活動家でありチャンピオン、AP通信が選ぶ『年間最優秀女子アスリート賞』に大坂なおみ

写真はUSオープン女子シングルス表彰式での大坂なおみ(日清食品)(Getty Images)

他のほとんどすべての世界と同じように新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのためにテニス界が休止を強いられた中、大坂なおみ(日清食品)は読書や考えるための時間を見い出した。そしてUSオープン優勝によりグランドスラム大会で3つ目のタイトルを獲得した一方で、彼女はまた人種差別と警察による暴力に反対する発言をしたことで際立っていた。

 テニスコートでの成功だけでなくコート外での活動でも注目に値した大坂は日曜日、編集者や記者たちの投票の結果によりAP通信の選ぶ『年間最優秀女子アスリート賞』の栄誉に輝いた。

「1年の大部分を家族から離れて過ごすのは辛かったですが、他の人々と比べればそれは苦労のうちには入りません。COVID-19に苦しめられる人々、多くの失業者やメンタル的問題を生んだ経済的および社会的影響に関するニュースを目にするのは悲しいことでした。多くの人々にとって、本当に厳しい年でした」と大坂はEメールによるインタビューの中で述べた。

「そして夏にジョージ・フロイドさん、ブレオナ・テイラーさん、ジェイコブ・ブレイクさんの事件(ほんの数例ですが)のような警察の不当行為を目にし、私は打ちひしがれました。私はUSオープン優勝を誇りに思いますが、それ以上に人々が本当に重要な問題について議論することを促したという事実をうれしく思っています」

 1位投票で35票のうち18票を得た大坂は、合計71ポイントを獲得した。WNBA(北米女子プロバスケットボールリーグ)の優勝決定戦で最優秀選手賞に選ばれたブレアナ・スチュワート(アメリカ)は1位投票9票を得て60ポイントを獲得してが2位となり、ヴァンダービルト大学でサッカーチームのゴールキーパーながらフットボールチームでキッカーとしてもプレーするサラ・フラー(アメリカ)が1位投票1票の24ポイントでそれに続いた。

 男子の年間最優秀アスリートはNBAロサンゼルス・レイカーズのレブロン・ジェームズ(アメリカ)が4度目の受賞を果たし、プロゴルファーのタイガー・ウッズ(アメリカ)と自転車の元プロロードレース選手であるランス・アームストロング(アメリカ)が持つ男子の最多記録に並んだ。

 グランドスラム大会のシングルス優勝歴12回を誇るレジェンドで何10年にも渡って社会的活動の先駆者だったビリー ジーン・キング(アメリカ)は大坂について、「自身を女子テニスのみならずすべてのスポーツのリーダーであり、社会に変化をもたらすための影響力を持つ人物として位置付けた」と称えた。

「彼女はスポーツのパフォーマンスで卓越し、その立場を活用してより大きな舞台でのスポーツ外の試みで成功するという難しい任務を無事に成し遂げました」とキング氏はAP通信に話した。

「彼女は社会的正義に関する議論に火をつけました。それによってもたらされたものはテニスより大きく、スポーツよりも膨大なものです。そうすることで彼女は、世界に変化をもたらすために持てる才能を活用したいと望むすべての者たちの水準を引き上げたのです」

 パンデミックにより短縮された今季――プロツアーは5ヵ月間中断されていた――に16勝3敗という成績をおさめた大坂は、世界ランク3位として2020年を終えた。彼女のハイライトは、USオープン優勝への進撃を含む11連勝をマークした8月と9月に集約されていた。

 ハイチ人の父と日本人の母を持つ大坂がNBAなど他のアスリートに続いて警官によるブレイクさんの銃撃事件に抗議するため、準決勝でプレーしないと宣言したのはUSオープン前哨戦の「ウェスタン&サザン・オープン」でのことだった。

「明らかに、本当に多くの話すべき問題があります。これについては私自身の生い立ちのため、特に共感を覚えました。またテニスツアーが休止している間、私は人生で初めてじっくりとニュースを見たり読んだりすることに長い時間を費やすことができました。アメリカではこの夏に緊張感が高まり、沸騰点にまで至っていました」と大坂は語った。「それは私にとって、声を大にするのに適した瞬間だったのです」。

 彼女の行動に導かれ、大会は丸一日中断する決断を下した。

「彼女の積極的な行動が、我々個人やスポーツリーグがいかにして団結してインパクトを与えることができるかに光を当てたのです」とWTA(女子テニス協会)の会長兼最高経営責任者(CEO)であるスティーブ・サイモン氏は賛辞を送った。

「彼女は素晴らしいテニスプレーヤーであるだけでなく、アスリートが自身や競技よりも大きい目的のためにどのように自分たちの立場を使うチャンスを擁しているかを示して見せたのです。彼女の行動はインスピレーションを与えるものにほかならず、それゆえ彼女はその功績を認識されるに値するのです」

 USオープン中の大坂は不当な暴行の犠牲者となった黒人たちへの注目を促すため、フロイドさん、テイラーさん、タミル・ライスさん、エライジャ・マクレインさん、トレイボン・マーティンさん、アマド・オーブリーさん、フィランド・カスティールさんらの名前が書かれたマスクを着けて各試合に登場した。

「正直に言って、私は他の人たちが私の行動についてどう思うのか考えて足を止めることはありませんでした。自分が心の中で正しいと思っていることをするのに、他の人々の意見が邪魔することはありませんでした」と大坂は明かした。「コリン(アメリカン フットボール選手のコリン・キャパニック)とレブロンの力強い言葉は間違いなく私にポジティブな影響を与え、私自身の信念に力をもたらしてくれました」。

 23歳の大坂は2021年に目を向け、「ハードワークを積み、よい行いをし、率直な意見を口にし、親切であること」という目標を挙げた。彼女の生まれ故郷である日本は、延期されたオリンピックを2021年に東京で開催することを予定している。

「非常に厳しい年(2020年)を祝うため、10年以上に渡ってこの機会を待ち、そのためにトレーニングを積んできた他のアスリートたちと交わることを私はもっとも楽しみにしています。それが日本で起こるということが、この五輪を一層特別なものにしてくれるのです」

「日本は文化、歴史、そして美しさに満ちた特別で美しい国です。この上なくワクワクしています」と大坂は締めくくった。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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