「5セットマッチで若い選手と対戦するのは好き」とジョコビッチ [フレンチ・オープン]

しかし2つのタイブレークを落としたあとにジョコビッチは突如として酷い劣勢からベストテニスへと移行し、ロレンツォ・ムゼッティ(イタリア)が背中の痛みとケイレンのため6-7(7) 6-7(2) 6-1 6-0 4-0となった時点で棄権する前に13ゲームを連取した。
「5セットマッチで若い選手と対戦するのは好きだ。何故なら彼らが今日のようにセットカウント1-0や2-0でリードしていても、まだまだチャンスがあると感じられるからね」と34歳のジョコビッチは語った。
第3シードのラファエル・ナダル(スペイン)もまた4回戦で19歳のイタリア人プレーヤーと対戦し、エンジンがかかるまで少し時間がかかった。ナダルのトラブルは彼が主導権を握る前の8ゲームと45分弱の間続いたが、彼は最終的に第18シードのヤニク・シナー(イタリア)を7-5 6-3 6-0で退けロラン・ギャロスでのセット連取数を「35」に伸ばしてジョコビッチに合流した。
シナーとムゼッティは月曜日の朝、試合の前にフィリップ・シャトリエ・コートで一緒に練習することになっていた。しかしシナーによれば、彼のコーチで数年前にジョコビッチを指導したこともあるリカルド・ピアッティ(イタリア)が時間を間違えてしまったとのことだった。
片手打ちバックハンドと素晴らしいタッチで出だしに素晴らしいプレーをした才能豊かなムゼッティは、グランドスラム大会での5セットマッチにまったく慣れていない。彼は第4セットのあと、メディアカルタイムアウトを取った。
「プレーを続けることに意味はなかった。僕はラリーを続けることも、どんなポイントを取ることもできなくなっていたからね。もうほとんど動くことすらできなかった。僕は限界にきていたんだよ」とムゼッティは説明した。
試合を通して手にした9回のブレークチャンスをすべてものにしたジョコビッチは、ウィナー数でもムゼッティの30に対して53と上回った。
とはいえムゼッティが2度目のフレンチ・オープン優勝と19回目のグランドスラム制覇を目指すジョコビッチに対し、2セットを先取するとはどれほどショッキングなことだったことだろうか。
「僕自身にとってさえ、ちょっぴり驚きだったよ」とムゼッティは答えた。
世界ランク1位のジョコビッチはフレンチ・オープンにおいて、同76位のムゼッティほどランキングの低い選手に敗れたことは一度もない。また彼がこれ以前にこの大会で10代の選手に負けたのは、2006年の準々決勝でナダルに途中棄権で敗れたときだけだ。
同大会でのジョコビッチはここまで4回戦では14勝0敗で、さらに彼はこのところ非常に好調だった。ジョコビッチは今季のグランドスラム大会では10試合プレーして負けておらず、パリではセットを取られるどころかどのセットでも4ゲーム以上を落としていなかった。彼は月曜日まで、実に合計23ゲームしか落としていなかったのである。
最終的にジョコビッチは自分のミスを減らし、キャリア5度目となる2セットダウンからの逆転劇に成功した。ジョコビッチの49回目のグランドスラム準々決勝は、もうひとりのイタリア人選手に対するものとなる。第9シードのマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)は、第8シードのロジャー・フェデラー(スイス)が棄権したためラケットを振ることなくベスト8進出を決めていた。
本来であればジョコビッチはタイブレークに精通しているが、好調だったムゼッティはかかっているものが大きいプレッシャーレベルの高い状況下で非常にいいプレーを見せた。ムゼッティはそのまだ始まったばかりのキャリアにおいて、ツアーレベルのタイブレーク10回で100%の勝率を誇っている。しかしながらその2セットのあとには、ジョコビッチが主導権を取り戻した。
「自分がもう勝っただなどと決して思わなかった。まったくもって、そんなことは考えなかったよ。ジョコビッチのようなチャンピオンに対しては、最後に握手を交わしたときに初めて本当に勝利を手にしたことになるんだ」とムゼッティはコメントした。(APライター◎サミュエル・ペトレキン/構成◎テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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