ラケット破壊後に立ち直ったジョコビッチがズベレフを倒す「内なる悪魔との戦いがある」 [オーストラリアン・オープン]
ノバク・ジョコビッチ(セルビア)はラケットを叩きつけ、その破片は宙に舞った。のちに彼は、可能な限り哀れな様子で青いコートの後方にどすんと体を投げ出した。
彼は自分自身や他のビッグ3のメンバーを押しのけようとしている若手選手のひとりであるアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)に対し、最初のセットを落とした。セットオールに追いついたジョコビッチは第3セットで0-3とリードされ、やはり0-3とリードされた第4セットではセットポイントにさえ直面した。
とはいえ我々がここで話題にしているのは、究極の競技者であるジョコビッチなのだ。そしてこれは、彼がもっとも得意としているオーストラリアン・オープンでもあった。そんな訳で最終的に第1シードのジョコビッチは劣勢を克服して勝利を引き寄せ、第6シードのズベレフを6-7(6) 6-2 6-4 7-6(6)で倒してメルボルン・パークで9度目となる準決勝進出を果たしたのだった。
この試合でのジョコビッチはズベレフの21本を上回る23本のサービスエースを決め、最後のポイントはセンターへのエースで締めくくった。
「ラケットを折ったあと、僕は集中力を取り戻したんだ。それから状況が少し傾き、僕にとっていい方向に流れを変え始めたよ」
第3セット1-3の場面でリターンをネットにかけたあとにラケットをコートに3度叩きつけて破壊てしまったことについて、ジョコビッチはロッド・レーバー・アリーナでのオンコートインタビューで次のように説明した。
「それは僕にとって苦痛や不安を放出する方法だったが、このような気分転換の方法はお薦めできない。もちろん僕はそれを誇りには思わないよ。だけど選手というものは様々な感情を経験し、内なる戦いを通り抜けるものなんだ。もちろん皆がそれぞれ違ってはいるし、僕の場合は戦わなければならない自分自身の悪魔がいるんだよ」
ジョコビッチは自身の持つ男子の最多記録を更新する9度目のオーストラリアン・オープン制覇に近づきつつある。もし実現すれば彼のグランドスラム大会での獲得タイトル数は「18」となり、男子の最多記録を持つロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)の「20」にまた一歩迫るのだ。
ともに腹部に問題を抱えていたジョコビッチとズベレフは、それぞれ胴体にテーピングを施していた。ジョコビッチは第27シードのテイラー・フリッツ(アメリカ)に対する3回戦で脇腹を痛め、オフの日には通常通りの練習ができなかったと明かした。
今大会では何人かの主要選手が故障を抱えており、ジョコビッチはその大きな理由についてこの国の厳格な新型コロナウイルス(COVID-19)の規則のために入国時に2週間の検疫を課されたプレーヤーたちの特殊な状況にあると考えている。
「我々が目にしているものは普通じゃない。それは我々が慣れ親しんできたものじゃない。トッププレーヤーは通常、もっとも体のコンディションがいいものだ」と世界ランク1位のジョコビッチはコメントした。
木曜日のナイトセッションで行われる準決勝で、ジョコビッチは今大会最大のサプライズと顔を合わせることになる。27歳のアスラン・カラツェフ(ロシア)はカタール・ドーハで行われた予選で3試合を勝ち抜き初のグランドスラム本戦入りを果たしたが、今大会で勝ち進むまでツアーレベルの本戦では3勝しか挙げたことがなかった。
「正直に言うと、このオーストラリアン・オープン以前に彼のプレーを見たことはなかった」とジョコビッチは打ち明けた。
カラツェフが火曜日に第18シードのグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)を2-6 6-4 6-1 6-2で倒すまで、初めてのグランドスラム本戦でベスト4に進んだ選手はひとりもいなかった。ディミトロフが靴紐を結ぶことさえ苦労した背中の筋肉のケイレンで通常通りにプレーすることができていなかったことを差し引いたとしても、この快挙は称賛に値する。
ディミトロフは最後までコートに残ったが、月曜日には腹筋のケガを理由に第9シードのマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)が試合前に棄権し、第24シードのキャスパー・ルード(ノルウェー)は4回戦の第2セット終了後にプレー続行を断念した。
2020年USオープン準優勝者で1年前のメルボルンではベスト4だったズベレフは、またも最大の舞台でトップ選手に対して問題を抱えることになった。グランドスラム大会でトップ10選手に対して8戦全敗を喫しているズベレフは、それ以外のATPツアー大会では25勝29敗の戦績を残している。(C)AP(テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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