ルイ・カイエ_最新ダブルス入門_vol.04「強いダブルスと弱いダブルス」_初心者から国際レベルのプレーヤーまで、同じアプローチで上達できる!
ルイ・カイエがカナダで発展させてきた指導法『The Actions Method【アクションズ・メソッド】』。それは“Game based approach”=試合をベースにした指導アプローチで、彼はその重要性を早くから提唱し、世界各国の指導に大きな影響を与えてきた。ITFワークショップ(世界の指導者を対象とした国際テニス連盟主催の研修会)で積極的に講師を務め、各国テニス協会、テニスクラブ、テニスアカデミーのコンサルタントとしても活躍するカイエが、これからテニスマガジン誌上で、日本のすべてのプレーヤーに向けてダブルス指導を行ってくれることになった。ダブルスというゲームをベースに、戦術、技術、ポジショニング、フットワーク、コミュニケーションやメンタルなどをアプローチしていく指導法は、すべてを読み終えたとき、ダブルスにとどまらず『テニス』の基本をしっかり理解することができるだろう。このテキストはきっとあなたのテニスのベースになるに違いない。(取材◎ポール・ファイン、青木和子)【2014年7月号掲載記事、連載vol.04】
雁行陣、平行陣、Iフォーメーション、押さえておくべきテリトリー
今回は「強いダブルスと弱いダブルス」を考えます!
指導◎ルイ・カイエ
Louis Cayer◎元デ杯カナダ代表監督/イギリステニス協会(LTA)ナショナルコーチ
取材◎ポール・ファイン、青木和子 写真◎小山真司、菅原淳、AP イラスト◎サキ大地
今回は強いダブルスと弱いダブルスと題し、みなさんが強いダブルスチームになるための基礎知識を紹介しましょう。
これまでの連載3回分、すべてで使っている言葉「テリトリー」とは「各々のプレーヤーが局面に応じてカバーすべき場所」のことです。もちろん今回もこれがベースとなります。
テリトリーを理解すると、前衛がボールにタッチする確率が高まり、強いダブルスチームになると、20回中12~14回は前衛がボールにタッチすることができます。一方、弱いダブルスチームは前衛がほとんどボールに触ることなく、20回中1、2回程度です。
強いダブルスチームになるためには、まずダブルスを知り、システムを知り、テリトリーの理解を深めることです。
この特集で中心となっているモデルはイギリスのマレー兄弟(2011年楽天ジャパンオープン優勝)。左が弟アンディ(右利き)、右が兄ジェイミー(左利き)
私の指導経験
ダブルスの効果
ダブルスが強くなるとシングルスも強くなるチャンスがある!
選手がダブルスをプレーすることによるダブルス以外の効果
私はこれまで指導してきた選手たちの経験から、ダブルスをプレーし、ダブルスが強くなることによって、シングルスでもトップ選手になるチャンスを得られると考えています。
例えばカナダのベテラン選手であるセバスチャン・ラルーとセバスチャン・ルブランのチームは、彼らが17歳の1991年に地元モントリオールの大会で、グランドスラムのシングルスチャンピオンのイワン・レンドルとブラッド・ギルバートと対戦して破りました。それで彼らは大きな自信を得て、その後の競技人生につなげました。
仮にダブルスでも、実績のあるシングルス選手たちを破ることは、その後のあらゆる試合に影響を与えることになります。ラルーは1999年にUSオープンのダブルスで優勝(パートナーはアメリカのアレックス・オブライエン)、2000年のシドニー五輪では、ダニエル・ネスター(現在41歳でカナダデ杯代表でもある)とのチームで金メダルを獲得しました。
一方で、私はシングルス選手たちももっとダブルスをプレーしてほしいと思っていて、プレーすることによって何かを得られると思います。私がこれまで教えたシングルス選手たち、アンディ・マレーも含まれますが、彼らはネットプレーや攻撃面で非常に役立つと言っています。
この10年、15年のダブルスの変化
私が考える4つのテーマ
1|サービス後、ベースラインにステイ
昨今のルール変化により、試合自体がはるかに短くなったため、シングルス選手たちもだいぶダブルスに目を向けるようになっています。そのため、シングルス選手たちを中心に、サービスを打った後、ベースライン付近にステイするケースが増えています。
2|リターン後、ベースラインにステイ
リターンを打った後、ベースラインにステイするチームも多く見られます。
3|パワー勝負
パワーで勝負するテニスが増えています。チップ&チャージを使うチームがほとんどいなくなりました。
4| Iフォーメーションが定着
10年、15年前なら、ダブルスのスペシャリストだけしか使わなかったI(アイ)フォーメーションをほとんどのチームがマスターしています。シングルス選手同士のチームでもこれを使います。それはつまり、ダブルスの理解が向上したとも言えます。
CHECK
シングルス選手同士のチームも使うIフォーメーション
サーバーと前衛がセンター寄りにポジションし、レシーバーに向かってほぼ縦一列に並んで始まる陣形を、アルファベットのI(アイ)にたとえて「Iフォーメーション」と呼ぶ。サーバーはシングルスに近いサービスポジションからプレーし始め、前衛がどこへ動くのかを隠すことによるポイントの駆け引き。チームは事前に話し合うか、サインプレーをしてプレーの精度を高めている。
1|手前のチームはマレー兄弟。サーバーが兄ジェイミーで、前衛がアンディ。2人はサービスのコースを必ず話し合っているはず。
2|レシーバーは左利きで、センターでフォアハンドリターンを打たせた。このときアンディは最初から(センター方向の)右に動かず、レディポジションから一歩前に出てスプリットステップ。その後ろに兄ジェイミーがいるが彼は心得ていて、左右のどちらへ動くのか一見わからない動きをしている。これによりレシーバーは2人の動きが読めず、ぎりぎりまでコースを迷うことになる。
3|アンディが一歩前進した後、右へずれた。兄ジェイミーは(サイド方向の)左へ。2人とも相手の打球位置からのテリトリーの真ん中にしっかりポジショニングしている。アンディの右側が空いているように見えるが、守るべき範囲を見定めている。それ以上、外側にボールがいったら相手のナイスショットだ。
4|レシーバーがダウン・ザ・ライン方向へ返球し、これは予定通りジェイミーがしっかりカバー。
5|ジェイミーが相手2人の真ん中へボレー。打球する相手の位置に合わせて、マレー兄弟がテリトリーを調整している点も見てほしい。相手の打球位置からの返球可能範囲(テリトリー)を見定め、その真ん中にポジショニング。そして、各々がテリトリーをカバーする。
6|相手の返球が浮いてきて、アンディがボレーを決めた。
強いダブルスとは
強くなりたければ正しいアプローチをしよう
強いダブルスは確率のテニスで、弱いダブルスはショットの質で勝負
もっとも有名な弟子の一人、今も現役トップ選手の41歳ダニエル・ネスター
ダニエル・ネスター(写真右)は、1991年にプロ転向してから41歳の現在まで、第一線で活躍するカナダを代表する選手です。彼はデ杯選手であり(4月に有明で行われたデ杯「日本対カナダ」戦のメンバー)、ダブルスの世界ランキングは12位です。これはすごいことで、あまり他に例はありません。
ボブ&マイクのブライアン兄弟は別として、ネスターはダブルスですべてを手にしています。金メダルとすべてのグランドスラム・タイトル、そしてすべてのマスターズ1000イベント。彼の獲得したタイトルは「83」に上り、歴代第3位です。ブライアン兄弟ももちろん素晴らしい業績を残していますが、彼らは双子で、注目を集める要素を多く持っているため目立つのです。
ダニエルはあまり目立ちませんが、驚異的な競技人生を送っています。41歳とはいえ高いレベルを保っていて、まだ上を目指しています。私は長年彼と時間を過ごしてきましたからよくわかります。彼がなぜ今も現役で、しかもトップレベルに居続けられるのか、その答えの一つが、この特集のダブルスを実践している代表格であるからと考えてよいと思います。
強いダブルスと弱いダブルスを比べると明らかにココが違う!
これはシングルスにも共通することですが、強いダブルスと弱いダブルスの違いはどこにあるかと考えていくと、強いダブルスチームは「確率のテニス」を非常によく理解していて、実践しているということが一番です。そのことはゲームを通して一貫して行われ、例えば通常のファーストサービスの確率は70%ほどをキープし、リターンの確率もかなり高いです。
それに対して弱いダブルスチームは、「ショットの質を意識したテニス」をして試合に勝とうとする傾向があります。
強いダブルスチームは、「ショットの精度」「ポジショニング」、そして「ムーブメント」によって、相手にミスを生じさせて試合に勝とうとします。結果的に、彼らは対戦相手のミスで試合に勝てることを知っています。
それこそ、まさにシングルスでも同じで、ノバク・ジョコビッチやマレーのプレーがそうです。対戦相手がビッグショットを持っていたとしても、彼らは素晴らしいコートカバー能力(ムーブメント、ポジショニング)でそれを封じて、逆に相手に大きなプレッシャーを与えます。上位選手になるほど、大きな武器で勝負するのではなく、2人で攻守に安定感があるプレーをして、ベーシックなショットで相手のはるか上をいくのです。すなわち「確率のテニス」こそ強くなるために非常に重要です。
❌ 弱いダブルスはレシーバーが打球する前に前衛が動く
コート奥側にいる相手チームの前衛は、サービスがセンターに入るとレシーバーが打球する前にすでにセンター方向へ動き始めているのがわかる。そのためレシーバーのアンディは迷うことなく、オープンコートにフォアハンドのダウン・ザ・ラインを決めた。
⭕️ 強いダブルスはレシーバーが打球する直前まで左右の動きは見せない
コート奥側がマレー兄弟で、前衛の兄ジェイミーに注目。2人で計画したサービスが入ったあと、レシーバーの打球位置から見たテリトリーの真ん中にしっかりポジショニング。ジェイミーはそのテリトリーをまっすぐ前進してスプリットステップしている。これにより相手がリターンを打てる場所を狭めることができる。
ダブルスの指導
チームが強くなるためのアプローチの仕方
ダブルスでは次の3つを教える個人の動き、チームの動き、そして応用
個人とチームを指導しながらダブルスの慣習的行為も指導していくことが重要
私がダブルスを教えるのが好きな理由は、「チームを教える」ことと、「2人の個人を教える」ことが楽しいからです。
ダブルスでは次の3つのことを教える必要があります。「個人の動き」と「チームの動き」、そして「その応用」(ルイ氏は「ディペンズ(Depends)」という言葉を多く使った。「状況次第」「時と場合による」という意味)です。
最初は個人に対して、攻撃時における各々の役割、パターン、ムーブメントを教える必要があります。次に、その2人の個人をチームとして教えます。
それと同時に、こういう指導も必要になります。ダブルスチームの慣習的行為を教えるのです。私が指導しているイギリスナショナルチームはこれを行うことを約束していて、あのアンディ・マレーもやっています。マレーはシングルスではときどき怠そうな態度を見せたりするのですが、ダブルスでは常にポジティブな態度を見せていることにお気づきですか? 毎ポイント必ずパートナーに近づき、2人でコートを歩いてどのようにポイントを進めるか話し合い、そして、レディポジションにつくときは「やるぞ!」という気持ちでジャンプして駆け出していきます。
それは私たちが決めたルールだからやるということもあるのですが、それをすることでチームがポジティブな気持ちでいられ、チームの結束力が強まり、そして何より、チームでポイントを獲得するために必要な行動であることを選手たちが理解しているからやるのです。
↓2人で話し合ったサービスに対して、各々がテリトリー(相手の返球可能範囲)をしっかり守る。どこまでが自分のボールかをはっきりさせているので迷わず、協力してプレーできる。
どうしたらチームは強くなるのか?
「チームの戦術」「慣習的行為」「メンタル面」などからアプローチすることで、「技術」「戦術」「メンタル」などが向上し、さらに「2人の結束」も強まる
危機的局面を乗り越える、または立ち向かえるチームのつくり方
それと同時に、危機を脱出する戦術も教えていきます。
例えば、もしも私がミスをしたら、パートナーは私を救うためにシェアしていたテリトリー(各々がカバーすべき場所)を超えることもします。一方で、もしもあなたがミスをしたら、私はあなたが守るべきテリトリーに踏み込む必要が生じるのです。
つまり、ミスをしたときにそれまでと同じテリトリーにステイしていては、テリトリーは万全ではなく、個々が孤立して強いチームにはなれません。強いチームになるためには、テリトリーをよく理解した上で、状況によってテリトリーを超える判断ができなければいけないのです。「ディペンズ(Depends)」、時と場合によって「こうしなければいけない」ではなく「こうして応用しよう」というようになってほしいのです。
危機的局面に立ち向かえるチームをつくるためには、「チームの戦術」「慣習的行為」「メンタル面」などからアプローチし、これらを並行して行っていくことによって「技術」「戦術」「メンタル」などが向上し、さらに「2人の結束」も強まります。
2人が結束しているチームほど、2人が勝手にプレーしているチームと比べてプレッシャーを回避する方法を知っているのは、このようなトレーニングからです。2人がダブルスというものを理解しているからこそ助け合えます。
私は、そういう2人で行うテニス(ダブルス)を教えることが楽しく、それを教える複雑さもまた楽しいと感じています。
ADVICE
危機的局面ではテリトリーを超える判断も必要
1|兄ジェイミー(手前右側)が苦しい体勢でバックハンド・ローボレーを返球。
2|クロスに角度がついて、相手がサイドラインへ移動して返球。ジェイミーはテリトリーの変更にともない、センター付近まで大きく移動しようとしている。弟アンディ(前衛左側)もサイドライン方向へ移動。
3|アンディがダウン・ザ・ラインをカバーするため、かなりサイド寄りとなったことで、ジェイミーが広がってしまったテリトリーをカバー。相手はその2人の真ん中を狙うが、アンディもジェイミーもテリトリーをよく理解しているので真ん中の壁も厚く、抜かれない。
基本ポジション
無意識に行えるまで体に染み込ませる
個人、チーム、相手を知って確率の高いプレーを選ぶ
相手が雁行陣、平行陣のとき、ファーストボレーはどこへ打つべきか
選手は基本的に独自のパターンを持っていて、確率の高いボレーを使います。
例えば、雁行陣の相手に対してサーブ&ボレーをして平行陣をとる場合(写真下)、サーバーはファーストボレーをどこへ打つべきでしょうか? 相手前衛がいますから、相手後衛がいるクロスへ打つと答える選手が多いと思います。
次に、平行陣(2人とも後衛)の相手に対してサーブ&ボレーをして平行陣(2人とも前衛)をとる場合(左ページ写真)、サーバーはファーストボレーをどこへ打つべきでしょうか? 実際にこういうケースが増えていますので考えてみてください。
相手が平行陣でベースラインにステイしているなら、センターにボレーを打ちます。クロスの相手をセンターへ寄せてバックハンドを打たせます(4)。テリトリーの考え方に基づけば、相手にセンターでバックハンドを打たせるとダウン・ザ・ラインの選択肢がほとんどなくなります(約80%の確率でないと見ています)。つまりテリトリーを狭められ、攻撃力を弱められるのです。
雁行陣 対 平行陣
⭕️ 強いダブルス
ファーストボレーをクロスへ打つが、相手後衛に2回以上フォアハンドを連続して打たせない(サイドとセンターへボレーを散らす)。センターでバックハンドを打たせられれば、だいたい80%の確率でダウン・ザ・ラインを塞げるので、返球可能範囲を狭められ、次のショットの予測につなげられる。
❌ 弱いダブルス
ファーストボレーをクロスへ打つが、相手後衛にフォアハンドを2回打たせることで攻撃されてしまう。相手はフォアハンドが得意な場合が多く、ほとんど動かなくてよい状況だからダウン・ザ・ラインを正確に狙いやすい。
CHECK
ネットの白帯を狙って低い軌道のボレーを打つ
ファーストボレーでラケットがネットよりも低い位置にある場合、そこからボレーを深く打つのは難しいです。なぜなら深く打とうとするとボール軌道が高くなり、ボールが浮いたり、相手コートでバウンドした後に高く弾むんだりして、相手のポーチにつかまったり攻撃されやすくなります。これは「ファーストボレーは深く打たなければいけない」と指導された選手がよくおかす間違いです
ファーストボレーは、ネットが低いセンター付近の白帯上を狙って低い軌道のボレーを打ちます。そのボレーはたとえ浅くてもバウンド後にほとんど弾まないので、相手は攻撃的に打てないばかりか、低い打点から上へと持ち上げるように打たなければならないのでボールが浮きやすくなり、今度はこちらにポーチのチャンスが生まれるのです。このようなこともダブルスの基本として覚えておきましょう。
平行陣 対 平行陣
⭕️ 強いダブルス
ファーストボレーをセンターへ打って相手にバックハンドで打たせると、だいたい80%の確率でダウン・ザ・ラインを塞げるので、返球可能範囲を狭められ、次のショットの予測につなげられる。
❌ 弱いダブルス
ファーストボレーをワイドに打ってクロスの選手にフォアハンドを打たせると、ダウン・ザ・ライン、センター、アングル、ロブという多くの選択肢を与えることになる。
ADVICE
ファーストボレーを相手がバックボレーで打ったら…
相手がファーストボレーをバックボレーで打ったら、私は「ポーチに出なさい!」と教えています。バックハンド・ローボレーをクロスへコントロールするには、サイドスピンをかける技術が必要で、ボールが浮きやすいショットです。一方でこのことから、ファーストボレーはフォアボレーで打つのが原則とも言えます。
バックボレー|クロスへ打つにはサイドスピンが必要
フォアボレー|ファーストボレーはフォアボレーで打つのが原則
ダブルスの戦術
何をやるか決まっていれば自信をもってプレーできる
試合中に「どこに打とうか」探している選手はミスをおかす!
陣形に応じた戦術や技術を体に染み込ませる
プレー展開は事前に決めておく
陣形に応じた戦術は様々にあり、その中で技術は無意識で使われているでしょう。しかし、戦術もネットについたら考えている時間はなく、体が自然と反応するように染み込ませていくべきです。
強いストロークを打ってくる相手に対しては、ボールがくる前に打つ方向やショットの種類を判断しておく必要があります。試合中に「どこにボレーを打とうか?」と探している選手は、ためらいや判断の遅れ、間違った判断により、多くのアンフォーストエラーをおかすでしょう。だから、自分たちのポジションと相手のポジションの関係を知り、どこからボールがきて、どこに打てば相手は取りづらいかなどのパターンを知ること、システムを覚えることが問題を解決してくれます。
ただし、ほとんどのパターンは自然と反応できるように体に染み込ませるべきですが、ときに特別なパターンをプレーすることも例外としてあります。
雁行陣だけでなく、
もっとダブルスを理解しシステムを知ってほしい
典型的なダブルスの陣形が雁行陣です。ラリーのボールに合わせて前衛がポーチに出られるようにポジショニングをするやり方は、ほとんどのテニスクラブのコーチが必ず生徒たちに教えます。だから、ある程度のレベルの選手になっても、これを基準にダブルスをプレーする傾向があります。
私はもっとダブルスを知り、システムを知ってほしいと思っています。テリトリーとポジショニングを理解していけば、様々な陣形の様々な戦術で個々が自信をもってプレーできるようになります。
そうするとまず雁行陣を覚えて、その雁行陣を強くしていくというやり方ではなく、どのレベルにおいても共通のダブルス、テリトリー、ポジショニングを覚えることが強くなるということだとわかってきます。
強いダブルスはやるべきことがはっきりしている!
1|前衛はサービスが入るまでほとんど動かない
2|テリトリーを一歩前進してスプリットステップ
3|サービスが入ってレシーバーがボールを打つ直前にボールの方向へ動く。この場合、軽く一歩程度
4|レシーバーの打球位置を見て、テリトリーの真ん中に構える
5|ダウン・ザ・ラインを狙われてもテリトリーの範囲はカバーできる
CHECK
前衛のテリトリー、実はこれくらいしかない!
雁行陣の前衛(写真手前は弟アンディ)のテリトリーを見てみましょう。案外狭いものです。レシーバーがダウン・ザ・ラインを狙うかもしれない、アングルを狙うかもしれないと考えてすべてカバーしようとしないで、あなたはあなたの、パートナーはパートナーのテリトリーを守ればいいのです。その上で2人はどこからボールがきて、どこに打てば相手は取りづらいかなどを知って、システムを覚えるのです。
ちなみにテリトリーをしっかりカバーしていれば、相手がダウン・ザ・ラインを狙ってきてもそれがピタリと決まる確率はだいたい10本中1、2本。それくらいのもので、もしもそれが決まったとしたら、相手のナイスショット。それよりもいかに他の8、9本のショットをポイントに結びつけるか。テリトリーをしっかりカバーしてボレーアタックすることが重要です。
CHECK
ワイドサービスに対して前衛はワイドにズレすぎない
ボールがワイドに入ると、それに合わせて前衛がいきなりワイド方向にポジションをずらすのをよく見ますが、ボールの曲がりに惑わされず、相手が打球する場所からのテリトリーをしっかり守ることに集中します。右の写真を見ての通り、前衛はそれほど動かなくてよいのです。
ダブルスチェック
⭕️❌チェック 心当たりがあれば生かしてほしい
強いダブルス と 弱いダブルス、こんなに違いがある!
あなたはどっち?
弱いダブルス
1|全部をカバーしようとすると実はオープンスペースができてしまう。どこまでが自分の取るべきボールかよくわかっていないから隙だらけ。
2|いきあたりばったりのポーチボレーはうまくいかず、パートナーも慌てるばかり。
3|相手に行動を読まれている。
4|コートに対して正面を向いて、半面の真ん中をカバーするためオープンコートができる。
5|スタート地点からボールの方向へ動くため、相手はオープンコートが見えて狙いやすい。また、ステップが細かすぎることで慌ただしく、ボレーのタイミングが合わない。
6|相手がボールを打つ前にポーチに動き出してしまうため、動きの逆を狙われる。
7|スイングが大きいため甘いボールはタイミングが合わずに決めきれず、速いボールに対しては振り遅れてしまう。
8|相手に対してわざと動いてミスを誘おうとするが、その裏でどのようにポイントをとるか準備がないことから、返球されたときに対応できない。
強いダブルス
1|それぞれがテリトリーを理解していて、どこまでが自分の取るべきボールかはっきりさせている。2人が話し合いかサインプレーのもと、テリトリーの準備をしてポイント獲得に臨んでいる。
2|ワイド、センター、ボディサービスに対するポーチの場所の確認ができている。
3|相手の体勢、リアクションなどを見て読む。
4|常に相手に対して正面を向いて、フォア、バック、ボディへのボレー対応ができるようにしている。
5|スタート地点から一歩前に出てから左右か前に動く。その際、細かいステップは必要ない(無駄な動きが多いから)。この動きをすると相手は手の内が読めない。
6|ポーチのタイミングはボールが弾んだあと。
7|甘いボールは叩きつけて決める。速いボールは返球ミスをすることはあっても遅れることはないようにコンパクトにさばく。
8|どのようにポイントを取るか計画をもった上で、前衛はわざと相手に動きを見せてミスをさせるポイントも増やす。
テリトリーを理解していると、どこまでが自分のボールか、どのボールが自分のボールかわかるのでポーチに出やすくなる。事前に計画しておくこともでき、また計画とは違う展開になっても対応できる。
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