スランプについて_メンタル・タフネスAcademy

イメージ写真(Getty Images)

いつも負けている選手たちは、まだ試合の途中であるにもかかわらず、「今日も負ける」「また負ける」と勝手に思い込んでしまうものです。あなたにも経験がありませんか?

高妻容一のメンタル・タフネス Academy
“折れないココロ”のつくり方

連載第65回「スランプについて」

こうづま・よういち◎1955年5月10日、宮崎県生まれ。東海大学体育学部教授。研究分野は、スポーツ心理学・応用スポーツ心理学・競技力向上のメンタルトレーニング。体育会テニス部をはじめ、全国数百のスポーツチーム、またはプロ競技選手のメンタルトレーニングアドバイザーを務める。『基礎から学ぶ!メンタルトレーニング』(小社)など著書&DVD多数

集中力とは?

 前号は「キレる」という自分の気持ちをコントロールできなくなったことから、アメリカのオリンピック選手たちが国際舞台などの大舞台で実力を発揮するためのオリンピック選手用のマニュアルを紹介しました。今回は選手がスランプに陥ると、同じように自分の気持ちをコントロールできなくなることについて話を進めていきましょう。

 スポーツ選手は、いつも調子がよい状態ということはなかなかないものです。技術面や体力面ができ上がってくれば、試合で実力を発揮するためには、メンタル面の要因が重要になってきます。

 そこで、いつも調子がいいという状態をいかにしてつくるかとなれば、メンタルトレーニングを実施し、実力を発揮するための強化、準備、トレーニングが必要となります。特に、集中力をどれだけ試合で発揮できるかが重要であり、調子の波の原因が集中力であるとスポーツ心理学の研究では報告されています。

 この集中力を使いこなせない選手は、頭の中が「Mind Full(頭の中がいっぱい)」状態になります。これは、頭の中がいろいろな邪念や雑念でいっぱいの状態のことを言います。つまり、自分のやるべきプレーに集中できていない状態です。

 また、選手が「スランプ」に陥ると、頭の中は悪い考えばかりが浮かび、邪念や雑念でいっぱいの「Mind Full」になりますし、悪い方向、悪い方向へと意識が行き、負の連鎖状態になっていきます。このような負の連鎖が起こると、いつも頭の中で負けることをイメージしながらプレーをするようになります。

 みなさんが試合で負け続けているときのことを思い出してください。何試合も負けが続くと泥沼に足を踏み入れたように、もがき苦しんで、何をしても勝てない、よいプレーが続かない、連敗の魔物に取りつかれたようになってしまいます。練習もしている、技術も高まった、体力も問題ないのに、なぜか試合で勝てないというスランプの状態を経験したことはありませんか?

 スランプに陥ると失敗というイメージを強く考えながらプレーをしてしまいます。何をしてもミスや失敗というマイナスのイメージがどんどん出てきて、また負ける、また失敗するなどという考えが頭をよぎり、勝てない、勝つことは不可能という、一種の恐怖感まで持つようになります。まさにイップス・パフォーマンス恐怖症の状況になります。

 こんなときは頭の中がマイナス思考であるために、普段ではどうってこともない、審判のミスジャッジ、ちょっとしたミス、相手のよいプレー、監督や周りの人の声や言葉などに敏感に反応してしまうのです。

 例えば、テニスの試合で最終セット5-2でリードすると必ず逆転されるとか、決勝までは順調に勝ち上がれるのに、決勝になるとなぜか負けてしまうという選手を見たことはありませんか?

 このような状態が続くと、自分はこうなると必ず負けるというジンクスを自分でつくってしまう選手がいるのです。

 高校生に多いのが、春の大会では優勝できるのに夏の本番(もっとも大切な試合)では勝ち上がれないチームや選手です。スポーツ界では、このようなジンクスが意外とあるものなのです。

 「この試合会場では勝てない」「赤い勝負パンツをはかないと勝てない」「この相手にはなぜか勝てない」など、自分自身の気持ちの中でジンクスをつくり、自分で自分のプレーにブレーキをかけてしまうのです。

 選手は、どこでこんなマイナスのイメージを学び、その負の連鎖という泥沼に足を踏み入れるようになったのでしょうか?このようなジンクスは非論理的な考え方であり、その考え方がスランプを引き起こしていませんか?

 頭の中のマイナス思考や恐怖心などを克服するには、どうすればいいのかということになります。簡単に言えばプラス思考になり、自信をもってプレーができるようになればいいということなのですが、口で言って、言われて、すぐにプラス思考になり、自信を持てるかというと、それは難しいということになります。

 一方、「Mindful」「Mindfulness」という状態では、頭の中がシンプルで、雑念のない自分のやるべきプレーに意識や注意が集中している状態です。これの究極が「ゾーン」といわれる心理・集中状態です。メンタルトレーニングは、このような理想的な心理(集中)状態であるゾーンをつくるためのトレーニングでもあります。



あなたはどちらのタイプ?

  選手には、ふたつのタイプ・方向性があると言われています。ひとつは自分のパフォーマンスを高めていくタイプで、もうひとつは自分のパフォーマンスを低下させるタイプです。

 あなたの考え方がプラス思考であれば、スランプ、ピンチ、逆境を味方にでき、その状況を楽しむことができます。自分の有利不利にかかわらず、頭の中はポジティブな成功イメージがどんどんわいてくるようなタイプ、考え方ができる選手がいます。

 例えば、あなたにとって大きな意味を持つ試合があるとしましょう。たぶん、ほとんどの選手が緊張をし、プレッシャーを感じると思います。そこで、ある選手はこの試合に対して、不安や心配をし、負けたらどうしよう、これで終わってしまうかもなどとマイナス思考になります。

 しかし、ある選手は「よーし、これまで自分がやってきた練習の成果を試す最高の舞台だ!」と考えてワクワクし、試合が待ち遠しくてたまりません。

 あなたは、どちらのタイプですか?ここでのあなたの選択、考え方が、その試合の勝負を左右すると思いませんか? ある状況をプラス思考でとらえるか、マイナス思考でとらえるかで、あなたの気持ちも変わりますし、あなたのプレーや試合の結果も変わるのです。

 今回紹介したスランプも、これは自分の壁を破るチャンスが来た、ここでひと工夫をしてこの壁を乗り越えれば、もうひとつ上の段階に登ることができると、自分のレベルアップのチャンスだと考えられるようになりましょう。

 自分にはできない、もう無理だなどと悩んで悩んで落ち込んで、ますますダメになる選手ではいけません。あなたはどちらになりたいですか? この選択をする心理状態をつくるのがメンタルトレーニングです。


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