より良いダブルスをプレーする方法を教えよう!❺最高のボレーテク
David Macpherson
デビッド・マクファーソン◎1967年7月3日生まれ、オーストラリア・タスマニア出身。アメリカ・フロリダ在住。プロ転向は1985年。2004年現役引退。ATPダブルス最高11位(1992年11月)。インディアンウェルズ優勝を含め、キャリア通算16勝
インタビュー◎ポール・ファイン 翻訳◎木村かや子 写真◎小山真司、Getty Images、本人私物 イラスト◎サキ大地
テーマ9|ダブルスのボレー重要テク
スライスをかけすぎないで、フラット気味のパンチ力をつける。
Q 技術、戦術という意味で、ダブルスでのボレーはシングルスでのボレーと、どう違うのですか?
A 最大の違いは、ダブルスではシングルスほど、よいテクニックを擁している必要はないということだ。なぜならダブルスでは、特にサービスがパワフルな男子テニスの場合、ネットに非常に近い位置にポジションをとることになる。あなたはネットのすぐ前に立つことができるわけで、したがって基本的にそれほどいいテクニックがなくても、あなたの反射神経によってラケットをボールに合わせて、それが十分なだけ速ければ、変わらずボレーを決めることができるだろう。
しかしシングルスでは、ネットについた状態でプレーを始めることはない。努力や工夫をしてネットに出ていかなければならないんだ。そんなわけでシングルスでは、プレーヤーはサービスライン辺り(それはネットまで6m強ほどの位置だ)でファーストボレーを打たなければならなくなる。ネットに非常に近い位置からよりも、サービスラインあたりからボレーするほうが、ずっと難しいよ。
ダブルスでサーブ&ボレーを行うときにも、サービスラインか、その少し内側からファーストボレーを打たなければならないケースはたくさんあるだろう。しかしまたサーバーのパートナーがネットのすぐ前に立っているダブルスでは、ネット際でのボレーもたくさんある。そのため、ダブルスにおいてよりもシングルスでのほうが、ボレーのスキルは、よりレベルが高く効果的なものでなければならないんだ。
シングルスでは、カバーしなければならないコート面積がダブルスよりもずっと広く、もしお粗末なアプローチショットで前に出ようものなら、ポイントを取れる可能性はほとんどない。一方、ダブルスではアングルショットを打つことができ、多くの時間でふたりのプレーヤーがネットにつくことが要求されるので、しっかりしたボレーを打てるポジションに身を置くことができるはずだ。
シングルスでは、適切なタイミングでネットに出なければならず、またネットをカバーするためは、パトリック・ラフターやステファン・エドバーグのように、運動神経が高く予測力に優れていなければならない。ダブルスでは、機敏な反射神経がもっとも重要だろう。というのも、ときにボールがものすごく速く返ってくるからね。最高のダブルスプレーヤーは、それに慣れているがゆえに、反射神経がいい選手であることが多いんだよ。
Q それでも変わらず優れた技術力を持つことは重要だと言えますか?
A ああ。でも、ATPツアーでも優れたボレーのテクニックを持たない選手は結構いる。そして彼らの不完全なテクニックは、彼らがより深い位置からボレーする必要が生じたときに、ときどき露呈されることになる。
しかし彼らは、その影響を最小限にとどめているよ。ダブルスでサービスを打つとき、こういった選手はサーブ&ボレーをしさえしない。後ろにとどまって、ただグラウンドストロークを使っているんだ。そしてパートナーがサービスを打っているときは、彼ら(ボレーがうまくない選手たち)もネット近くに立つ。ネットのすぐ近くからなら、たとえ優れたボレーのテクニックを持っていなかったとしても、ボレーを決めるのにすごいスキルは必要ないからね。
Q プロ選手の中で、最高のボレーテクニックを擁しているのは誰ですか?
A ブライアン兄弟は、お手本だ。彼らはフォアボレーを非常にしっかりとフラットに打っている。それは多くの選手たちがやっていないことだ。多くの選手がスライスをかけ過ぎている。彼らのラケットヘッドはボールより高く、急な角度がつきすぎており、そんなふうに打つとスライスのかかりすぎた、パワーとパンチ力の欠けたボレーになってしまう。彼らのボレーは高く浮きすぎるんだ。
ブライアン兄弟は、もっとも正統派のフォアボレーを打っているよ。彼らもバックボレーでは、よりスライスをかけており、それは至って普通のことだ。しかし彼らは、トニー・ローチやケン・ローズウォール、フレッド・ストールらの偉大なオーストラリア人たち同様、必要なときにはバックボレーをフラットに打ち、よりパンチ力をつける能力も持っている。
テーマ10|最高のボレーテク
チチパス、フェデラー、エルベールは コートに“突き刺す”ボレーを打つ。
Q ボブとマイク以外では、今日のテニス界で誰が優秀なボレーヤーですか?
A フェデラーとチチパスは、シングルスのトップ20の中で傑出したベストボレーヤーだ。特にチチパスは素晴らしいよ。彼はネットでボールをカットしたいと強く望んでいる選手だから、シングルス同様、ダブルスでもいいプレーをしている。
チチパスは必要なときにボレーを“突き刺す”能力、またアングルに打ったり、タッチボレーを放ったりする能力を持っている。 フェデラーは頻繁に素晴らしいボレーを見せる。私は2014年のデビスカップ決勝のことを決して忘れないよ。彼がフランス・チーム相手に、ダブルスのレッスンを披露して見せたときのことを。あの日、彼のボレーはケチのつけようがなく、実に壮観だった。
イズナーも昨年のウインブルドンで、優れたボレーヤーとなりつつあることを証明して見せた。ジョンは、グラスコートでの戦略への最初のアプローチとしてサーブ&ボレーを採用し、もう少しで決勝に進出できるところだった。ディミトロフもまた、優秀なボレーヤーだ。
フェデラーやチチパス、ディミトロフのような片手打ちバックハンドのプレーヤーは――女子ではナブラチロワ、ジャスティン・エナンもそうだが――頻繁に非常によいボレーヤーだ。
主に添えているほうの手で事を行っている両手打ちプレーヤーたちにとっては、ボレーはより難題だろう。彼らにとって、バックボレーで本能的かつスキルフルであるということは、より骨の折れることになる。
ダブルスで傑出した選手の中では、エルベールが非常に優れたボレーのテクニックを擁している。彼もボレーを“突き刺す”ように打つ能力を持った選手だ。 とはいえ、今日の選手たちは、私を教えてくれた世代ほどボレーがうまくない。しかし彼らはテニスのほかの部分を、ずっとうまくやっている。現代のプレーヤーたちは、より凄まじいパワーでボールを打っている。彼らの守備的なスピード――コート上での動き回り方、コートカバリング能力――は、私が若かった頃とは比べ物にならないレベルだよ。
パワーとパンチ力の効いた
コートに“突き刺す”ボレーを打っているプレーヤーたち
ステファノス・チチパス
チチパスはネットでボールをカットしたいと切望している。技術もあり、動きが非常にいい
ロジャー・フェデラー
2014年デビスカップ決勝、スイス対フランス戦で、スタン・ワウリンカとペアを組み重要なダブルスをプレーした
ジョン・イズナー
ネットプレーが上達しつつあるイズナー。長身からのビッグサーブを生かして、サーブ&ボレーからネットをとる。昨年のウインブルドンはベスト4と、キャリア最高成績につなげた
グリゴール・ディミトロフ
片手打ちバックハンドのプレーヤーはボレー技術を備えているケースがほとんど
ピエール ユーグ・エルベール
ダブルスの上位選手の中でもっとも効果的なボレーが打てる選手と見ている
テーマ11|ポーチボレー
ネットプレーヤーは 相手がショットを打つ“前”に予測し、 視覚化(イメージ)する。
Q 効果的にポーチを行うためのキーポイントは? ネットプレーヤーが(危険をおかし)、コート中央に突進していくための正しいタイミングを教えてください。
A それは主に、予測と視覚化、そして決断力の勝負なんだ。
あなたは対戦相手がショットを打つ前に、相手のショットの傾向をベースに、そして相手のラケットフェースを見ることによって、相手がどこにボールを打ってくるかを予測し、その様子を視覚化する――つまりイメージするよう努めなければならない。
ポーチの名手は、それが実際に起きる前に予測し、ボールが相手のラケットのストリングスから離れつつあるときに、もう動き出しているよ。だからこそブライアン兄弟はああも俊敏に見えるんだ。彼らはボールが打たれる前に動き出しているよ。ボールがネットのどこを横切るかをイメージし、視覚化した場所へ移動している。彼らは、ボールがストリングスから離れるのを待って、それから取りにいこうとしているのではないんだよ。
ときどき間違えることもある。相手がクロスに打ってくると確信し、センターに向かって動いたものの、相手がその裏をかいてダウン・ザ・ラインに叩いてきてウィナーを決めるということも起きる。それもすべて予測と、ダブルスの試合で行われている推測合戦の一環なんだ。
ポーチは一般プレーヤーが苦労する分野だろう。次にくるショットを頭の中で思い描くこと、対戦相手のラケットがボールをとらえるときに、自分の移動(動き)を信じる能力を持つこと。これらはそう簡単なことではない。だが、あなたは可能な限りポーチに出るべきだ。もしボールにラケットを合わせることができれば、迅速にポイントを終わらせることができる。反対に、ベースラインにいる選手がポイントを終わらせるのはより難しいのだ。
サーバーやレシーバーがベースラインでできる最良のことは、ときたまウィナーを打つということだろう。そして、もしあなたがネットについているネットプレーヤーならば、できるときはいつでも貪欲にボレーに出るべきだ。それが、あなたが持つべき姿勢だ。
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