「素晴らしいチームの皆に応えることが大きな目標」記者会見で語った大坂 [オーストラリアン・オープン]
「2年前くらいかな、自分のゴールは日本人初のグランドスラム優勝者になって歴史をつくることだと思っていた。自分の名前がトロフィーやグランドスラム会場の壁に刻まれるのはいいことだけど、今は違う目的がある。現在のチームは素晴らしく、団結して隔離も乗り越えてきた。皆で毎日楽しくやっている。そのハードワークに応えるために私もハードワークしている」
以前は大きな目標を掲げてきたが、今は目の前のこと、周囲の人を大事にするという思いが強くなっているようだ。精神面での大きな変化がコートの内外でよい影響をもたらしている。
「誇りに思うのはメンタルが強くなったこと。以前はアップダウンが多く、自分を信じきれなかった。隔離を経験して、いま世界で起きていることを見て、物事を客観的に見られるようになった。以前は試合に負けたら気持ちがダウンしたけど、今はそういう感情ではなくなった」
負けを受け入れられるようになったのは、コーチのウィム・フィセッテ氏に言われた言葉の影響もあるようだ。
「以前、フェドカップで酷い負け方をしたとき、自分では人生が変わってしまうと思った。でも“負けたことで人生が変わることはない”と言ってくれた。“勝つことでよくなっていくだけだ”と。ベストを尽くすことで勝つ確率は上がっていく」
現在、以前は考えられないほどのメンタルの強さをコート上で見せている。その大きな要因に現在のチームの存在を挙げた。
「チームと自分をオープンにしたことが大きい。よく話すようになり、緊張していることを正直に話すようになった。自分ひとりで抱えて解決しようと思わなくなった。あとは自分を守ろうとも思うようにもなっている。自分の家族のように私が愛する人は私のことも愛してくれる。試合に負けたから嫌いになるなんてことはないんだと理解した」
自分が周囲に大きな影響を与えているが、周囲から受ける影響も大きいという。
「影響力のない人に影響されることはないし、怠け者にハードワークをしなさいと言われてもしない。だから、いつも私を前に押してくれる人間と一緒にいるのがいい。中村豊トレーナーみたいに。彼は私を凄くプッシュしてくれる。最初は彼の求めていることができるのか?とプレッシャーに感じて不安だった。でも、皆が私にいいプレーをして欲しいと思っていることを理解した。私自身もそう思っている。いい形で優しくプッシュしてくれる。だから私がベストを尽くせば、みんながOKみたいな感じかな」
自分を客観視することは難しいという。
「自分は自分の人生を生きているから、自分のしていることが外からどう見えているのかはよく分からない。そしてスタッツ、達成したことをあまり見ていない。それよりもどんどん次に行くタイプの人間なの。これまで達成してきたことは、人生のあとになってもっと喜ぶのかもしれない。でも今は、私がどれだけ努力しても届かない、誰も破れなかった記録を破ることに挑戦しているような感じかな。どこまでいっても満足できないのが人間というものなのかなと思う」
女性を軽視する発言をした東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長を公に批判していたが、その森氏が辞任したことについても触れた。
「昔なら人々はあのような発言を受け入れていたと思うけど、今の新しい世代はちょっとダメ。時代は進んで少しずつバリアが壊されてはいるけど、女性はまだまだ平等のために戦わないといけない」
メルボルンでは、アジアコミュニティへの攻撃という残念な現象も目にした。
「ニュースではあまり見られない話だけど、メルボルンで私が大好きな中華料理店に今回行こうとしたら、閉店していた。“コロナが移る”といって、みんなが中華を食べなくなったらしいわ」
最後に、明るい食事の話題も提供した。
「この3週間、試合前にいつも日本食を食べていた。でも、昨日たまたまそのお店が閉まっていたから、毎日同じものも嫌だなと思ってギリシャ料理を試してみたの。それでテレビをつけたらギリシャのチチパスがナダルに勝った。縁起がいいなと。でも、決勝に向けてはまた日本食に戻すと思う。変えたのはおそらく、一回だけのこと」
チームとの信頼関係が深まったことが、コート上での成長にもつながった大坂。今大会ラストゲームは日本時間2月20日(土)の17時30分開始予定だ。(テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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