涙の準決勝敗退、セレナの「24」を求めるメルボルンでの挑戦は大坂に阻まれる [オーストラリアン・オープン]

写真はセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)(Getty Images)

今年最初のグランドスラム大会となる「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・ビクトリア州メルボルン/本戦2月8~21日/ハードコート)の大会11日目は、男女シングルス準決勝などが行われた。

 近いようで非常に遠い24回目のグランドスラム制覇への挑戦を大坂なおみ(日清食品)に対する3-6 4-6の敗戦で終えたあと、39歳のセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)は何千という観客が立ち上がって拍手を送る中でコートから立ち去りながら動きを止め、手を胸に当てた。

 試合後の記者会見で「それはさよならを言うための仕草だったのか?」と聞かれたセレナは微笑ながら、「もし別れを告げるのであれば、私は誰にも言わないでしょうね」と答えた。

 次の質問がセレナが木曜日に多くのミスを犯したことに戻ると――ウィナー「12」に対してアンフォーストエラー「24」とミスはウィナーの2倍だった――、彼女は頭を振って「もう終わりよ」という言葉を残して唐突に会見の場をあとにした。そのとき、彼女の目には涙が溢れていた。

 土曜日の現地時間19時半に、第3シードの大坂は初めてグランドスラム大会決勝に進出した第22シードのジェニファー・ブレイディ(アメリカ)と優勝をかけて対戦することになる。ブレイディはこのあとに行われた準決勝で、第25シードのカロリーナ・ムチョバ(チェコ)を6-4 3-6 6-4で倒した。

 ふたりは昨年9月のUSオープン準決勝で対戦し、大坂が3セットの接戦の末に勝利をおさめていた。

「最初のグランドスラム大会決勝をプレーするときには、誰もがとても興奮するものよ。でも同時に、物凄くナーバスにもなるわ」と大坂はブレイディに待っているものについて語った。

 34度目のグランドスラム大会決勝に進むことを願っていた第10シードのセレナだったが、またしてもグランドスラム大会シングルス優勝回数でマーガレット・コート(オーストラリア)の持つ史上最多記録「24」に追いつくことができなかった。

 2018年USオープン決勝でセレナを倒した大坂は最後の8ポイントを連取して4度目のグランドスラム大会決勝に進出し、このところの連勝記録を「20」に伸ばした。

「今日ここに小さな子供が来ているか分からないけど、私はまだ幼いころから彼女のプレーを見ていたの。だから私にとって、コートで彼女と対戦するということ自体が夢なのよ」と23歳の大坂はセレナについて話した。

 グランドスラム大会において昨年のUSオープンと2019年オーストラリアン・オープンを含む3つのタイトルを獲得している大坂は、現時点で間違いなくもっとも危険なハードコートプレーヤーと言えるだろう。

 もちろん、それはかつてセレナに対する称号だった。しかし少なくともこの日の彼女は、あまりにショットコントロールが不正確過ぎた。

 第1セットの出だしに2-0として好スタートを切りながら続く5ゲームを落としたセレナは、「勝つことはできたはずだった。5-0リードにできていたはずだったのよ。私はただ、本当に多くのミスを犯してしまったわ」と悔しさを滲ませた。

 特に彼女のフォアハンドは不正確で、第1セットだけで10本のアンフォーストエラーを積み重ねてしまった。

「あまりに多くのミスを犯し過ぎたわ。それもイージーなミスをね」

 第2セットの早い段階で、セレナのフラストレーションは傍目にも明らかになった。彼女は前屈みになり、「ショットを打つのよ!しっかり打つの!」と叫んでいたのだ。

 すでに妊娠2ヵ月だったにもかかわらずプロ化以降の時代で最多となる四大大会のシングルスで23歳回目の栄冠に輝いた2017年オーストラリアン・オープン以降、セレナはグランドスラム大会決勝に4度進出しながらすべて敗れた。彼女はまた、直近のグランドスラム3大会で2度準決勝で敗れている。

 メルボルンで新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を防ぐために5日間のロックダウンが発令されたためにファンはしばらく会場を訪れることを禁じられていたが、木曜日からスタンドに戻ってきた。セレナ対大坂の大一番を観るため、約7000人の観客がスタジアムに入場することを許された。

 座席案内係たちはチェンジコートの間に通路を歩き、観客たちにマスクを着用して鼻と口を覆う必要があると注意して回った。

 気温が30度に至った今大会でもっとも暑い日、大坂はややおぼつかないスタートを切った。最初のサービスゲームの2ポイント目でセレナにバックハンドリターンのウイナーをクロスに叩き込まれ、おそらくプレッシャーを感じてしまったのだろう。それにダブルフォールトとフォアハンドのサイドアウトが続き、最後はバックハンドをネットにかけていきなりのブレークを許してしまった。

 あっという間に2-0とリードしたセレナは、大坂がふたたびダブルフォールトを犯したときに3-0とするブレークチャンスさえ手にしていた。

「試合の出だしはすごくナーバスになり、怖気づいていたと思うわ。そしてそれから少し緊張を解くことができたの」と大坂は振り返った。彼女は日本で生まれたが、3歳のときにアメリカに移住した。

 しかし彼女が体勢を立て直すのに、そう長い時間はかからなかった。突如としてエースを決めだした大坂はグラウンドストロークを自分が望むところに打ち込み、コートを非常にうまくカバーするようになった。メルボルンでのセレナの動きはそこまで非常によかったが、今回はぎこちなさが目についた。

 大坂はいかにセレナを敬愛し、彼女のテニスを自分のお手本にしているかを隠そうとない。お互いにパワフルなサービスと早いタイミングで捕えるフォアハンドという同じ基本要素を土台としており、この日の大坂はその両方を非常にうまく駆使した。いくつかのキーショットのあとに「カモン!と叫ぶ大坂の声は、彼女のアイドルのように響いた。

 すんなりと勝利を決めてしまうかに思われたが、大坂には最後のテストがあった。彼女は1ゲームに3本のダブルフォールトを犯し――この試合では合計8本だった――、セレナに4-4と追いつくことを許してしまったのだ。

 しかしセレナは、そこから1ポイントを取ることもできなかった。

 すぐに冷静さを取り戻した大坂はいくつかのバックハンドウィナーとセレナのダブルフォールトにも助けられてラブゲームでブレークすると、最後のゲームもラブゲームでキープして試合を終わらせた。(C)AP(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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