この勝負サービスが打てたら最高です。例えばスコアが競っていれば、お互いの身体はガチガチで、そのときに普通にサービスを打つのではなく、勝負所にとっておいたサービスを出して勝負をし、ポイントを取るのです。たとえダブルフォールトしたって後悔する必要はありません。レシーバーに予測されたとしてもやりきる。形勢逆転を呼び込むサービス術です。

練習例 5
リターンでドロップショット

 サーバーにセカンドサービスを打ってもらい、レシーバーはドロップショットで返します。サイドアウトをしないように、センターのど真ん中に返球します。

 一発でエースが取れなくてもOKのショット。サーバーが、サービス後に後方にスプリットステップをしていたら、サービスボックスの中まで長い距離を走らせることができ、その後、ロブかパスを打ちます。ドロップショットを嫌がっている相手なら、これをやるべきです。エースになったら結果オーライ。ただし、ネットを越えないと相手がラッキーです。

 ラリーの中でドロップショットを探るのは難しいため、サービスリターンで練習します。ラリーでリズムがとれる人は打てるのですが、ラリーでリズムが変わることが苦手な人は、ドロップショットを打つ行為そのものに緊張感が増してしまうため、ミスになるか甘くなりやすく、しかもおそらく相手にバレバレなので、プレッシャーメイクになり得ません。

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