秋田史帆がトップシードの日比野菜緒を下して「3度目の正直」 [三菱全日本テニス選手権95th]

秋田は3度目の決勝でうれしい初優勝

5日間の短縮日程、男女シングルスのみで無観客開催された「三菱全日本テニス選手権95th」の大会最終日となる5日目。前日までの室内ハードコートから有明コロシアムに舞台を移し、ボールパーソンや線審もフルにつけられた中で男女シングルスの決勝が行われた。

タイトな第1セットから流れが一転
 女子シングルス決勝は思わぬ展開を見せた。第1セットはトップシードの日比野菜緒(ブラス)が7-5で奪ったものの、第2セットから秋田史帆(橋本総業ホールディングス)が逆襲。6-0 6-0の大逆転で30歳にして初の全日本優勝を飾った。第1セットは引き締まったソリッドな展開。互いに緊張感からわずかなミスは散見されたが、第11ゲームまでサービスキープが続いた。迎えた第12ゲーム、日比野が集中力を高める。手にした最初のブレークポイントをしっかりとモノにして、第1セットを奪った。

 だが、秋田はセットダウンを喫すると瞬時にねじを巻き直した。日比野の基本戦術はフォアの高いループをまじえながら相手を揺さぶり、得意のバックハンドの展開で仕掛けるというもの。秋田は「ループがきても下がらない。(日比野が得意な)バックの展開になっても、自分のフォアで攻める」という対策を頭の中で確認しながら、第2セットへ臨んでいた。

 一方、日比野は「どうしても欲しい」という全日本タイトルがもたらす緊張をコントロールできずにいた。思うようにラケットが振りきれず、ボールが飛んでいかない。浅くなったところを秋田に踏み込まれ、フォアのアタックを食らう。緊張から逃れたいと思うあまりの無理なハードヒットがミスにつながる。持ち味であるしぶとさと組み立ての妙は、一気に失われていった。


日比野は全日本タイトルのプレッシャーから逃れられず

 第2セットから6-0 6-0というスコアも、この日に限れば必然だった。秋田は相手の揺さぶりが少しでも甘くなれば回り込みフォアで逆クロスとストレートにハードショットをたたき込み、日比野がテンポを落とすべくセンターにボールを集めても、やはりフォアで左右のコーナーにアタックを仕掛ける。

 世界ランク71位の日本女子ナンバー2が「ファイナルセットはできることはやった。でもほとんど相手のミスがなくて、厳しいなと。秋田選手のプレーに拍手です」とお手上げ状態。最後はやはりフォアの逆クロス気味のアタックで日比野のラケットを弾き、勝負が決した。

日比野から得た刺激
 30歳の秋田と25歳の日比野は、木曽川ローンテニスクラブで先輩・後輩の間柄。日比野はセレモニーのスピーチで「史帆ちゃん」と語りかけ、「小さいときからずっとあこがれていて、全日本決勝の舞台で戦えてうれしかった。やっぱり先輩は強かったです」と涙声であこがれの先輩を称えた。


1時間44分の激闘は先輩・秋田に軍配

 秋田にとっては3度目の決勝の舞台で、ついに念願の初優勝。だが、秋田もスピーチではまず日比野に語り掛けた。「菜緒と全日本の決勝で称えたのはうれしい。そして大会に出てくれてありがとう。みんなが菜緒と戦いたい、戦うためにプレーできた」。WTAツアーを舞台に活躍を続ける日比野の存在が、女子シングルスのレベルを一段階引き上げたことは間違いないだろう。

 30歳にして「3度目の正直」を果たした秋田だが、まだまだここからさらに上を見据える。「今度はWTAツアーやグランドスラムで彼女と戦えるように、同じ舞台に立てるように頑張りたい」。日比野と戦い、もっとも刺激を受けたのは、秋田だったのかもしれない。それが全日本の頂点に立つための原動力となったはずだ。

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取材◎杉浦多夢 写真◎菅原 淳

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