試合中に起こった“珍事件”を調査せよ!

(※原文ママ)フレンチ・オープン4回戦でラウラ・シグムンド(ドイツ)が相手のメディカルタイムの最中、ベンチでご飯を食べたことが話題に。今回はクスッと笑える試合中の“珍事件”を調べてみた。【2020年12月号掲載】

珍事件1
マレーは少し、クズネツォワは大胆に
試合中にハサミを使って髪をチョキチョキ

ンドンで行われた2015年ATPツアーファイナルズの大会7日目、アンディ・マレー(イギリス)がラファエル・ナダル(スペイン)との試合中に自らの手で“散髪”を行った。

 第1セットをナダルに奪われて苛立ちを見せるマレーは、セット間にトレーナーを呼んでハサミを貸してもらうと、試合中に目に入って気になっていた前髪を数㎝ほどカット。これで気にならなくなったが、試合はそのままストレート負けに終わった。

 マレーよりも大胆だったのがスベトラーナ・クズネツォワ(ロシア)。2016年WTAツアーファイナルズの予選リーグ初戦でアグネツカ・ラドバンスカ(ポーランド)との試合中に髪を切るのだが、その切り方がすごかった。

 最終セット1-2という戦況の中、ベンチに座ったクズネツォワはおもむろにハサミを取り出すと、三つ編みのポニーテールの先10㎝ほどを豪快にジョキッ! その後、勢いを取り戻したクズネツォワは7-5、1-6、7-5の逆転勝利を収めた。試合後、彼女は「髪か試合か、大切なのはどっちかと自分に問いかけた。迷いはなかったし、自分にできる最善を尽くすだけ」と勝負どころの“好判断”を振り返った。

 ツアー最終戦という大事な舞台で自ら髪を切る行動をとった両者。ふたりとも試合に対する勝利への執念を改めて感じさせる行動だった。


クズネツォワは手の平に収まりきらないほどの髪の毛をカット

珍事件2
元テニス選手の妻に試合中にメール⁉
バグダティスがスマホ操作で警告

2016年USオープン4回戦、マルコス・バグダティス(キプロス)とガエル・モンフィス(フランス)の試合はモンフィスの一方的な展開。バグダティスはファーストサービスの確率が30%台と低調で、試合を立て直すことが難しい様子。チェンジエンドのときにベンチに座ると、ラケットバッグからスマートフォンを取り出し、元テニスプレーヤーの妻であるカロリーナ・スプレムにメールを送信。この行動が主審にバレて、警告を受けることとなった。

 ルールとして試合中に外部と連絡が取れる機器の使用は禁止されており、本人も熟知していたという。一方で「僕はただ妻と連絡を取っただけ。これまでやったことはないが、なんで誰もやらないんだろうと思っていた」と開き直る始末。当時すでに31歳とベテランの域に達していたが、その言い訳が少し幼稚すぎたかもしれない。


サービスがまったく入らん!

珍事件3
試合開始早々に突如襲った“腹痛”
トイレから戻ってくると……

ーストリア・リンツで開催された2010年「ジェネラリ女子オープン」の2回戦で、アナ・イバノビッチ(セルビア)とバーボラ・ストリコバ(チェコ)が対戦。第1セットの第1ゲームが終了した試合序盤で突如イバノビッチにトラブルが発生した。

 自身のサービスゲームをキープしてチェンジエンドを迎えると、彼女は主審のもとへ行きトイレットブレークを要求。ただ、このルールは自身のサービスゲームの前だけにしか適用できず、リターンゲームのときは利用できない。その旨を伝えられたイバノビッチだったが、迫り来る腹痛に耐えられず、そのままコートを離れてしまった。

 数分後にコートに戻ってきたイバノビッチだが、スコアボードを見るとスコアは1-1。タイムバイオレーションによる失ゲームと知り困惑していたが、冷静さを取り戻してこの試合は6-3、6-2と勝利を収めた。試合後にはトイレットブレークが適用されずにゲームを失ったことについて「すごく恥ずかしかった……」と苦笑い。それでも「トイレに行ったおかげで試合に勝てたので、いい判断だった」と振り返った。


えっ、すごく恥ずかしいんですけど……

珍事件4
スコアボードの上で試合観戦⁉
マイアミ・オープンの“珍来客”

イアミ・オープンが行われるフロリダは亜熱帯性気候で一年中過ごしやすく、会場近くには野生動物が時折見受けられるなど、自然豊かな環境だ。そんな同大会で2017年、試合中に珍しい野生動物が乱入するハプニングが起こった。

 トミー・ハース(ドイツ)とイリ・ベセリ(チェコ)の一戦で、突然、大会レフェリーが登場して試合が中断する。その理由がコート端に設置されたスコアボードの上に現れた“巨大イグアナ”。1mほどの“来客”に会場は騒然。ハースはこのシャッターチャンスを逃すまいとスマートフォンを手にとり、主審に許可をもらってセルフィーを敢行した。

 その後、スタッフ総出の捕獲作業が始まるのだが、逃げ足が速いイグアナはその手をかいくぐってコート上を激走。素早いステップも披露し、詰めかけた観客を大いに盛り上げた。

はい、ハース!

珍事件5
聖地・ウインブルドンが水浸し!?
スプリンクラー故障でコート使用不可に

ランドスラムの中でも独特な雰囲気を醸し出すウインブルドンだが、時折、観客や選手がクスっと笑ってしまうような事件も起こる。2019年にはラウラ・シグムンド/アルテム・シタク(ドイツ/ニュージーランド)がベンチに座っていたところ、審判台の後ろに設置されていたスプリンクラーが突如暴走を始め、勢いよく放水するアクシデントが発生した。

 水の勢いも強く、シグムンドとシタクはすぐさまベンチから避難した。一度収まった放水だったが、ふたりがベンチに座り直した矢先に再び暴走。勢いがさらに増し、もし選手自身に直撃していればケガの恐れもあるほどだった。

 大量の水がコート上にまかれた結果、試合途中にも関わらずコート自体を変更する事態となったが、シグムンド/シタクは劣勢だった試合展開をこのタイミングで水に流し、見事な逆転勝利で次のラウンドに駒を進めることとなった。

勝因はスプリンクラー?

珍事件6
対戦相手にチャレンジ行使を促す⁉
自分が不利になる行動にヒューイットも驚き

2016年のホップマンカップでは、スポーツマンシップの素晴らしさがよく伝わる出来事が起こった。レイトン・ヒューイット(オーストラリア)がファーストサービスを打った際にアウトと判定されると、レシーバーだったジャック・ソック(アメリカ)が「チャレンジで見直したほうがいい。入ってたから」とヒューイットにチャレンジの行使を促した。

 自身が不利になるにも関わらずチャレンジを薦めてくる相手にヒューイットも困惑模様。少し間を置き、ソックの心意気に乗ったヒューイットはチャレンジを宣言。するとモニターに映し出された判定結果は「イン」。

 観客からは拍手が巻き起こり、両者の表情からも笑顔がこぼれた。年始に行われるプレマッチならではの出来事ではあるが、相手に敬意を示すスポーツマンシップのあるべき姿と言えよう。


(ソック/左)チャレンジしたほうがいいよ! (ヒューイット)その言葉を信じるぜ!

珍事件7
伝説となったファンとの“掛け合い”
グラフが試合中にプロポーズされる

張感のある場面でファンがかけた言葉が張り詰めた空気を和ませる場面が時折あるが、今も伝説となっている選手とファンの掛け合いが1996年ウインブルドン女子シングルス準決勝のシュテフィ・グラフ(ドイツ)と伊達公子の試合だ。

 サービスを打とうとするグラフに対して、あるファンがスタンドから「シュテフィ、僕と結婚してくれる?」と叫ぶと会場の観客は笑い、当のグラフも苦笑い。静寂になるまで待った後、今度はグラフが「あなた、どれくらいお金持ってるの?」と逆質問。会場がさらに大きな笑い声に包まれた。

 当時、グラフは父親の脱税疑惑がメディアに取り沙汰されていた時期で、もちろん、彼女本人はお金に困っていないが、ファンからのプロポーズに対する切り返しとして利用。自虐的かつブラックジョークの意味合いも込められた返答はファンを大いに楽しませた。


結婚しませ~ん!

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写真◎Getty Images

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