より良いダブルスをプレーする方法を教えよう!❼フォーメーション

世界トップダブルスとして活躍したボブ&マイクのブライアン兄弟を長年指導、また、スイスのロジャー・フェデラーとスタン・ワウリンカのコーチも務めて彼らをデビスカップ・タイトルへと導き、その年のワールドチーム・テニスの最優秀コーチにも選ばれた、ダブルス指導の名コーチ、デビッド・マクファーソンに「ダブルス」をとことん語り尽くしてもらった。(テニスマガジン2019年7、8月号掲載)



David Macpherson
デビッド・マクファーソン◎1967年7月3日生まれ、オーストラリア・タスマニア出身。アメリカ・フロリダ在住。プロ転向は1985年。2004年現役引退。ATPダブルス最高11位(1992年11月)。インディアンウェルズ優勝を含め、キャリア通算16勝

インタビュー◎ポール・ファイン 翻訳◎木村かや子 写真◎小山真司、Getty Images、本人私物 イラスト◎サキ大地

テーマ15フォーメーションの目的
おすすめしたい オーストラリアン・ フォーメーションの 効果的な使い方。

アイ・フォーメーション
サーバーとその前衛、レシーバーがほぼ一直線「I」の形で並ぶ。レシーバーが簡単にクロスにリターンを打たないように阻む目的がある。サーバー側前衛はネットより低く身をかがめて構える


オーストラリアン・フォーメーション
サーバーとその前衛が同じサイドに立つ陣形。レシーバーのクロスリターンを阻み、ダウン・ザ・ラインに打たせる目的がある

Q アイ・フォーメーションと、オーストラリアン・フォーメーションはいつ使うべきでしょうか。

A プロテニスでのアイ・フォーメーションはとても効果的だ。でも一般プレーヤーにそれを教えるときは、少し考え方を変える必要もある。低く身をかがめてから起き上がることを1試合に50回もやるのは、年配のプレーヤーや背中や膝に問題を抱えているプレーヤーにとっては容易なことではない。その点でオーストラリアン・フォーメーションは、アイ・フォーメーションのいい代用品になると思う。

 双方のフォーメーションの目的は、相手チームがクロスにリターンするのを阻むことにある。ほとんどのプレーヤーがダウン・ザ・ラインに打つよりもずっと容易に、かつ堅実にクロスにリターンを打つだろう。だから双方のフォーメーションでネットプレーヤーがセンターに位置することで、クロスのリターンをだいたいブロックすることができ、レシーバーにリターンの方向を変えさせて、ダウン・ザ・ラインに打つことを強いることができるんだ。

Q 使われる頻度がより低いオーストラリアン・フォーメーションのポジション的に不利な点は何ですか?

A 主な不都合は、技術力の高いレシーバーはスイングを小さくして、ボールをブロックする、あるいは突くような形でダウン・ザ・ラインの大きなオープンスペースにリターンを打つことができる点だ。これはオーストラリアン・フォーメーションに対抗する最良の方法なんだよ。

 もしサーバーが後ろにとどまるなら、リターンを打つ相手はボールを早めにとらえたあと、ネットにつめることさえできる。こうなれば、ひとりでネットにいるパートナーは危険にさらされることになる。

 オーストラリアン・フォーメーションを使うのであれば、ネットプレーヤーは常にクロスコートのサイドにとどまるべきではない。レシーバーをいぶかしがらせ、バランスを崩してやるために、ときにはセンターラインを越えて飛び出し、ダウン・ザ・ラインのリターンをボレーで決める必要がある。肝心な点は、あなたのチームのネットプレーヤーが“いったいどこに動くことになるのか”、レシーバーにわからないようにすることだ。

Q とりわけ高い技術を持たない一般プレーヤーは、相手も同じくらいの技術であることが多く、そうすると相手のバランスを崩すことができるという理由から、これらのフォーメーションをときには使うべきということですか。

A その通り。私のガールフレンドは、(レイティングで)3・5レベルのテニスをプレーしているが、私は彼女に、彼女がアドサイドからサービスを打つときはオーストラリアン・フォーメーションでプレーするようアドバイスしているんだ。というのも彼女のレベルのプレーヤーたちのほとんどはバックボレーがあまりうまくない。だからレシーバーはアドサイドでリターンを打つときに、相手ネットプレーヤーのバックボレーを恐れることなく、クロスにボールを打つことができるんだ。

 だから私は彼女に、アドコートからサービスを打つときはパートナーをオーストラリアン・フォーメーションの位置に立たせ、レシーバーにクロスにボールを打たせないようにとアドバイスしている。こうすればレシーバーはダウン・ザ・ラインに打たざるを得なくなり、アドサイドからのダウン・ザ・ラインは、右利きのプレーヤーのフォアサイドに返ってくることになる。右利きのフォアハンドは、多くの場合、そのプレーヤーのもっとも強いショットだ。そして少なくとも、サーバーが相手のバックハンドに対してフォアハンドで対抗する形の、ベースラインからのラリーに持ち込むことができる。

 サーバーがこの戦法をとってきたとき、レシーバーにとってのいい作戦は、リターンを素早くとらえてダウン・ザ・ラインに返球し、それに乗じてそのままネットにつめてサーバーにプレッシャーをかけるという作戦だ。

テーマ16雁行陣と平行陣
ツーバックで ポイントを長びかせる。 ダブルスで重要なのは 対戦相手を迷わせ続けること。

Q ふたりが後方のベースライン近くに位置するツーバック・フォーメーションの主なアドバンテージは何ですか?

A あなたが、ポーチが非常にうまい相手と対戦している場合、あなたがリターンする際にパートナーをネットに残しておくと、リターンは容易に相手のポーチのターゲットとなり、ボレーを決められてしまいかねない。だから、このような場合に、双方のリターンの際にふたりが揃ってベースラインに位置するというのは、とてもいいアイディアだと思う。そうすればポーチするプレーヤーは、ポイントにトドメを刺すのがより難しくなる。

 これは、非常にサービスの強い相手、あるいはポーチのすぐれた相手と相対しているときに、特にいい戦法だと言える。レシーバーとそのパートナーの双方をベースラインに置くというのは、確率の高いプレーだ。なぜって、そうすればポイントを長くするチャンスを生み出し、相手チームがポーチでポイントを仕留めることがより難しくなるからね。

 そして極端な状況では、もしあなたのサービスが非常に弱く、相手がパワフルなリターンを打ってくる場合、そして相手がネットについているプレーヤーを攻撃してくる場合にも、パートナーをベースラインに位置させていい。

 ダブルスについての重要な資質は、フレキシブルかつ、想像力豊かでなくてはいけないということだ。自分の強みを生かすようにプレーし、相手の弱点や傾向を突くようにする。絶えず違った戦術を織り交ぜ、どこにボールを打つかについて、対戦相手を迷わせ続けるようにするんだ。あなたが強力なフォアハンド、あるいは並外れたロブを持ち、ネットでの技術がお粗末なら、できる限りベースラインからプレーするようにするというのは理に適ったことだ。


相手のポーチが非常にうまいときは、ふたりともベースラインに立ってツーバックのフォーメーションをとる。自分の強みを生かし、相手の弱点を突くこと。相手を迷わせ続けることが大切だ

テーマ17ネットプレーヤーの仕事
相手にダメージを与え、 サービスキープを助け、 いい返球があったときに 好機を逃さずポイントを取る。

Q 「あなたのダブルスは、妨害行為と驚きに満ちているべきだ」と、マーティ・スミスは彼の教本『アブソリュート・テニス』の中でアドバイスしています。どのような驚きの戦略を薦めますか?

A それは素晴らしい引用だね。その言葉は、私がここで話していることを指している――ネットプレーヤーは相手にダメージを与え、パートナーがサービスをキープするのを助け、またパートナーがいいサービスリターンを打ったときに、その好機を逃さずポイントを取るよう努める。この行為の成功に大きな一役を買うのが、予測と、それに則った動きで対戦相手を驚かすことなんだ。“妨害行為”というのはまた、印象的な表現だね。

 というのも、あなたはネット中央の高めのところに、ただ安全なショットを打ちたいと思っている対戦相手のリズムを崩しにかかっているわけだから。対戦相手のやりたいことを妨害し、驚かせたいなら、あなたは斜めに飛び込み、ネットに近づいていき、その安全なショットをカットしてボレーを決めるようにする。そうすることで対戦相手は、深いロブやアレーを狙った正確なショットを打つことを強いられるわけだが、それらはより難しい、確率の低いショットなんだ。


ネットプレーヤーは、ネットに近づくことで対戦相手のリズムを崩し、ボレーを決めていく。対戦相手を脅かす働きをしたい

テーマ18トリッキー・プレー
対戦相手がネットに近いとき、 タイミングを計り パンチロブを放つ。

Q トリッキーで予想がつきにくく、バリエーションのあるサービスリターンを打つエリートダブルスプレーヤーといえば、誰でしょうか。

A 難しい質問だな。1930年代から1940年代の両手打ちのオーストラリア人プレーヤー、ジョン・ブロムウィッチは、ときに人を騙し、惑わせるリターンを打つ選手だった。ウッディーズ(オーストラリアのトッド・ウッドブリッジとマーク・ウッドフォード)は、一貫性のある堅実なレシーバーだったね。ブライアン兄弟同様、彼らは効果的にロブリターンを打つこともできた。

 単調なダブルスプレーヤーは、滅多にサービスリターンにロブを使わない。でもウッディーズとブライアン兄弟は、対戦相手がネットに非常に近い位置にいるときに、いいタイミングでパンチロブを打つことができる。

 パンチロブとは、サービスリターンの際に使う、ボレーのようにラケット面を合わせて打つロブで、コーチや選手たちが使っている言葉だよ。インパクト時にラケット面をややオープンにして合わせるような感じで打つのだが、これを使うとネット近くに立つネットプレーヤーの頭上を抜ける、軌道の低いロブを打つことができるんだ。


「パンチロブ」は、ダブルスのショットのバリエーションのひとつとして使いたい。リターンのときにラケット面をやや上に向けてボレーのように打ち、相手ネットプレーヤーの頭上を抜く軌道の低いロブ

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