「若い選手が“ビッグ3”に追いつけない理由を教えよう」ジョコビッチのコーチを務めるイバニセビッチ [オーストラリアン・オープン]
2019年6月よりジョコビッチのコーチを務めるゴラン・イバニセビッチ(クロアチア)が決勝戦を振り返るとともに、ジョコビッチの置かれていた状況について、またメドベージェフら若い選手たちがビッグ3に追いつけない理由を語った。
「ダニールは20連勝中で、おそらく今大会に出場している選手の中で最高のプレーを見せていた。それに対してノバクは落ち着いて戦術的によく戦った。特にカギとなるサービス、リターンが非常によかった。彼のサービスはアグレッシブで、その素晴らしい戦いぶりにダニールは第2セットで自分を見失った。どこかへ行ってしまったんだ」
大会を勝ち上がる中でポイントになった試合を2つ挙げた。
「今大会を勝ち抜くポイントになった試合は、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)戦とアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)戦だ。その後どんどんよくなり、決勝はマスターピース。信じられないほど素晴らしいパフォーマンスだった。このコートで一度も負けなかった」
ジョコビッチ陣営。左からマリアン・バイダコーチ、フィジオテラピストのウリセス・バイド、ゴラン・イバニセビッチコーチ
昨年のUSオープンで怒りに任せて線審の首元にボールを打って失格となってから、厳しい批判にさらされ続けてきたという。
「ノバクはこの優勝が絶対に必要だった。多くのメディアや人々からの批判にさらされ、あまりに不公平な状況だった。昨年のUSオープンでの失格に続き、ロラン・ギャロスの決勝も悪かった。この大会でも42日間隔離された生活を送り、簡単ではなかった。そして選手たちのためによりよい環境でプレーできるように提言したのに、またもや批判を浴びることになった。ほかに攻撃する相手がいないからか、皆がノバクを批判する空気になっている」
ケガを乗り越えるのも大変だったが、ケガを疑う声もあったことに少なからずショックを受けた。
「腹部のケガのことを最初に聞いたとき、私も不安になった。だが、“このケガは本当なのか?”と疑う人までいた。この痛みに耐えられない選手もいるが、ノバクは耐えられたんだ。批判とケガによる苦しい状況を抜け出すのは簡単ではなかった」
ラファエル・ナダル(スペイン)とロジャー・フェデラー(スイス)の持つグランドスラム優勝20回に追いつくのに重要な勝利だったという。
「今大会の決勝のような試合のために彼は日々練習している。これでグランドスラム18度目の優勝だ。ラファやロジャーの20回に追いつき、追い越すには優勝する必要があった。テニス選手としての偉大さを世界に証明した。ラファがフレンチオープンなら、ノバクはオーストラリアン・オープンだ。ラファは間違いなく、あと1度、あるいは2度フレンチオープンを獲るだろう。ノバクはウインブルドンとUSオープンの優勝候補となって、勝ち続けないといけない」
ビッグ3がなぜ年齢を重ねても成長し続け、若手の追随を許さないのか、独自の見解を語った。
「ノバク、ロジャー、ラファはお互いに刺激し合い、助け合って成長している。自分のテニスに何か新しいものを加えることを恐れない。新しいことを学び、練習で新しいことを試し続けている。若い選手は自分たちが何でも知っていると勘違いしている。彼らはまだ何も知らないし、3人から学ばなければならない。
フェデラーの記録をナダルとジョコビッチが追い抜くことは確信している。
「3人の競争がどこまで続くかは、まだ分からない。彼らは毎回、より進化したテニスを見せてくれる。有望な若手が出てきているのは確かだが、この3人のほうが今も優れている。もしかしたら、マーガレット・コート(オーストラリア)のグランドスラム24回優勝、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)の23回優勝を追い抜くかもしれない。今はロジャーが復帰するのを楽しみに待っている。フレンチオープン、ウインブルドンで何が起きるのか。競争はまだ続くだろう。ラファとノバクがロジャーを追い抜くと数年前に言ったが、今もそうなると信じているよ」
優勝を決めたジョコビッチを称えるイバニセビッチコーチ
ジョコビッチの今後のスケジュールはまだ何も決まっていないという。
「これから次にどの大会に出場するか話し合う。今はあまり先を見ていない。フレンチ・オープンに出場するのは間違いないが、彼はその前にもプレーする必要がある。可能な限り、ファンがいるスタジアムが望ましい」
メルボルンのロックダウンで無観客になったスタジアムを「葬式のようだった」と表現したイバニセビッチ。現役時代ファンに愛された彼自身も、やはり観客のいるスタジアムでジョコビッチがプレーすることを望んでいる。(テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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