隔離明けでケガ人続出のオーストラリアン・オープン、選手たちは明かすことも隠すこともできるが…?

写真は男子シングルス3回戦でのノバク・ジョコビッチ(セルビア)(Getty Images)

今年最初のグランドスラム大会となる「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・ビクトリア州メルボルン/本戦2月8~21日/ハードコート)の男子シングルス3回戦を辛くも勝ち上がった直後、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)は試合中に足を滑らせて痛めた脇腹のことついて、真実を言っているように見えていた。

 その夜に次の試合の準備はできているかと聞かれ、ジョコビッチは「間違いなく、筋肉の肉離れだと分かっている。だから2日以内に回復できるか分からない。コートに立つことができるかどうか分からない」と答えた。

 しかし、彼はコートに現れた。そして2日後にロッド・レーバー・アリーナに戻ってきただけでなく、脇腹に煩わしいバンデージを施した状態で準々決勝に進出するには十分なプレーを見せた。試合後に記者たちがケガについて尋ねたとき、ジョコビッチは「何かは分かっている。でも今そのことについて話したくない」と言って口をつぐんだ。

 特定のチームスポーツとは違い、テニスのグランドスラム大会はプレーする前にケガを隠すか明かすかは個々のプレーヤーに任せている。率直に話す選手もいれば、言うことがコロコロ変わる選手もいる。

 2019年USオープン準優勝者で今大会第3シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)は、「ケガが何かによるよ」と言った。フィットネスがカギとなるスポーツの世界でそれは重要なことであり、ケガのために試合途中でリタイアしたり試合前に棄権したりするプレーヤーを目にするというのは異常なことではない。

 月曜日にも第7シードのアンドレイ・ルブレフ(ロシア)との4回戦で第24シードのキャスパー・ルード(ノルウェー)が第2セット終了後にリタイアするという一例があったし、第9シードのマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)は腹筋のケガを理由に第5シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)に対する4回戦を前に棄権した。

 プレーヤーとコーチはメディアに何を明かすことも要求されておらず、グランドスラム大会のルールはシングルスマッチを試合前に棄権したり試合の途中でリタイアする選手は例外なく、大会医師の診察を受けなければならないことになっている。そうすればその理由が何であれ、賞金が払われる前に真実かどうか調べることができるからだ。

 次の対戦相手に有益な情報を与えないようにするため、あえて明かさない選手たちもいる。それとは逆に、そんなことはしないと主張する選手たちもいる。

 ATPカップでスペイン代表チームに入りながらも試合に出なかったラファエル・ナダル(スペイン)は、「隠すのは難しいよ。隠したかったとしても、ある時点で質問に答えることになるからね。正直に言って、そういう“ゲーム”はプレーしたくないな」と語った。

 確かにそうだろう。しかしナダルは2016年フレンチ・オープンで突然青いリストバンドをして記者会見に現れ、大会から棄権すると発表するまで手首のケガのことを隠していた。

 今大会に女子の第10シードとして出場しているセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)は事前に口にすることなく、ケガを理由に2018年(胸筋)と昨年(アキレス腱)のロラン・ギャロスで試合前に棄権して周囲を驚かせた。日曜日のメルボルン・パークでセレナは2018年からアキレス腱の問題を抱えていたことに何気なく言及したが、これはほとんどの人たちにとって初耳だった。

 ナダルとセレナは自分に勝った選手の功績を傷つけないよう、敗戦をケガのせいにするのを避ける傾向のある選手たちのひとりだ。

 USオープン優勝者で第3シードのドミニク・ティーム(オーストリア)が第18シードのグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)にストレート負けした試合で、彼は何かに通常のプレーを妨げられているように見えた。ティームは試合後に「ちょっとした身体の問題に加えて本当に付いてない日で、さらに彼が素晴らしい選手だという事実もあった。だからこの3つが重なれば、こういう結果は起こり得るものだよ」と説明したが、細かいことについては触れなかった。

 セレナのコーチとして知られるパトリック・ムラトグルー氏は、実際に何が起こっているのかだけにしか興味がないという意見を持っている。

「多くの選手は負けたあと、礼儀正しくエレガントに見せたいと思っているんだ。だから明らかに大丈夫でないときでも、『いいえ、私は大丈夫』と言ったりするのさ。見栄を張りたいだけなんだよ」

 2012年と13年の優勝者で第12シードのビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)は1回戦でジェシカ・ペグラ(アメリカ)に敗れた試合中に呼吸困難に陥っているように見えたのだが、試合後に具合が悪かったのかと記者に尋ねられるとその質問に異議を唱えた。

「なぜ私たち選手が病状について尋ねられるのか、よく分からないわ。こういうことはあとでインターネットで出回って、人々がそれについてあれこれ言ったりするネタになってしまうのよ。健康の問題について話すのは、義務的に要求されることであるべきじゃないわ」とアザレンカは主張した。

 もちろんそれは義務ではない。しかしジョコビッチはそういう問題について話すことを「心地よく感じない」と言って、彼女が主張する一般的な意見に同意した。

 そうは言っても筋肉の裂傷を抱えたと世界に公言することで、オーストラリアでの自分のステイタスについての会話を煽った張本人は彼なのだ。

 元世界ナンバーワンのアンディ・ロディック(アメリカ)は2008年USオープンで、次の対戦相手となるジョコビッチが別の試合で腰と足首に加えて胃や呼吸の問題でトレーナーの助けを求めたことについてからかった。

 ジョコビッチが嘆いていることに鳥インフルエンザ、炭疽病、SARS(重症急性呼吸器症候群)、一般的な風邪も含まれているのかとジョークを飛ばしたロディックは、「彼は何でもかんでも直ぐにトレーナーを呼ぶ男か、史上もっとも勇気がある男かのどちらかだよ」と言って締めくくった。

 しかし結局のところ、最後に笑ったのはジョコビッチだった。そのとき彼は、ロディックを6-2 6-3 3-6 7-6 (5)で破ったのだった。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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